フィリピン、マニラ(2020年11月24日)— アジア開発銀行(ADB)は、インドネシアの国営電力会社であるState Electricity Corporation(PLN)に対して、インドネシア東部における電力利用拡大および再生可能エネルギーの普及促進に向け、6億ドルの融資を行うことを決定した。このプログラムには、貧困削減日本基金からの300万ドルおよびアジアクリーンエネルギー基金からの300万ドルの無償資金協力も含まれる。
インドネシア東部における持続可能なエネルギーアクセス〜電力網開発プログラムの第2フェーズは、カリマンタン、マルク、パプアの辺境地域の9つの州で電力利用を拡大し、サービスの信頼性向上を図るPLNの取り組みを支援するものである。このプログラムの第1フェーズは、スラウェシおよびヌサトゥンガラの8つの州を対象に2017年に開始された。
ADB 東南アジア局でエネルギーセクターを担当する久保徹課長は、「このプログラムは、東部インドネシアの辺境地域のコミュニティーを対象に、太陽光発電やその他の再生可能資源の利用などを含め、持続可能で、公平かつ信頼性の高い電力利用を促進するものである」とした上で、「信頼性の高い電力供給は、特に新型コロナウイルスのパンデミックの状況下において、人々が就業機会や教育、保健医療サービスにアクセスする上で不可欠である。このプログラムは、インドネシア東部におけるパンデミックからの経済回復、そして公平かつ力強い成長に貢献する」と述べた。
インドネシアの経済規模は、2000年以降2倍に拡大し、貧困率は、2000年の19.1%から2018年には9.7%まで低下した。新型コロナウイルスのパンデミックによって、そうした成果が現在危機に瀕している。ADBの予測によると、2019年に5.0%の成長を示したインドネシア経済は、2020年には1.0%のマイナスとなる。政府は、経済的打撃を緩和するため、2400万の貧困世帯に対する電気料金の無償化、そして700万世帯への50%の割引を実施すると発表しており、これによって、PLNの収益および財務能力は低下する恐れがある。
政府は、人口の半数以上が暮らすジャワ島の外に、経済の成長センターとしての新たな拠点を開拓する取り組みを推し進めてきた。インドネシア東部の住民の電力へのアクセス率は未だ限られており、電力利用が不十分であるかまたは利用できない世帯は、パプアでは56%、マルクでは28%にのぼり、これは全国平均の4%をはるかに上回っている。政府は、電力が供給されていない433の村落に対して優先的に取り組みを進めており、それらはすべてパプア、西パプア、東ヌサトゥンガラ、マルクという東部の州に位置している。
インドネシア東部の電化率の向上は、2024年までに全国民に電力をという目標を掲げる政府のインフラ投資計画の中核をなすものである。政府は、エネルギーミックス全体における再生可能エネルギーの割合を、2016年の13%から2025年には23%に引き上げることを計画している。また、ディーゼルへの依存度を可能な限り削減する方針であるが、これは東部の辺境地域では非常に困難な課題である。
ADBのエネルギー専門官であるダイアナ・コネット氏は、「このプログラムによって、再生可能エネルギーを利用したPLNによる辺境コミュニティーへの電力供給は6倍に拡大するとともに、家庭内での灯油や木材の使用は減少し、環境や社会に多大な恩恵をもたらすことが期待される」と述べた。
スラウェシとヌサトゥンガラで行われた同プログラムの第1フェーズは成功を収めており、2019年末までに、新規顧客は153万人増加し、当初の目標であった137万人を上回った。第2フェーズでは、2024年までに9つの州で155万人の新規顧客に電気を供給することを目指している。
PLNへのこの融資は、インドネシア政府による保証付きの成果連動型融資であり、低・中圧配電網のインフラ構築を行う電力公社の取り組みを支えるものでる。さらにPLNのスタッフによるより適切な資産管理や廃棄設備の安全な処分、調達・支払いシステムの改善にも貢献する。
アジアクリーンエネルギー基金からの無償資金によって、再生可能エネルギーの発電設備に高度な技術を取り入れ、システム設計とメンテナンスを改善することが可能になる。また、貧困削減日本基金からの無償資金は、貧困世帯に電力網を繋げるための施策を支援するとともに、PLNによる社会やジェンダーへの長期的な影響評価の実施を助ける。
ADBによるエネルギー分野を対象としたその他の取り組みとして、インドネシア東部における風力・太陽光発電を支援する継続中の2つの民間セクター融資などがある。またこれらの取り組みには、技術協力を活用しつつ、セクターのガバナンスと財政の持続可能性の強化を支援するとともに、民間セクター投資を促進し、クリーンでかつ効率的なエネルギーオプションを推進するための政策支援型融資も含まれる。
ADBは、極度の貧困の撲滅に努めるとともに、豊かでインクルーシブ、気候変動や災害等のショックに強靭で持続可能なアジア・太平洋地域の実現に向け取り組んでいる。ADBは1966年に創立され、49の域内加盟国・地域を含め68の加盟国・地域によって構成されている。