ユーロ圏と米の景気後退リスクが拡大、アジアに影響も アジア経済モニター発表

【マニラ、2011年12月6日】アジア開発銀行(ADB)は、『アジア経済モニター』(Asia Economic Monitor)最新版(2011年冬版)を発表、欧州債務問題の進展と弱い米経済によって世界景気が深く落ち込む恐れが高まる中、東アジア新興国(EEA)経済は2012年にかけて減速が続くとの見方を示した。モニターは、米とユーロ圏がいずれも著しく経済収縮した場合、東アジア新興国に対する影響も大きくなるが対処は可能と指摘、その上で、同地域全体の2012年の成長率見通しを7.2%、2011年については7.5%とした1

モニターは、ASEAN10加盟国に中国、香港、台湾、韓国を含めた14の東アジアの国・地域(EEA)のマクロ経済動向を分析し、半期に一度発表しているもの。とりまとめにあたった地域経済統合室(OREI)のイワン・アジス(Iwan Azis)室長は、「EEAが、欧州発の混乱によって貿易や金融面で受ける潜在的リスクは拡大している。世界景気の減速が広がるようなことがあれば、協調行動を迅速かつ決然と取れるよう、アジアの各国は備える必要がある」と述べている。

またモニターは、特別セクション「東アジアは世界経済危機を再度乗り越えられるか」の中で、ユーロ圏経済が景気後退に陥り、米経済も下降に転じて世界経済危機が再発した場合を想定し、東アジア新興国や日本に対する影響について、複数のシミュレーションを行っている。

その結果、最悪のシナリオ、すなわち米欧経済がリーマンショック後の2009年レベルまで落ち込んだ場合、これら東アジア新興国の2012年の平均成長率は、上記予測値より1.8ポイント低い5.4%程度と想定され2、主な理由についてモニターは、輸出先の多様化が進み、成長源としての内需が拡大したことなどにより、アジアは08-09年当時ほど深刻な影響を受けずにすむのではないかと分析している。反面、アジアの金融システムがぜい弱な状況は08年当時と変わっていない。モニターは、レバレッジの高い欧州の銀行が融資を手控え、与信条件の厳格化に向かっており、リスクを回避したい投資家が、保有するアジア金融資産を引き揚げる可能性を指摘している。

こうした世界経済危機が万一長期化し、その後の景気回復も遅れた場合、アジア各国が金融・財政面で講じうる措置としては、金融安定化をはかるセーフガード・メカニズムを設置・機能させ、域内の貸出チャネルを十分に確保することなどが含まれる。為替政策では、一定の柔軟性を保ちつつ、通貨安競争を招かないようレート調整が求められる。またアジアには、財源捻出にさほど苦心しなくても、景気刺激策を必要に応じて段階的かつ適切に実施する上で十分な財政余地が残されている。

地域別概況は次の通り。

  • 先進国経済
    2011年の成長率見通しは、ユーロ圏1.7%、米が1.6%で、来年は、それぞれ0.5%、2.1%の見通し。日本経済は、供給網の復旧が進み、震災の影響から立ち直るが、円高による輸出への打撃と内需の弱含みが続くことから、本年がマイナス0.5%、来年が2.5%のプラス成長と見込まれる。2012年の成長率は9月時点では2.8%とみられていた。前述の最悪シナリオのように米欧の景気が大幅悪化した場合、来年の成長率に対し0.7ポイントの押下げ効果をもたらすため、日本経済の伸び率は1.8%程度にとどまると見込まれる3
  • 中国
    内需は依然堅調だが経済は減速に向かうとの見通しから、9月に9.1%と予測されていた来年の成長率は、8.8%程度とみられる。本年の成長率予測9.3%は変更なし。
  • NIEs(韓国、シンガポール、香港、台湾)
    他のアジア国より世界貿易への依存度が高く、米欧の経済収縮の影響を受けやすい状態にあることから、平均伸び率は、本・来年とも概ね減速するだろう。
  • ASEAN
    ASEAN経済も、前回予測より減速する。洪水被害を受けたタイは、本年の経済成長率は2.0%だが、2012年は分断されたサプライチェーンを立て直す年になり、4.5%成長を達成する見通し。

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1 モニター37頁、表11。9月に発表された『アジア経済見通し2011年改訂版』(ADOU)では、東アジア以外の地域を含めたアジア・太平洋45カ国・地域(日本、豪州、NZを除く)全体平均の2012年の予測成長率は、7.5%だった。
2 モニター55頁、図77。
3 モニター55頁、図77。