パンデミック下の途上国支援:危機を乗り越えるアジア開発銀行

Inside ADB | 2021年10月26日

池田洋一郎・前 ADB 総裁首席補佐官からのメッセージ

財務省広報誌「ファイナンス」2021年7月号に掲載されたものです。

はじめに

本シリーズでは、2020年初に新型コロナウィルス(COVID19)の蔓延が始まって以降、筆者が、アジア開発銀行(ADB)の総裁首席補佐官として、あるいは、マニラの一市民として直接関わってきた問題と、その解決のために採られてきた様々な取り組みを、ミクロとマクロ、双方の視点をもって振り返りながら、パンデミック下の途上国支援について考えていく。最終回となる本稿では、各国がCOVID19の第二波、第三波に苦しめられる一方で、世界的にワクチンの開発、承認、調達、そして接種に係る取り組みが本格化し始めた2020年後半から2021年5月末までの期間に焦点を当て、その間、ADBが安全で効果のあるCOVID19ワクチンを、可能な限り迅速且つ公平に人々の手に届けるために、どのような支援を展開してきたかを紹介したい。そのうえで、本シリーズの締めくくりとして、COVID19危機に際し、ADBが刻々と変化する各国の状況、ニーズに応じて、史上最大の規模をもって柔軟かつスピーディな支援を提供できた背景にある5つの要素に光を当てる。

ADBによる90億ドルの新たなワクチン支援枠組み:APVAX(Asia Pacific Vaccine Access Facility)の立上げ

(1)加速するワクチン開発

COVID19の感染拡大を抑えつつ、経済・社会活動を再開していくための切り札として、2020年初からCOVID19ワクチンの開発が米国、英国、欧州、ロシア、中国の製薬会社を中心に急ピッチで進められている。病原体の発見からワクチンの承認・実用化までは通常10年以上にわたる長い年月と数千億円に上る莫大な費用を要する、それは94%の試作品が失敗に終わるという冒険的試みでもある*1。下のチャート*2が示す通り、麻疹は10年、B型肝炎は15年、ポリオは50年の年月がかかった。世界で毎年およそ70万人の犠牲者が出ているHIV・AIDSや40万以上が亡くなっているマラリアのワクチンは未だ開発されていない。これまで病原体の発見から実用化までの期間が最も短かったのは1960年代の流行性耳下腺炎(おたふく風邪:ムンプス)ワクチンであるが、4年を要した。こうしたことから、パンデミックに打ち勝つ解決策として、ワクチンは、少なくとも短期的な処方箋にはなり得ないように思われた。

しかし、2020年9月末に、ADB総裁室にてワクチン支援に向けた最初の議論が行われた際、ADB保健チームが用意した下の図は、これまでの常識を覆す圧倒的なスピードでCOVID19ワクチンの開発が進捗していることを示していた。

治験開始から一年足らずで承認取得が視野に入るという、前代未聞のスピードでCOVID19ワクチンの開発が進んだ理由としては、(1)SARS(重症急性呼吸器症候群)やMERS(中東呼吸器症候群)等、COVID19に関連するウィルスに着目した10年以上にわたる先行関連研究の存在、(2)2012年に設立されたICMRA(International Coalition of Medicines Regulatory Authorities:薬事規制当局国際連携組織*3を通じたCOVID19ワクチンの治験結果の情報交換、(3)2017年に発足したCEPI (Coalition of Epidemic Preparedness and Innovation:感染症流行対策イノベーション連合*4による資金支援や技術協力、(4)各国政府による財政支援の巨額投入、(5)製薬会社による臨床試験の各プロセスの並行実施、(6)臨床試験段階でCOVID19陽性者が市中に多数存在していたためワクチン効果の測定が容易であったこと等が、指摘されている。

(2)立ち上がるグローバル・パートナーシップ

COVID19ワクチンのスピーディな開発は重要だが最初の一歩に過ぎない。パンデミックに打ち勝つには、安全かつ効果のあるワクチンを、世界全体に公平、迅速に、そして継続的に行き渡らせなければならない。これを実現するには、購買力や製薬会社との交渉力に乏しく、ワクチンの安全性・有効性を審査する規制・組織が脆弱で、さらに集団免疫を獲得できるレベルにまで予防接種を適切に実施できる体制が未整備な途上国に、必要な支援を最適なタイミングで届ける必要がある。先進国の人々がワクチン接種を済ませても、途上国の脆弱層や貧困層の間でCOVID19が蔓延し続ければ変異種が容易に発生・拡大し、先進国にもすぐに伝播するだろう。ワクチンはグローバル公共財であり、「すべての人々が安全にならなければ誰も安全にならない(No one is safe, until everyone is safe)」のだ。

こうした問題意識に立って、2020年4月24日にCOVID19の診断、治療、ワクチンに関する新たなツールの開発、生産、そして公平なアクセスを加速させる各国政府、企業、国際機関、慈善団体が協働する枠組み「Access to COVID19 Tools Accelerator」が立ち上がった。各国が資金を拠出しあってCOVID19ワクチンを共同購入し、途上国が公平かつ安価にワクチンを入手できるようにするための国際的な枠組み―「COVAX(COVID19 Vaccines Global Access)」-はその柱の一つだ。GAVI(Global Alliance for Vaccines and Immunization:ワクチンと予防接種のための世界連合*5が総合調整機能を担うCOVAXは、上の図 (COVAXを通じたCOVID19ワクチン共同調達・配分の仕組み)が示す通り(1)CEPIによるワクチン開発支援、(2)先進国・上位中所得国政府によるワクチン購入予約と一定の前払金支払い、(3)WHOによる安全性・有効性の審査、(4)UNICEF等による製薬会社からのワクチン共同調達、そして(5)先進国政府や慈善団体による中・低所得国向けワクチン調達支援資金の提供、を組み合わせることで、2021年末までに世界各国がその所得如何に関わらず人口の少なくとも2割分のワクチンを確保できるようにすることを目指している。途上国にワクチンを供与するために必要な拠出金を2020年末までに20億ドル集める、との目標に対して、枠組み立上げから半年が経過した2020年9月末時点で約7億ドルの寄付が寄せられた*6。なお、先進国等からの拠出金を活用して途上国の支払い負担を軽減するとともに、製薬会社に対しては、事前共同契約により、開発中のワクチンが承認された暁に得られる利益を、より大きく、より確実にすることで、ワクチン開発の誘因を高めるCOVAXの仕組みは、GAVIが10年以上前に作り上げ、実践していた「AMC(Advance Market Commitment:事前買取制度)*7」を活かしたものだ。

(3)キャッチアップするADB

こうしたグローバルな動きに呼応して、2020年半ばよりADBに対しても、アジア・太平洋地域の発展途上国から、ワクチン調達そして予防接種展開のためにどのような支援が可能か、照会がかかっていた。しかしADBにとってワクチン支援は殆ど知見のない新分野であった。そもそも保健セクターに対して力を入れ始めたのも、つい5年ほど前のことだ。例えば、中尾武彦前総裁のイニシアティブで2014年5月に策定・公表した「戦略2020 中間レビュー」で、「保健セクター向けの年間融資額が全体に占める割合を2008年~2012年の平均2%から2020年までに3-5%に引き上げる」との目標を初めて設定。また、融資とノレッヂの融合を促進するために改組・強化したSustainable Development and Climate Change Departmentのもとに設けた7つのセクター別グループの一つとして「Health Sector Group」を立ち上げ、行内の保健部門の知識の集約、強化、他の専門機関との協業促進を担う体制を整えているところであった。従って、2019年末の段階では、保健セクター向け融資額は全体の約3%、融資の件数で見ても全体の7%を占めるに過ぎず、ADB内で「Health Specialist」の肩書の付いた保健分野の専門スタッフは9名という状況だった。また、保健セクター向けの支援の内容については、生活習慣病対策を含む包括的な保健システムの強化や国民皆保険制度の整備に主眼が置かれており、予防接種の支援については、2018年10月に承認されたサモア、トンガ、ツバル、バヌアツに対して子宮頸がん、ロタウィルス、肺炎球菌に向けワクチンをUNICEFを通じて供給する2,500万ドルのプロジェクト*8が、ほぼ唯一の前例であったのだ。

馴染みの薄いワクチン支援というテーマでADBが効果的な支援をタイムリーに展開するには、この分野で高い専門性と豊富な経験を有する世銀、WHO、UNICEF、GAVIあるいは米国CDC(Centers for Disease Control and Prevention:疾病予防管理センター)といったプレーヤーとの協業が欠かせない。この点、一騎当千の活躍をし続けているのが、ADB保健セクターのチーフを務めるパトリック・オセウェだ。公衆衛生の修士号と医師免許を持つケニア系アメリカ人のパトリックは、もともとCDCにおいて医学疫学専門家として活躍してきた人物であり、その後USAID(米国国際開発庁)に移籍して米国政府によるグローバルヘルス・イニシアティブを最前線で展開、さらに世銀の保健部門のグローバル・リーダーとして南アフリカでの結核予防のための官、民、国際機関間のパートナーシップ等を主導、といった実績を引っ提げて2018年8月にADBに入行した。パンデミックが始まる2年前に公衆衛生・疫学分野でグローバルな人脈と深い専門知識を持つパトリックを保健セクターのチーフとして迎え入れることができたことは、ADBにとって、そしてADBの支援を受けるアジア・太平洋地域の発展途上国にとって僥倖であった。

WHOとの連携については、マニラに拠点を構えるWHO西太平洋地域事務局の責任者であるRegional Director葛西健博士を中心にWHO職員とADBの保健チームがパンデミック以前から関係を作ってきた。また、UNICEFについては、2018年10月にインドネシアのバリで開催された世界銀行・IMF年次総会のマージンで中尾前総裁とヘンリエッタ・フォレ事務局長が両者の協働深化に向けた覚書に署名*9し、政策対話や知見共有の強化に取り組んできていた。本部レベル及び現場レベルで構築していた主要機関とのパートナーシップの存在も、ADBがワクチン支援を展開していくうえでの礎となった。

(4)打ち出されるワクチン支援の新枠組み(APVAX:Asia Pacific Vaccine Access Facility)

2020年9月29日、ADB総裁室ではADBが発展途上国に対してどのようなワクチン支援ができるか議論が交わされた。具体的には、安全で効果のあるワクチンが、平等、迅速に人々の元に届くために途上国政府が取るべき一連のアクションを下の図が示す通り「ワクチン調達」と「予防接種の展開」に大きく分類して整理したうえで、下記に挙げる重要な事柄を各国政府が高いレベルで実行できるよう、ADBが資金・知識・技術を組み合わせて後押しする、そして、WHO、UNICEF、GAVI等関連国際機関と協働しながらその内容を高めていく、といった方向性が示された。

  • 予防接種を提供する際、WHOが定めるベスト・プラクティスに即して、現場の医療従事者から始まり、高齢者や基礎疾患のある人々、基礎的医療サービスへのアクセスから疎外されがちな貧困層や脆弱層が優先される計画を作る(政治的・商業的な動機で優先順位が歪められないようにする)。
  • ワクチンの品質を保つためのコールドチェーン、医療廃棄物を適切に処理できる施設等、各種インフラを整備する。
  • いつ、誰が、どのメーカーのワクチンを、何回受けたのかを正確なデータとして蓄積し、深刻な副作用等が生じた際に追跡ができる体制を作る。
  • ワクチンを忌避する世論に留意し、ワクチンのリスクと効用に関する丁寧なコミュニケーションを取る。
  • 国内に主要な製薬会社を持つ途上国については、その製造能力強化のための投資をする。

ADBから借りた資金で途上国政府が調達できるワクチンの基準作りは、極めて重要かつ非常に困難な作業であった。粗悪品の流布に手を貸す事態は厳に避けなければならない一方で、あまりに保守的な基準を作れば「お金は用意できたが買えるものがない」という事態を招きかねない。そしてADB自身には、ワクチンの安全性や効果を検証する力はない。保健チームのメンバーは法務室や調達部のスタッフと議論を重ねる一方、10月13日に公表された世銀のワクチン支援の枠組み*10における基準を参照したり、WHO、UNICEF及び米国CDC等の専門家と日夜協議を重ねながら、慎重に検討を進めていった。また、ADBの戦略・政策・パートナーシップ局は、限られた財源が「早い者勝ち」によって費消されてしまうことを防ぎつつ、ADBの財務上の持続可能性を保つことのできる、国別のアクセス上限額の設定について、財務部のエキスパートとひざを突き合わせて検討を深めていった。

こうしたプロセスを経て2020年12月11日、その年最後となった理事会に提出され、全会一致で承認されたのが90億ドルの新たなワクチン支援の枠組み―アジア太平洋ワクチンアクセスファシリティ―APVAX(Asia Pacific Vaccine Access Facility)だ。その概要を以下にまとめた。

この日の理事会ではAPVAXと合わせてADBの2021年度予算が議論され、承認された。理事会の締めくくりには、パンデミック下でのスタッフの献身、理事会メンバー同士の貢献をたたえるべく、恒例の乾杯が総裁と各国理事との間で交わされた。ただ、互いがスクリーンに向かって、各々の居場所から杯を傾けた点は例年と大いに異なる風景であった。兎も角、ADB史上初めての挑戦であるワクチン支援の枠組み作りには一定の目途がついた。しかし、クリスマスも控えてほっと一息…つく暇をパンデミックは与えてはくれない。ADBの地域局のスタッフ、そして保健セクターのメンバーは、理事会に承認された枠組みの中で、それぞれのカウンターパートである途上国政府や他の国際機関と協働しながら、クリスマス、年末年始返上で、ワクチン支援の個別プロジェクトの組成を急ピッチで進めていった。そして、その過程で、浅川総裁率いるADBのチームは、APVAXの策定プロセスで経験した以上の困難と不確実性に直面していくことになる。

各国向けワクチン支援プロジェクトの準備と立ちはだかる壁

(1)壁を乗り越える工夫とパートナーシップ

APVAXの枠組み策定作業が佳境を迎えていた2020年12月初旬、フィリピン政府のCOVID19対応タスクフォース・ワクチン部会のメンバーは頭を抱えていた。2021年中には医療従事者や高齢者等を含む人口の23%(約2,500万人)、2023年中には全人口の予防接種完了を目指すワクチン分配プランは、WHOのガイダンスを参照しながら作り上げた。SRAによる承認が近々見込まれるワクチンも複数存在する。しかし、フィリピンは肝心のワクチンを手に入れることができるだろうか?先進国の動きは速い。欧米のワクチンメーカーと先進諸国との間では、60億回分のワクチンを予約する契約が既に締結されているようだ。カナダなどは国民一人当たり6回分のワクチンをすでに確保している。

他方、フィリピンを含む中所得国・低所得国にとって頼みの綱であるCOVAXは、「所得如何に関わらず、全世界の国々が人口の20%分のワクチンへのアクセスを確保できるよう、2021年までに20億回分のワクチンを共同購入する契約を結ぶ」ことを目標に活動を続けているが、年末までに調達する契約が成立しているのは13億回分に止まる*12。そして、ワクチンの現物がいつ届くかは不明だ。

こうした中、当時、フィリピン政府が調達契約締結に向けて交渉をしていた製薬会社からは、「契約締結後10日以内に調達総額の50%を前払い金として支払うよう」要請が来ていた。これが満たされなければ契約は失効、供給量の限られるワクチンを各国が我先に求めている中、フィリピンがワクチンを入手できる目途は当面立たなくなってしまう。ところが「物品調達の前払金に充てることのできる政府予算は、契約額全体の15%まで」との国内法*13の制約があることから、先方の要請に応えるには法改正が必要となる。法改正にはどんなに努力しても数カ月を要する。とても間に合わない。

パンデミック発生以来、フィリピン政府と並走を続けてきたラメッシュ・スブラマニアム局長率いるADB東南アジア局のスタッフを中心とするプロジェクトチームのメンバーは、フィリピン政府職員とともに悩んだ。彼らが(夏休みに続き)年末年始も返上で検討・協議を続けた末にたどり着いた解決策は「二段階アプローチ」だった。即ち、上記国内法の制約は政府予算だけに係るものであり、開発パートナーから借り入れた資金は対象外であること、そして2020年8月に承認された1億2,500万ドルのフィリピン向け保健セクター向けのプロジェクトが既に実施段階に入っていることに着目、進行中のプロジェクトの内容を変更して、その一部をワクチン契約締結に必要な前払い金に充てられるようにする。さらに、世銀と協議して、前払い金支払いへの貢献を両行で折半する。これで製薬会社が求める期日にギリギリ間に合う。こうした経緯を経て2月1日に理事会に提案・承認されたADBによるCOVID19ワクチン調達向けプロジェクトの第一号は、進行中プロジェクトの一部変更による2,500万ドルの融資*14という想定外の形となった。この間、ADBのプロジェクトチームとフィリピン政府は後続の4億ドルの本体融資の準備を続け3月12日に理事会承認*15に至った。この第二号ローンについてはAIIB(アジアインフラ投資銀行)からの3億ドルの協調融資を動員、また世銀も3月11日には5億ドルの融資を通じたフィリピン向けワクチン調達支援について理事会からの合意を取り付けた。ようやくフィリピン政府は、人口の50%に対して二回分の予防接種をするために必要な資金を確保できたのだ。しかし、ワクチンをめぐるグローバル狂騒曲がピッチを高めていく中で、ADBスタッフの眠れない夜はさらに続くことになる。

(2)売り切れるワクチン

3月末、フィリピンに続きインドネシア向けワクチン支援融資4億5千万ドルの理事会承認が得られたにもかかわらず、総裁室に設けられた大画面に映し出されるADB保健チーム、法務室、戦略・政策・パートナーシップ局のスタッフの表情は一様に冴えない。ADBに対してはフィリピン、インドネシアに続き15か国から、合計32億ドルものワクチン支援ファイナンスの要請が寄せられている。歓迎すべき動きだが、肝心のワクチンが殆ど売り切れているのだ。下の図が示す通り、2021年3月時点で、ADBがAPVAXの枠組みの中で提示した3つの適格基準のいずれかを満たすワクチンはアストラゼネカ・オックスフォード大学(英)、ファイザー(米)・バイオテック(独)、ジョンソン&ジョンソン(米)、モデルナ(米)がそれぞれ開発した4つのワクチンのみ。そしてそれらは既に、2021年中に生産可能なものすべて「売り切れ」という状況だ。インド、中国等の企業が開発中、あるいは欧米の製薬会社と製造委託契約を結んで量産しているワクチンの中には入手可能なものもあり、その一部は既にアジア・太平洋地域の途上国に届き始めているものある。しかし、それらがADBの基準を満たすのがいつになるかはわからない。

時を同じくして、さらに衝撃的なニュースが飛び込んできた*16。変異種の蔓延により巨大且つ急速な第二派に見舞われつつあったインドが、国内の予防接種プログラムを最優先にするべく、ワクチンの海外輸出を当面の間、停止するというのだ。インドはSII(Serum Institute of India)という世界最大のワクチン製造企業を擁する。SIIはアストラゼネカ・オックスフォード大学が共同開発したワクチンを「COVISHIELD」というブランド名で生産しているほか、米NOVAVAX社が開発したワクチンを「COVAVAX」という銘柄で生産している。SII*17によるCOVID19ワクチンの日毎生産量は2021年3月時点で240万個。そしてCOVAXが中・低所得国のために共同調達する予定のワクチンの8割はSII製という計画なのだ。米・英の製薬会社が製造するワクチンは先進国が買い占めている状況の中、インド製のワクチンが輸出禁止ということになれば中・低所得国が早期にワクチンを入手できる可能性は潰えてしまう。

(3)見直されるワクチン適格基準

採るべき道は一つしかないように思われた。APVAXのワクチン適格基準の見直しだ。既存の基準を満たすワクチンをめぐる巨大な需給ギャップに加えて、APVAXが第二の基準として挙げていた「WHOによる事前認証(Prequalification*18」が、当初の想定以上に長い時間がかかることが分かってきた。また、2020年末にWHOがSRAとして認めていた医薬品規制・認可当局の数を当初の35か国から6か国(オーストラリア、カナダ、EU、スイス、アメリカ、イギリスのみ)へと減らした*19ことで、APVAXの第三の基準が当初の想定よりも厳しいものになってしまった点も考慮に入れる必要があった。さらに、既存の基準が抱えていた曖昧さ―例えば、(1)SRAによる「認可」とは、通常の認可のみを指すのか、それとも「緊急使用認可」も含むのか、(2)ワクチン自体の認可と、それを作る業者や工場の認可を同一視するべきか、しないのであれば、後者については誰がどのような基準で判断するのか、等についてもクリアにしていく必要が内部で指摘されていた。

2021年3月から4月にかけてADB内ではワクチン適格基準の見直しに向けた検討が本格化していった。その際、厳格でクリアな適格基準とすることで、ADBが負い得る様々なリスクをできる限り最小化すべきとする法務室や調達部と、一日でも早く、一回分での多くのワクチンを途上国政府が獲得できるよう、基準はできるだけ柔軟且つ広いほう良いと主張する地域局のスタッフとの間で、土日、深夜も含めても激論が交わされ続けた。もともとADBよりも厳しい基準をもってスタートし、ADB同様の環境変化に直面していた世銀が、既に基準を改定していたこととも歩調を合わせる必要があった。こうした経緯を経て、ADBは2021年4月19日に下記改定案を理事会に提示*20、その1週間後に承認を得ることができた。

適格基準の改定に続き、APVAXを通じたアフガニスタン向け5,000万ドルのグラント支援が4月20日に、太平洋の4つの島嶼国(サモア、トンガ、ツバル、バヌアツ)向け1,890万ドルの支援が4月26日に、そしてモンゴル向け1,900万ドルのローンが5月28日に、それぞれ理事会の承認を得た。本稿執筆中の2021年5月末現在、ADBに対しては10を超える途上国からAPVAXを通じたワクチン支援の依頼が寄せられており、各地域局がプロジェクトの組成を着々と進めている。また、ADBの融資の適格基準を満たすワクチンも、欧米の4社製のワクチンに加え、5月末には中国の二社(シノバック、シノファーム)製ワクチンがWHOの緊急使用リストに加えられたことで、選択肢が広がった。

(4)広がるワクチン格差

しかし、「金はあってもモノがない」状況*21は続いている。現時点で世界中で摂取された約18億回分のCOVID19ワクチンのうち、75%は10か国*22に偏っており、人口の58%が少なくとも一回の接種を済ませている北米では、優先順位の低い若者や子供への提供も始まっている。一方アジア地域では人口の4割への接種を済ませた中国を含めても、全体では20%弱しか接種が進んでいない。例えばフィリピンは一億人の人口に対して450万回分、4.5%にとどまっている。WHOの推計では、仮にこれまで供給されてきたワクチンが、世界全体で平等に分配されていれば、世界中の全ての医療従事者と高齢者が2回分のワクチン接種を終えることができていたはずだ。公平なワクチン配分を実現するための頼みの綱であるCOVAXは、主要調達先として当てにしていたインドのSIIからの供給が滞る中、当初の予定していたペースで途上国へのワクチン提供ができていない*23
こうした問題に長期的・持続的に対応するために、現在ADBではアジア・太平洋地域におけるワクチン製造企業の生産能力増強に向けた融資の検討も続けられている。この地域にはSII以外にも、インドネシアの政府系製薬企業Biopharma、タイのSiam Bioscience、インドのBharat BiotechやBiological E. Limited、ベトナムのNanogen製薬バイオテクノロジー等、ワクチン製造実績のある製薬会社が少なからず存在する。今後、季節性インフルエンザと同様、COVID19ワクチンの接種が定期的に必要になる可能性が高いこと、また発生する変異種に対応できる複数のワクチンが必要となることを考えると、地場の製薬産業の生産能力向上への支援は、ADBが局横断的な取り組みを強化すべき、避けて通れない課題だ。

危機対応の背景にある力

本シリーズを通じて紹介してきた様々なエピソードが示す通り、パンデミック発生という創業以来の事態に際して、ADBは史上最大規模の支援を、史上最速のスピードで、変わりゆく顧客のニーズにできる限り柔軟に対応しながら提供してきた。その過程では「One-ADB」のアプローチを通じて深められた関連各局の協働を通じて技術協力と政府及び民間企業向けの融資が有機的に組み合わせられていった。さらに世銀、AIIB等の開発金融機関や民間金融機関、そしてUNICEF、GAVI、WHO、UNICEFといったグローバルヘルス分野の主要プレーヤーとのパートナーシップを通じて、それぞれの付加価値が高められていった。また、これらの対応は、前触れなく始まった職場閉鎖とほぼ全職員の長期間にわたる在宅勤務といった異例の状況の下で実現したものだ。2020年初に突然発生した危機に対して、ADBは、なぜ、このような対応をできたのだろうか。本シリーズの締めくくりとして、以下ではこの問の答えとなる5つの要素に光を当てていきたい。

1) 強固な財務基盤

ADBが「銀行」である限り、十分な資本金に支えられた健全な財務はあらゆる業務の基盤だ。また、ADBが「開発銀行」である所以は、AAAの格付けをもって資本市場から安価かつ安定的に資金調達をすることで、途上国政府に対して、彼らが自ら国債を発行して資金調達をするよりも長期かつ低利の条件で、国づくりに必要な資金を提供できることにある。従って、危機に際して融資額を膨らませて対応しようというならば、それに見合う資本金を危機前から有していなければならない。特に今回のパンデミックのように先進国も含めた世界全体が厳しい危機に陥り、財政状況が悪化している中にあっては、加盟国に対して増資を求めて財務基盤を充実させることは、政治的にも、時間的にも、現実的な選択肢とは言い難い。

この点、第3号の「6.史上最大の支援を支えた資金調達」で詳述した通り、2020年、ADBは史上最高額となる総額350億ドルの資金を、債券発行を通じて資本市場から調達している。そして、このような思い切った対応ができたのは、ADF(アジア開発基金)の超低利・超長期融資に係る貸付債権とそれに見合う資本金を、準市場金利で融資をするOCR(通常資本財源)のバランスシートに統合させることで、加盟国からの増資に頼らずに自己資本金を172億ドルから480億ドルへと3倍近く増加させるという、中尾前総裁のリーダーシップの下でADBが2017年1月に実現した革新的な取り組み*24があったおかげだ。

また、2020年4月に発表した200億ドルの支援パッケージ、及びAPVAXを通じた90億ドルのワクチン調達・予防接種展開支援の枠組みを策定する過程では、理事会メンバーから、ADBの財務の持続可能性について常に厳しい指摘が出された。これに対して、ADBの財務局及びリスク管理部門は、危機の深刻化・長期化によるADBの貸付先の信用力低下とADBの貸倒引当金の増加がADBの業務純益や資本に与え得る負荷について複数のシナリオを提示して入念に分析した。戦略・政策・パートナーシップ局は今回の危機対応で新たに導入した緊急財政支援ツールCPRO(COVID 19 Pandemic Response Option)や、本稿で紹介したAPVAXの金利、償還期間、据置期間等を検討する際、財務局と協議しながら、ADBの長期的な財務健全性との関係に常に留意してきた。財務の健全性を維持・強化するための革新的かつ緻密な取り組みの結果、史上最大規模に融資額を膨らませたにもかかわらず、ADBは今後10年以上にわたり増資に頼ることなく、顧客のニーズに応じて貸付量を微増し続けることができる見込みだ。

(2)更新されたIT基盤

本シリーズの第2号における「5.激変する外部環境への対応:本部閉鎖とテレワークへの移行」や、第3号における「7.長期化する危機と組織経営上の課題」で紹介した通り、ADBのスタッフ、経営陣、そして理事会は、ある日突然発生した「職場の閉鎖」という事態と、「テレワークへの移行」という要請に、スムーズに適応することができた。この背景にも、危機前の備えがある。即ち、UNDPのIT部門トップから2017年にADBに移籍してきたShirin Hamid女史が局長として率いる情報技術局の数多くのスタッフが、中尾前総裁をはじめ経営陣の全面的なバックアップを受けて取り組んできた「Digital Agada 2030」によるITシステムの基盤強化だ。これにより、危機前から、在宅勤務の前提として欠かせないサイバーセキュリティ対策の強化、文書の同時編集システム、各種ビデオ会議システムの導入等が進められていたほか、調達、資金管理、資金支払いや協調融資に係るデータベース等、銀行業務に欠かせないシステム基盤の更改が実施されていた。

(3)新旧リーダーの緻密な引継ぎとスムーズな交代

本シリーズ第2号の「2.初動―危機対応チームの立上げ」では、COVID19が発生・拡大しつつあった時期が、中尾前総裁から浅川現総裁への交代のタイミングと重なっていたことに触れた。ADBの総裁は、全加盟国参加による選挙を通じて選ばれる。立候補者を推薦する資格は、域内の加盟49か国に与えられている。中尾前総裁から浅川総裁への交代は2019年9月17日に中尾前総裁による退任意図の表明に始まり、10月中の立候補受付、11月末までの投票期間を経て、12月2日の選挙結果の公表で節目を迎えた。その直後から、中尾前総裁は浅川新総裁への丁寧かつ詳細な引継ぎに取り組んでいた。また、2020年1月16日にADBのスタッフ食堂で行った中尾前総裁の送別会では、新旧総裁夫妻が4名でステージに上がり、手を取り合って万歳をするシーンに、集った数百名のスタッフが拍手喝さいを送った。リーダーの交代がスムーズ且つ、万全な準備の下で行われていることを印象付けるシーンであり、私も含めてスタッフは、安心して日々の業務に、そして迫りつつあった危機への備えに勤しむことが出来た。

しかし、全ての国際機関が常にスムーズなリーダーの交代を実現できるわけではない。なかには、候補者選びが過度に政治化して遅れるケース、トップ不在の期間が長引くケース、あるいは、新しいリーダーが、これまでの方針と異なる改革を就任直後に打ち出して現場が混乱するケースもある。安定感のある新旧リーダーの交代は、その直後に発生したパンデミックにADBが直ちに取り組むことができた、目には見えないが大切な要素であったと考える。

(4)「次に何が起こるか」を考える力と、「走りながら軌道修正する」柔軟性

浅川総裁が2020年1月後半に開催されたダボス会議の直後に、武漢で発生していたCOVID19がグローバル・パンデミックとなることを予測し、5月に予定されていた年次総会の延期も含めた指示を補佐官である私に出していたことは、本シリーズ第3号の「2.初動―危機対応チームの立上げ」で紹介した。目の前で発生している問題に対応するだけでなく、その時点で入手可能な情報をもって「次に何が起こるか」を敏感に感じ、行動に移す姿勢は、浅川総裁だけでなく、ADBの各部門で活躍するプロフェッショナルたちが発揮した力だった。また、ADBは「銀行」という性質上、「保守的」で「動きが遅い」と、内外から指摘されることが少なくない。この点、本稿で詳述したワクチン支援は、従来のADBの姿とは全く異なる。ADBは新しい課題を前に「できない理由を考える」のではなく「困難をどう乗り越えるか」という姿勢で臨み、全力疾走を続けながらも、状況の変化に応じて軌道修正をする柔軟性を発揮した。これは、ADBスタッフの共通体験に基づく新しい組織DNAとして、今後に引継ぎ、発展させていかなければならない。

(5)長年培われてきた顧客との信頼関係

渡邊武ADB初代総裁は、ADBが「アジア・太平洋途上国から信頼され、慕われるファミリー・ドクター」となるべく、「顧客に教える前に、学ぶ(Learning before teaching)」の大切さをスタッフに説いた。1966年の設立以来50年を超える歳月が過ぎ去り、ADBはもはや町のファミリー・ドクターではなく、世界最大の人口を擁するアジア・太平洋地域の「総合病院」へと進化した。それでも、渡邊初代総裁が大切にしたモットーは、スタッフが大切にする価値として今も息づいている。マニラに拠点を置く本部及び42の現地事務所での日々の業務を通じて、ADBのスタッフ及び経営陣が、これまで営々と積み重ねてきた顧客との対話が育てた信頼関係が、未曽有の危機に際して、ADBが「選ばれる開発金融機関」足り得たこと、そして、顧客の期待に応える支援を展開できた理由であることは疑いがない。この点、ADBが支援先の途上国の政府、民間企業等の職員、及びパートナーである国際機関、研究機関、及び市民社会団体に対して2021年3月に実施したアンケート調査では、「ADBのパンデミック対応のインパクトについてどう考えるか」との質問に対しては、80%が「Excellent」あるいは「Good」と回答している。土日や休暇も返上でパンデミック対応に取り組んできたADBのスタッフにとって、これ以上励みになるデータはないだろう。

おわりに

本稿の締めくくりに、パンデミックから経済、社会、そして健康と命を守るために、日夜奮闘する各国の人々、そしてADBの同僚たちに心からのエールと敬意を送りたい。また、自分自身、ADBの一職員として、微力ながらも歴史的な人類共闘の取り組みに関わることができたことに感謝したい。とはいえ、パンデミックに未だ終息の兆しは見えない。本稿執筆の間も、日本では緊急事態宣言が三度発令され、インドでは第二派による医療崩壊で多数の命が失われている。状況は厳しく、不確実性の霧は晴れない。しかし、浅川総裁が昨年3月のスタッフ集会で力強く語りかけた通り、「人類史を振り返れば、パンデミックには必ず終わりがくる」。一日でもはやく「終わりの日」の到来を手繰り寄せるためには、引き続き、国際機関、各国政府、民間企業、研究機関、市民社会団体といったプレーヤーが、国境、専門性、政治的立場の違いを乗り越えて、協働を続けることが欠かせない。そしてその主要プレーヤーであるADBの果たすべき役割と責任は大きい。。

本稿執筆にあたっては、多数のADBの同僚から貴重なインプットや丁寧なレビューを頂いた。個別にお名前を挙げることは控えるが、この場を借りて、お礼を申し上げたい。なお、本シリーズにおける意見にあたる部分は筆者個人の意見であり、また事実関係に誤りがあれば、それは所属組織ではなく、筆者個人にその責任は帰せられる旨、申し添える。


*1) 出典:Lancet, October 17, 2020, “Estimating the cost of vaccine development against epidemic infectious diseases:a cost minimization study”
*2) 出典:Lancet, October 17, 2020, “Estimating the cost of vaccine development against epidemic infectious diseases:a cost minimization study”
*3) 出典:Nature, December 18 2020, The lightning-fast quest for COVID vaccines — and what it means for other diseases
*4) ICMRA:日本を含む世界29の国・地域の規制当局からなる長官レベルの国際会合。WHOのオブザーバー参加を得つつ、安全・有効・高品質な医療・保健製品へのアクセスの促進、医薬品規制当局に対する国際的な戦略的視点の提供、共通の規制問題・課題に対する知見の共有を促進。
*5) CEPI:世界規模でワクチン開発を促進するために、2017年1月のダボス会議で発足した官民連携パートナーシップ。日本、ノルウェー、ドイツ、英国、オーストラリア、カナダ、ベルギーに加え、ビル&メリンダ・ゲイツ財団、ウェルカム・トラストが拠出し、平時には需要の少ない、エボラ出血熱のような感染症に対するワクチンの開発を促進。流行が生じる可能性が高い低中所得国も入手できる価格でのワクチン供給を目的としている。
*6) GAVI:開発途上国を対象にワクチンの確保、予防接種の効率性・有効性の向上、予防接種プログラムの改善、ワクチン等の市場形成等を目的に2000年1月のダボス会議で設立が決定された官民パートナーシップ。本部はスイスジュネーブ。職員数約160名。設立当初はUNICEF内に設けられていたが、2009年にスイス政府が独立した国際機関地位を持つスイス財団として認定。先進国・途上国政府、市民社会、ゲイツ財団、先進国・途上国のワクチン業界、世銀、UNICEF、WHO、及び個人資格で参画する有識者で構成される理事会が意思決定を担う。
*7) 2021年5月末現在、COVAXは66億ドルの無償資金を動員、AMCに参加する92の中・低所得国に対して13億回分のワクチンを確保している(出典:Gavi)。
*8) 2007年2月に成立した世界最初のAMCは、GAVIが肺炎球菌ワクチンを対象としてグラクソ・スミスクライン社とファイザー社との間で事前購入契約を取り交わす一方で、イタリア、イギリス、カナダ、ロシア、ノルウェー、ゲイツ財団が総額15億ドルの財政支援を提供。途上国への安価なワクチン提供に成功した。その後、マラリア・ワクチンが第二のパイロットAMCの対象とされている(出典:ワクチン買取補助金事前保証制度(川合周作、山形辰史))。
*9) 出典:Systems Strengthening for Effective Coverage of New Vaccines in the Pacific Project, Reports and Recommendations of the President | October 2018
*10) 出典:ADB News Release, October 11, 2018 “UNICEF and ADB Join Forces for Children and Young People”
*11) 出典:World Bank Group Press Release , October 13, 2020, World Bank Approves 2 Billion for COVID-19 Vaccines
*12) COVAXを通じて調達されるワクチンには、WHOの事前認証を受けたもの、厳格な規制当局(Stringent Regulatory Authority:SRA)による認可されたもの、あるいはWHOの緊急使用リストへの掲載がされたものが含まれる。
*13) COVAXは、2021年2月24日にアストラ・ゼネカ製のワクチンをガーナに届けたのを皮切りに、同年5月末までに127か国に対して7,700万回分のワクチンを提供している。フィリピンには2021年3月4日にアストラ・ゼネカ製ワクチン約255万回分、ファイザー・BioNtech製ワクチン約19万回分が届いた(出典:Gavi)。
*14) Republic Act No. 9184:“the Government Procurement Reform Act, 2009 (An Act Providing for the Modernization, Standardization, and Regulation of the Procurement Activities of the Government and for Other Purpose)”
*15) 出典:ADB News Release | 1 February 2021, ADB Provides 5 Million to Help Philippines Procure COVID-19 Vaccines
*16) 出典:ADB News Release | 12 March 2021, 00 Million ADB Loan to Help the Philippines Purchase COVID-19 Vaccines
*17) 出典:Financial Times March 25, 2021 “India blocks vaccine exports in blow to dozens of nations&
*18) SIIは2021年末まではCOVAXを含む国外への供給は見合わせざるを得ないと表明している(出典:CNN May 26, 2021“The world's biggest vaccine maker is stalling on exports. That's a problem for the planet's most vulnerable”)*19)出典:WHO “Product eligibility under the COVAX Facility
*20) 出典:ADB April 10, 2021 “Proposed Amendment to ADB’s Support to Enhance COVID-19 Vaccine Access
*21) UNICEFの推計では、2021年5月現在で、途上国におけるワクチンの需給ギャップは1億4,000万回分、6月末には1億9,000万回分に膨らむ見通し(出典:Statement by UNICEF Executive Director, Henriette Forre, May 17, 2021)。
*22) 2021年5月末現在で供与数が多い10か国は中国(5.6億回分)、米国(2.9億回分)、EU(2.3億回分)、インド(2億回分)、ブラジル(6,500万回分)、英国(6,200万回分)、ドイツ(4,700万回分)、フランス(3,400万回分)、イタリア(3,200万回分)、トルコ(2,800万回分)。(出典:Bloomberg)。
*23) COVAXは当初、2021年2月~5月までの間に世界中の中・低所得国に対して合計1億1,100万回分のワクチンを提供する予定であったが、SIIからの供給が滞ったことで、提供できた量は、7,700万回分に留まっている。
*24) ADFとOCRの勘定統合の詳細な内容や経緯については、「アジア経済はどう変わったか―アジア開発銀行総裁日記」(中尾武彦著)の「第12章:ADBの業務を改革し、新戦略を練る」における「通常資本と譲許的資金の資本統合による貸付能力の拡大」(293ページから300ページ)、及び「アジアはいかに発展したか―アジア開発銀行がともに歩んだ50年-」(ピーター・マッコーリー著 浅沼信爾、小浜裕久監訳)における「革新的な財務改革:アジア開発基金の融資機能と通常資本財源の統合」(334ページ~338ページ)を参照されたい。


財務省広報誌「ファイナンス」2021年5月〜6月号に掲載された寄稿記事もこちらからご覧いただけます。

●パンデミック下の途上国支援 :危機に立つアジア開発銀行(同誌5月号)

2020年第一四半期までに、ADBが如何に初期対応に取り組んだかをまとめました。

●パンデミック下の途上国支援 :長期化する危機に挑むアジア開発銀行(同誌6月号)

2020年4月13日に取りまとめた200億㌦の支援パッケージの概要と具体的な取り組みを紹介しました。


筆者略歴

  • 2001年財務省入省、主計局、広島国税局等を経て、2008年よりハーバード大学院ケネディスクール留学。公共政策修士号取得。以降、国際金融・途上国開発、国際租税分野等の政策立案を担当。2011年夏より3年間、世界銀行に出向、バングラデシュ現地事務所及びワシントン本部にて開発成果の計測・モニタリングの仕組みの立上げと展開に尽力。
  • 2017年7月にアジア開発銀行総裁首席補佐官に就任。中尾武彦前総裁、浅川雅嗣現総裁のトップ外交、組織経営全般を補佐。
  • 著書「ハーバード・ケネディスクールからのメッセージ~世界を変えてみたくなる留学~」、「バングラデシュ国づくり奮闘記~アジア新・新興国からのメッセージ~」(共に英治出版)