フィリピン、マニラ(2020年11月27日) - アジア開発銀行(ADB)は、カンボジアの6つの州を対象に、キャッサバ、カシューナッツ、マンゴー、野菜、在来鶏などの主要農畜産物の加工に関するアグリビジネス分野の能力向上を目的とする7,000万ドルの融資を承認した。
農業バリューチェーンの競争力と安全性の強化プロジェクトは、コンポンチャム州、コンポントム州、オッドーミアンチェイ州、プレアビヒア州、シャムリアップ州、トゥボーンクモム州の約230の農業協同組合と50のアグリビジネス事業に利益をもたらすことを目的としている。
上田剛ADB首席自然資源・農業エコノミストは、「アグリビジネスに関連する地元中小企業が農産品の高付加価値化を進め、国内外に向けた販売力を強化することができれば、カンボジアの経済成長や経済の多様化に農業は大きく貢献することができる」とした上で、「農業への民間投資は、融資や品質の高い原材料農産物へのアクセスの向上と併せて、カンボジアのアグリビジネスの潜在力を解き放つと同時に、雇用の創出や農村部の生活向上に貢献する」と述べた。
カンボジアの人口の76%は農村部に居住しており、2019年の国内総生産(GDP)に占める農業の割合は20.7%、総雇用に占める割合は31.2%となっている。同国の農業関連産業は2010年から2019年まで年平均1.7%の成長を遂げた。多様で付加価値の高い製品の不足のため、農産物加工品のGDPに占める割合はわずか4.0%にとどまっている。さらに新型コロナウイルスのパンデミックが、農業サプライチェーンを寸断し、農家やアグリビジネスの関係者の収入や市場機会を減少させている。
このプロジェクトは融資総額の約10%に過ぎない農業およびアグリビジネスのための信用貸付へのアクセスを促進させる。また、クレジットラインや信用保証など、相互に補強しあう金融スキームを実施する。
このプロジェクトは、キャッサバ、カシューナッツ、マンゴー、野菜、在来鶏などのバリューチェーン全体における食品の安全性と品質を強化するための取り組みを支援する。また、農業協同組合が適正な農業規範を採用するとともに、食品安全試験所を整備し、国際的な認定を取得することを支援する。さらに、農業協同組合が、高収量で干ばつや病気に強い品種やその他の農業資材を確保できるよう支援することを通じて、作物の種子や家禽の品種に係る研究開発を支援する。さらに、プロジェクトの対象地域において110キロに及ぶ農村道路の改修および農場と市場の接続改善を支援する。
このプロジェクトは、東南アジア諸国連合(ASEAN)インフラ基金からの500万ドルの融資を受けて、グリーン・ファイナンスの仕組みを試行する。また、ADBは、フランス開発庁(AFD)からの2,500万ドルの融資と、貧困削減日本基金(JFPR)からの300万ドルのグラントも管理する。
ADBは、極度の貧困の撲滅に努めるとともに、豊かでインクルーシブ、気候変動や災害等のショックに強靭で持続可能なアジア・太平洋地域の実現に向け取り組んでいる。ADBは1966年に創立され、49の域内加盟国・地域を含め68の加盟国・地域によって構成されている。