インベストメント・スペシャリストの中根(森上)純香さんに聞く

Inside ADB | 2020年4月16日

キャリアパス

東京大学文学部卒→みずほ銀行→日本貿易保険(出向)→みずほ銀行→仏INSEAD(経営学修士)→ADB入行(民間部門業務局→リスク管理部門→現職)

学生時代に環境問題や途上国の開発問題について学び、社会貢献を通じて世の中にインパクトを与える仕事に携わりたいと熱く思うようになりました。大学卒業後は、プロジェクトファイナンスの世界に飛び込み、みずほ銀行で東南アジアや中東を対象とした電力・再生可能エネルギー分野の融資業務や財務アドバイザリー業務を担当しました。出向先の日本貿易保険では、日本企業の海外進出を支援するための貿易保険の引受や輸出金融に係る国際交渉にも携わりました。その後、フランスの国際経営大学院でMBAを取得し、グローバル人材としてのスキルを磨き、2016 年にヤング・プロフェッショナル・プログラム(YPP)制度を通じてADB に入行。ジョブ・ローテーションの一環として、個別案件に関するリスク管理や審査業務に携わった後、現在、民間業務部門局にて南アジア・中央西アジアのインフラ案件への投融資を担当しています。

ADBでの業務について

私が配属している民間部門業務局は、ノンソブリン公共セクターおよび民間セクターのプロジェクトに対し、直接融資、出資、保証、貿易金融などの形で資金面での支援を行っています。私は主に南アジア・中央西アジアを対象とした質の高いインフラ投資を促進するための、民間企業向けの投融資業務に携わっており、プロジェクトの分析や各種調査、取りまとめに加え、相手国政府や企業関係者と信頼関係を構築しながら協議や交渉などを担当しています。投融資先の企業も、政府系企業や地方の中小企業など、資金ニーズやファイナンスへの理解度も異なると同時に、プロジェクト国の政治経済情勢、文化や慣習などを的確に把握した上できめ細やかなコミュニケーションを行う必要があります。今までに、カザフスタンの国営エネルギー企業向け融資案件やアフガニスタンの太陽光発電事業などに携わりました。今後も民間投資の推進役として、国や地域、分野を問わず、プロジェクト国が抱える短期的・長期的な課題を解決するために、プロジェクトの案件形成や実施、評価まで、様々な案件に携わっていける知見を備えたプロフェッショナルに成長したいと考えています。

キャリア・エピソード

前職のみずほ銀行で、財務アドバイザリーチームの一員としてインドネシアの地熱発電事業に携わった当時、この分野での大規模プロジェクトファイナンスの前例はまだありませんでした。経験や専門性など、異なる背景や価値観を尊重しあえる多国籍のプロジェクトメンバーと1年以上も協議を重ねて新規融資にこぎつけることができました。世界の地熱資源量の約40%を占めているインドネシアの発展に寄与できたことに大きな達成感を得られました。また、私自身、さらなる高みへの成長を目指そうと決意を新たにすると同時に、ADBなどの国際開発金融機関でのキャリアに興味を持つきっかけにもなりました。

ADBのプロジェクトチームの一員として携わったネパールの水力発電事業では、大地震による被害や度重なる政権交代などの試練を乗り越えて、当初の計画から7年以上の歳月を経て融資契約を締結することができました。ネパールの電力セクターで初めてとなったこのノンソブリン融資はADBのような国際開発金融機関だからこそ取り組むことのできる案件であり、国内外の投資機関から高い関心が得られました。

SDGsへの取組み

民間部門業務は、SDG7 (質の高いインフラや再生可能エネルギー)、SDG9(産業と技術革新の基盤づくり)、SDG17(パートナーシップ)に貢献しており、世界銀行グループや欧州復興開発銀行(EBRD)及び各国の開発金融機関と協働する機会も多くあります。

仕事のやりがい

アジア・太平洋地域の経済成長を支えるために必要なインフラ投資額は2016~2030年累計で約26兆ドルに上ると言われており、電力や交通、通信や水道といったインフラなど、ADBの投融資に占める民間部門のインフラ事業の割合も拡大します。私自身も、今後、開発効果を促進する高度技術に関する理解を更に深めるとともに、よりクリーンな技術を用いたプロジェクトを特定・計画し、実行していけるよう、毎日仕事と真摯に向き合っていきたいと思います。また、南アジア・中央西アジア地域におけるインフラ案件の参入に興味を示す日本企業も増えてきており、ADBの知見を活かした案件の推進にお役に立てればと思います。

求めらるスキルや経験

ADBはYPPを通じて、専門性を有する若手を対象とした職員の募集を行っています。開発協力に関心のある若手の方は、自分の専門性を高めることを意識しつつ、キャリア設計を行うことをお勧めします。また、多様な国籍やバックグラウンドを持つ内外の関係者と仕事をするには、高いチーム力も求められます。途上国における様々な課題に直面した際に、それら困難を人生におけるスパイスとして、笑いに変える精神的なタフさを持ち合わせた人こそ、まさにADBが求める人材であると思います。

プライベート

ADB本部のあるマニラの治安について不安に思われる方もいらっしゃいますが、日本食店なども多く、交通渋滞以外はとても暮らしやすい場所です。またADBでは、ワークライフバランスを実現することも重視されるので、こちらに来てからダイビングやテニスなどの新しい趣味もできました。ADBの同僚や大学院の友人などと手料理を持ち寄って集まり、とりとめのない話をするのが週末の楽しみです。特にガールズトークは出身国が異なったとしても話題が尽きることなく、お喋りを楽しむだけでも、立派なストレス解消になり、日々の仕事への英気を養っています。