アジア経済見通し発表、 アジア途上国の成長は精彩を欠くものの堅調維持

【香港、2012年4月11日】アジア開発銀行(ADB)は本日、『アジア経済見通し2012年版』(Asian Development Outlook (ADO) 2012)1を発表、アジア途上国(日・豪・NZを除くアジア・太平洋の45カ国・地域)の経済成長について、本年は外需の軟調が重しとなるものの大半の国は堅調を保ち、2013年は民間消費に支えられて回復するとした上で、これらの国のGDP伸び率は、2012年は6.9%だが、2013年は7.3%に改善するとの予測を示した2

ADOは、ADBが毎年春に発表する代表的報告書。ADBの李昌鏞(Changyong Rhee)チーフエコノミストは、「アジア経済にとっては、ユーロ圏の不確実性が続いているほか、貿易が更に停滞するかもしれない点が、最大の懸念材料だろう」とする一方、「各国では市場開拓による多様化が徐々に進んでいるほか、民間消費が上向いている。全体でみれば、欧州経済に対する直接的なエクスポージャーが限定的だったことも、成長のモメンタム維持につながっているはずだ」としている。

マクロ指標では、2011年、対外貿易は振るわなかったが、内需によって一部相殺されたこともあり、2010年4%だった経常黒字の対GDP比は2.6%まで減少した。物価上昇率3は緩和しつつあるが、食料・燃料価格が変動的という潜在的リスクは依然残っている。2011年後半に投資が大きく落ち込んだこと、および海外資本の流出入の先行きが読みづらくなる可能性があることも、各国にとって予断を許さない点といえるだろう。

そのためアジアは、ユーロ圏で新たな問題が発生するなどして輸出の回復がもたついたり、貿易金融が枯渇、或いはアジアが中心的役割を担っているグローバルな供給網に影響を及ぼすといった事態に備えておく必要がある。大半のアジア国は、2008年の世界金融危機以降、金融が大幅に改善し、域外経済が更に軟化した場合でも対処可能になっている。李チーフエコノミストは、「短期的な政策対応が必要な例は特段見当たらないが、インフレ圧力が再び積み上がり、資本が流入に転ずれば、金融政策調整を通じた物価安定維持が求められる局面もあるだろう」としている。各国は長期的には、債務を減らしながら、包括的で環境的にも持続可能な成長を維持するという微妙な手綱さばきが求められよう。

ADOはまた、アジアにおいて貧富の格差が拡大している問題を取り上げ、地域の安定にとってマイナス要因になりかねないと警告している4。ADOによれば、経済規模の大きい中国、インド、インドネシアでも、所得格差を測る代表的指標であるジニ係数が約20年前に比べ上昇した5

要因についてADOは、教育や医療などの公共サービスに対するアクセスが公平に与えられていないことが貧困層にとって生活水準向上の妨げとなり、格差拡大に大きく寄与していると分析、こうした機会の不平等が世代を超えた貧困の固定化という悪循環を招くと述べている。また農村部では、テクノロジーやインフラ、投資面での遅れが、都市部との格差を深刻化させているほか、経済発展に伴い労働集約型産業から資本集約型産業への移行が進むと余剰労働力が増え、所得分配面での問題をもたらすことも指摘している。その上でADOは、質の高い雇用の創出、教育・医療への支出や貧困層を対象とする社会保護の強化、所得移動性の向上、インフラ整備などを、是正策の例に挙げている。

地域別見通し概況は次の通り(国別成長率予測は、報告書P.255、表A-1参照)。

  • 東アジア
    東アジアでは、輸出と投資の軟調が重しとなるため、2012年の全体成長率は、2011年の8.0%から7.4%に減速する見通し。2011年に9.2%を達成した中国の成長率は、2012年が8.5%、2013年が8.7%と、スピードは鈍化するが牽引役となろう。
  • 南アジア6
    南アジアでも、外需が弱いことと財政余地が限られることから、2012年の成長率は地域全体で6.6%とふるわないが、2013年は、インドに牽引される形で7.1%まで上昇する見通し。インドの成長率は来年7.5%とみられる。
  • 東南アジア
    東南アジアでは、タイ経済が引続き回復するため、成長スピードの加速が見込まれる。2011年4.6%にとどまった成長率は、2012年は5.2%となるだろう。
  • その他
    中央アジア経済は、ユーロ圏経済が弱く、ロシア経済の伸びも鈍いことを受け、本年目立った変化はなく、全体の成長率は6.1%となる模様。太平洋地域では、域内最大経済国のパプアニューギニアで、成長の源泉となってきたインフラ整備案件が一段落することから、地域全体の成長率は2012年は6.0%、2013年は4.1%に減速するとみられる。

【抄訳・本リリースの英原文はこちら
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1 http://www.adb.org/publications/asian-development-outlook-2012-confronting-rising-inequality-asia。
2 これらアジア途上国全体の経済成長率は、2010年が9.1%、2011年は7.2%とADOでは結論づけている。
3 インドなど一部を除き、原則としてCPIベース。
4 報告書第2部。関連英文リリースは、http://www.adb.org/news/asias-increasing-rich-poor-divide-undermining-growth-stability-adb-report参照。
5 報告書P.47、表2-2-1参照。
6 インド、パキスタン、バングラディシュについては、会計年度を適用。うちインドは4月~翌3月。パキスタン、バングラディシュは、7月~翌6月。


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