フィリピン、マニラ(2021年8月26日) – アジア開発銀行(ADB)は、ベトナム中南部沿岸のビンディン省とクアンナム省における、特に多くの少数民族コミュニティが暮らす遠隔の高地を対象として、気候変動に対する交通と水供給インフラの強靭性改善のために6千万ドルの融資パッケージを承認した。

このプロジェクト(The Climate Resilient Inclusive Infrastructure for Ethnic Minorities Project I)では、気候変動に対応した設計基準を用いて121.8 kmの道路を改修し、115 kmの給水パイプラインを建設するとともに、信頼性の高い気象・気候データのタイムリーかつ費用対効果の優れた方法での提供を支援する。このプロジェクト通じて、約24万3千人が恩恵を受けることが見込まれており、そのうちの12万6,300人は少数民族の人々である。

ホン・アン・グエン(Hong Anh Nguyen)ADBプログラム・オフィサーは、「このプロジェクトは、ベトナムの遠隔地に暮らす少数民族コミュニティの生活環境の改善を目的としている」とした上で、「遠隔地にある農村生産拠点と、アカシアのような作物の市場や加工施設との連結性を強化させ、保健・医療、教育、市場サービスへの受益者のアクセスを向上させる。また、このプロジェクトは、安全な水や灌漑施設へのアクセスを拡大させる」と述べた。

この融資パッケージには、ADBによる5,800万ドルの通常融資と、ADBの高度技術信託基金を活用した200万ドルの無償資金協力が含まれる。この無償資金により、気候リスク管理のためのデータ・システムの提供と設置が手当てされる。さらに、このプロジェクトにはベトナム政府からの2,173万ドルの資金が含まれる。

ベトナム経済は2016年から2018年にかけて平均7.0%の成長を果たしたが、新型コロナウィルスのパンデミックにより、2020年の成長率は2.9%に減速した。経済的に豊かな沿岸地域と少数民族の人口が多い内陸の高地とでは、著しい地域間格差が存在する。ビンディン省およびクアンナム省全体の貧困率がそれぞれ5.5%と10.3%であるのに対し、少数民族の世帯で貧困状況、あるいはそれに近い水準にある世帯の割合は、それぞれ87%と55%になっている。

これらの地域では、質の悪い、分断された交通・水資源インフラが課題とされている。雨季になると丘陵地や山岳地に位置する道路は冠水し、分断され、多くの少数民族のコミュニティがしばしば孤立する。このプロジェクトの対象地域において、信頼できる安全な水を利用できる世帯は60%未満である。限られた水資源へのアクセスと劣悪な衛生環境は、水系感染症の高い発生の原因となり、人々を貧困に追いやっている。

ベトナムは災害と気候変動リスクが高く、特に洪水による被害が多い中、自然災害による経済損失額は年間平均で23億7,000万ドルに上ると推定されている。その中でもビンディン省とクアンナム省が最も大きな被害を受けている。

ADBは、極度の貧困の撲滅に努めるとともに、豊かでインクルーシブ、気候変動や災害等のショックに強靭で持続可能なアジア・太平洋地域の実現に向け取り組んでいる。ADBは1966年に創立され、49の域内加盟国・地域を含め68の加盟国・地域によって構成されている。

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