東アジア新興国の現地通貨建て債券市場 へのリスク増大

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【東京、2013年9月26日】アジア開発銀行(ADB)は26日、『アジア債券モニター』(Asia Bond Monitor)最新版を発表した。それによると、本年6月末時点での東アジア新興国(EEA)9カ国・地域1の政府・企業が発行した現地通貨建て(LCY)債券市場は引き続き拡大傾向にあるものの、今後については、米の金融引締め予測や、アジアの成長鈍化、根強い資本流出などを背景に、リスクが高まっているとの見方を示した。。

ADBのイワン・アジス地域経済統合室長は、「各国の債券市場とその借り手を囲む状況は、現時点では1997~98年当時より改善しているが、これからは厳しくなるとみて間違いない。貸出金利の上昇と資産価格の下落に適切に対処できなければ、企業のバランスシートに影響し、成長に対するブレーキにもなりかねない」としている。

報告書は、これら9カ国・地域の大半において、大型インフラ投資の資金を調達する上で、安い資金調達の機会を逸してきたと警告。このままでは、成長の持続や貧困削減の目標達成にとって足枷ともなりかねない。ADBでは、2010年から2020年まで、8兆ドル以上のインフラ投資が必要と試算している。

 

6月末時点でのEEA合計の債券(公債・社債とも)市場の発行残高規模は約6.8兆ドルだった。現地通貨ベースでの前期(1-3月期)比伸び率は1.7%だが、本年6月に発表された前回の前期比伸び率2.9%よりは低く、米連銀が本年5月、近く債券買取を縮小すると発表したことで、投資家が慎重になっていることが窺われる。

現地通貨建て債券の発行はEEA全体で続いているものの、域外の調達コスト上昇を受けて一部投資家が買い控え傾向にあることから、新規発行額の増加率も鈍化している。4-6月期の新発債の総額は約8270億ドル相当で、前期比で4.0%増だった2。社債市場の新規発行総額は前期比20.1%減となる1680億ドルで、中国で新規社債発行額が48.8%落ち込んだことが大きい3

世界金融市場の変化に伴い、EEA国の企業、とりわけ格付の高くない企業にとって米ドルやユーロ、円といった基軸通貨建ての借入れはハードルが高くなっている。新規社債発行額は、本年1月から5月までの5ヶ月合計で810億ドルだったが、6~7月の2ヶ月合計では僅か75億ドルに留まっている。

アジアが金融危機に襲われた1997~98年当時に比べれば、政府・企業の債務に占めるLCY比率が高まっているほか、償還期間も長期化しており、現地通貨の下落や借入れコスト・投資家心理の急激な変化に対する脆弱性は低くなっていると言えるだろう。

アジアが更に耐性を高め、成長持続を支えるには、海外直接投資を含む安定的な資金調達方法を開拓する必要がある。FDIは資本市場を通じた投資より一般に安定性が高く、年金基金など幅広い投資家層を呼び込める。保険・年金基金による投資、保証、さらに劣後債なども活用し、あわせてプロジェクト情報が更に提供されるようになれば、交通やエネルギー、通信といったインフラ分野で、資金調達の道が更に開けるようになるだろう。

主要EEA国と日本の国別概況は、別表の通り(右側のダウンロードファイル参照)。

【抄訳・本リリースの英原文はこちら
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1 対象は、中国、香港、インドネシア、韓国、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナム。
2 主として、中央省庁による起債が9カ国合計で26.8%伸びたことによる。
3 中国以外の8カ国合計では、1.4%の微増。


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