フィリピン・マニラ (2018年7月6日) アジア開発銀行(ADB)理事会は、バングラデシュ政府が避難民支援として、基礎的インフラ整備や必要なサービスの提供が行えるように、総額2億ドルのパッケージを予定しており、その第一段階として1億ドルの無償支援を承認した。

2017年8月後半以降、約70万人がミャンマーのラカイン州から国境を越え、バングラデシュ南東端のコックスバザールに流入している。これにより、地元のインフラや経済は大きな負担を強いられており、人道的にも重大な懸念となっている。避難民たちは、この地域に広がる32のキャンプで暮らしている。病気の蔓延を防ぎながら、食糧、シェルター、医療、衛生、水など、キャンプで必要な支援を提供することが日々課題となっている。これらに対処できなければ、キャンプの状況は著しく悪化する恐れがある。

中尾武彦ADB総裁は、「人道的ニーズの高さを鑑み、ADBは世界銀行やその他の開発パートナーと密接かつ迅速に協力し、バングラデシュ政府によるコックスバザールでの危機対応を支援する。人命と人々の生活の確保を第一に、との原則に基づき、このプロジェクトの第一段階として、食糧不足、病気の蔓延、災害に対する脆弱性やリスクを軽減するために、基礎的インフラを整備し、必要なサービスを提供する」と述べた。中尾総裁は今年5月初め、バングラデシュのアブル・マール・アブドゥル・ムヒト財務大臣との会談の中で、大臣から無償支援の要請を受けた。これを受け、ADBは、緊急支援手続きに基づき、異例の速さで無償支援の準備を整えた。

この1億ドルの無償資金とプロジェクトは、コックスバザールのウキア郡とテクナフ郡のキャンプで暮らす避難民を支援するもので、給水、衛生、災害リスク管理、エネルギーおよび道路に重点を置いている。

このプロジェクトを通し、キャンプ内の道を整備することで、食糧配給センター、倉庫、病院、学校へのアクセスを改善し、緊急事態にも対応できるようにする。また、コックスバザールからテクナフ、その他の主要ポイントへ続く道の整備も行われる。さらに、水の需要に対応するため、給水車、共同水浴び場の提供、水供給システム、ごみ処理施設、小さな浄水施設の設置も予定されている。太陽光発電によるミニ配電網に繋がった街灯も設置され、電力へのアクセスも、変電施設、配電線や変圧器によって強化される。

バングラデシュの南東地域は、サイクロンや雨季による降雨に加え、洪水、地滑り、落雷、火災、熱波など、さまざまな自然災害の影響を極めて受けやすい地域である。こうした起こりうる難題を考慮し、当プロジェクトでは、非常用道路を備えたサイクロン用シェルター、食糧配給センター、地滑り防護壁、暴風雨排水網を建設することで災害リスク管理を強化する。

ADBの支援は、国連主導のセクター間調整グループ(Inter Sector Coordination Group)が政府と調整のうえ策定したマルチ・セクター共同対応計画(Joint Response Plan)の枠組みの中で行われる。当プロジェクトは、国連機関、世界銀行、そして食糧、水、医療、シェルターなどの人道支援を提供しているドナーと調整して準備され、今後、実施される予定。

支援の第一段階は、約2年半で1億2,000万ドルの資金規模が予定されており、ADBのアジア開発基金(ADF)から1億ドルの無償資金、バングラデシュ政府から2,000万ドルが提供される。中尾総裁は、このバングラデシュへの無償資金供給に関して迅速に承認されたことについて、ADFのドナーに感謝の意を表した。

第二段階として予定されているADBによる1億ドルの追加無償資金の用途と時期については、第一段階の進捗を踏まえて決定される。

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