アジア新興国の資本市場は、世界経済によって 耐性が試される局面に、ADBの報告書

【マニラ、2011年8月9日】アジア開発銀行(ADB)は本日、「アジア・キャピタル・マーケッツ・モニター」(Asia Capital Markets Monitor)の最新版を発表した。それによると、ここ数年、高い耐性を示してきたアジア新興国の資本市場だが、米国・ユーロ圏経済の不確実性をきっかけに急落が発生したことで、政策強化を通じて投資家心理の改善と、過剰変動性の抑制をめざす必要性が高まっている。モニターは、ADBがアジア新興国1における株式・債券・通貨の各市場の動向を分析し、今後の見通しを行うもので、年1回発表される。

ADB地域経済統合室(OREI)のイワン・アジス(Iwan Azis)室長は、「アジア新興国市場は、海外投資家の心理の急変によって影響を受けやすい状況は変わらない。世界経済が弱まれば、アジアは輸出面で打撃を受けるため、米欧での出来事によるドミノ効果が、ポートフォリオのリターンを大きく超えることもありうる」としている。

世界金融情勢についてモニターは、世界経済の弱体化や米欧の債務問題、さらには中東・北アフリカの政情不安が要因で投資家が神経質になっており、ここ数ヶ月間で変動性が高まったとしている。一方、アジア新興国市場については、こうした(世界金融情勢の)変化から受ける影響はゼロではないものの、アジアではファンダメンタルズが強固で先進国との金利差もあるため、本年後半には域内への資本流入が勢いを取り戻すと分析している。

アジス室長は「理論的には、資金の移動性が高いほど資金配分が効率化し、社会福祉向上などの効果をもたらすが、アジア新興国市場にとっては、大量で変動性の高い資金流出入はリスクであり、問題にもなりかねない」と警告している。

モニターによれば、アジア新興国のソブリン債市場では、世界景気の減速懸念と米欧債務問題に対する不安が原因で、3月以降クレジットスプレッドが拡大している。しかし、相対的にみれば健全といえるアジアの財政ポジションと、域内成長の先行きが明るいことに支えられ、ソブリン債に対する意欲は依然根強い。アジア新興国におけるG3通貨建て債券の発行総額は、2010年第四半期の245億ドルに比べ、本年第1四半期は295億ドルとなった。

通貨では、先進国との経済成長率・金利差が多額の資金を呼び込んだことを受ける形で、アジアの大半の通貨が2010年に上昇、2006年以来の上げ幅となった2。モニターは、最近はやや緩んでいるものの、今後も上昇傾向が続くとみている。

ADBでは、アジア新興国のGDPの平均伸び率を、2011年が7.9%、2012年が7.8%としている。この点についてモニターは、各国の金融当局がインフレ対策を強化する方向にあるため、下振れリスクの余地が広がっていると指摘している。アジア新興国の資本市場は、その深さと広さの双方において目に見えて改善しているが、外的ショックに対して弱いという点は解消しておらず、各国が協力して市場の耐性強化にとりくむ必要があることを示唆している。


1 分析の対象国・地域は、中国、香港、インド、インドネシア、韓国、マレーシア、フィリピン、シンガポール、台湾、タイ、およびベトナム。
2 マレーシア・リンギは対米ドルで11%上昇した。


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