雇用の質的向上が経済の安定成長に重要 ―ADBの主要指標集

【シンガポール、2011年8月23日】アジア開発銀行(ADB)は、本日発表した「キー・インディケーターズ(主要指標集)2011年版」(Key Indicators for Asia and the Pacific 2011)の中で、アジアが過去20年間の経済成長の恩恵を維持拡大する上で、質および生産性の高い雇用を創出する断固たる措置が、各国に求められると論じた。

同報告書は域内各国の経済・社会データを幅広く網羅したADBの代表的刊行物の一つ1。2011年版では、特別テーマとして、アジアにおける雇用の質的向上につき分析を行った(第1章「Toward Higher Quality Employment in Asia」)。

それによると、

  1. アジアは、1990年以降の経済成長と雇用創出に伴い、生活水準が大幅に向上したが、その進捗は一律ではなく、地域差がある。
  2. アジアで新たに創出される雇用は、低コスト・低賃金の製造関連職が多い。雇用創出のパターンや創出率はさまざまで、経済成長だけでは、妥当(Decent)な賃金と労働条件を伴う『良質な雇用』(クォリティ・ジョブ)が十分に創出されていない。
  3. グローバル化が進む一方、中間層の台頭や社会の高齢化など域内の人口動態は変化。職に対する人々の要求を満たし、包括的成長を支えうる、良質な雇用を創出する必要性が高まる。
  4. そのためには、高付加価値の雇用の創出と、労働生産性の向上が重要。クォリティ・エンプロイメントの実現により、経済成長が貧困削減につながりやすくなる。

  5. とはいえ、各国の経済発展段階が異なるアジアでは、解決策は一つではない。中所得国の場合は、輸出入と海外直接投資を促進し、人的資本の開発を通じて生産のバリューチェーンを高めつつ、社会保護の諸策を多様化させる必要がある。低所得国は、貿易を拡大し、農村部から都市部への人口移動を円滑化させることが有効。農村部の生産性を向上し、技能研修を拡大実施する取り組みも必要。非正規労働者に対し、最低限の社会保障を確保することも必要。

ADBの李イ 昌チャン鏞ヨン(Changyong Rhee)チーフ・エコノミストは、アジアでは全就労人口に占める非正規雇用者の比率が際立って高いと指摘した上で、貧困削減や所得格差の是正、社会・政治の安定化のためにも雇用の質を守ることが重要と強調、各国において適切な雇用需給政策がとられ、社会保護が一定水準に維持されれば、良質な雇用の確保に向けて大きく前進できるだろうと述べている。


1日本、豪州、ニュージーランドの域内先進国を一部含む。本体は、http://www.adb.org/key-indicators/2011/main参照。ハイライト(要約)は、http://www.adb.org/Documents/Books/Key_Indicators/2011/pdf/Highlights.pdf参照。 第1章は、http://www.adb.org/key-indicators/2011/part-i-special-chapter参照。


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