フィリピン・マニラ(2020年3月18日)-アジア開発銀行(ADB)は本日、新型コロナウイルス(COVID-19)対策に必要な開発途上加盟国(DMC)の差し迫ったニーズに対応するため、65億ドルの緊急支援パッケージを発表した。

浅川雅嗣ADB総裁は、「このパンデミックは今や世界的危機となり、国や地域、世界レベルで断固たる行動をとる必要がある」とした上で、「貧しく脆弱な域内の人々をより多く保護し、経済活動をできる限り速やかに回復させるために、我々は開発途上加盟国とともに、パンデミックに対抗するための積極的な対策を策定した。加盟国や関係機関との緊密な対話に基づき、各国の差し迫ったニーズに対応すべく、この65億ドルの緊急支援パッケージを準備した」と述べた。

浅川氏はさらに、「ADBは、今後の状況に応じて、この65億ドルのパッケージに加えて追加的な資金支援や政策アドバイスを行う用意がある」と強調した。

この緊急支援パッケージは、新型コロナウイルスの感染拡大による保健・医療や経済への影響に幅広く対応する約36億ドルの政府向け(ソブリン)支援や、零細企業および中小企業向け、あるいは国内および域内貿易、直接的影響を受ける企業等に対する16億ドルの民間向け(ノンソブリン)支援を含む。またADBは、既存のプロジェクトからの資金の再配分や予備的資金の使用可能性の精査などを通じて、約10億ドルの譲許的資金を確保する。併せて、技術協力や迅速に支給される無償資金として4,000万ドルを準備する。

開発途上加盟国に対して、この支援パッケージを可能な限り迅速かつ柔軟に提供するために、ADBは、その資金提供手段とビジネスプロセスを調整していく。ADBの理事会での承認を条件として、これには、厳しい財政的制約に直面している国々への緊急財政支援のより迅速な提供、政策支援融資に係る手続きの簡素化、そして柔軟で迅速な手続きに従った、加盟国に限定されない調達の実施などが含まれる。

パンデミックの対応に向け、各国及び関係機関には協調した対応と力強い連携が求められる。ADBは、新型コロナウイルス対策の効果的な実施に向け、国際通貨基金(IMF)、世界銀行、その他の地域開発銀行、世界保健機関(WHO)、国際協力機構(JICA)を含むその他主要な二国間開発金融機関、そしてアメリカ疾病予防管理センター(CDC)および民間セクターとの緊密な連携をさらに強化する。

今年2月7日に新型コロナウイルス対応支援を発表して以降、ADBは開発途上加盟国政府や民間企業の緊急のニーズに応えるため、すでに2億2,500万ドルを超える支援を提供している。ADBによるこれまでの新型コロナウイルス対応支援の概要は以下のとおり。

  • 2020年2月7日:中国やメコン川流域圏諸国における新型コロナウイルス感染の検出、防止、対応を促進するための2百万ドルの無償支援;

  • 同1月27日~2月17日:現在実施されている、メコン川流域圏諸国の健康安全保障プロジェクトへの融資から150万ドルを感染の検知や個人の防護に必要な機器の調達のために割り当て;

  • 同2月25日:必要とされる医薬品や個人用防護具の継続的な供給を支援するために、中国・武漢市に本社を置く医薬・医療品の卸売業者、ジョインタウン・ファーマスーティカル・グループに対する1億3千万人民元(1,860万ドル)の民間部門融資

  • 同2月26日:新型コロナウイルスの感染拡大に対処するADBの開発途上加盟国を支援するために2百万ドルの第二次無償支援枠を設置。今後、この無償資金枠にさらに資金が追加される;

  • 同3月12日:新型コロナウイルス対策に必要な医薬品等を製造・流通する企業を対象に、ADBのサプライチェーン金融プログラムを通じて、新たに2億ドルの支援を提供。他の金融機関とのパートナーシップを通じ、こうした企業が必要とする運転資金の提供を可能にした;

  • 同3月13日:フィリピン政府による緊急の医薬品購入や効果的なヘルスケア・サービスの提供などの新型コロナウイルスへの対応を支援する3百万ドルの無償資金;

  • 同3月13日:スリランカにおける感染症の監視や医薬・医療品の供給など、予防や対応の取り組みを支援するために、既存のヘルスシステム強化プロジェクトから6千万ドルの無償資金;

  • 同3月13日:タジキスタンにおける新型コロナウイルス感染の予防と緩和、医薬・医療品の供給を支援するため、同国で実施している母子保健統合医療プロジェクトの資金から、10万ドルを再配分;

  • 同3月18日:モンゴルにおいて、新型コロナウイルスの早期検知や緊急の看護、深刻な呼吸器疾患の治療に対応するため不可欠な医療機器を調達するために、同国の第5次保健セクター開発プロジェクトの資金から140万ドルを再配分。また、同国における感染症の予防と対策に関する能力強化のために22万5千ドルの小規模の技術支援の提供を承認。

上記の対策で提供されたADBの支援手段は、すべてのADBの開発途上加盟国が活用可能である。

新型コロナウイルスの感染拡大に関するADBによる最新の経済分析とそれに関連するデータは、2020年3月6日に「アジアの開発途上国・地域における新型コロナウイルス感染拡大の経済的影響(The Economic Impact of the COVID-19 Outbreak on Developing Asia)」として発表された。その報告では、国内需要の急激な減少、観光や業務出張の縮小、貿易や生産における国際的な連動性、供給網の混乱、そして健康への影響など、新型コロナウイルスの感染拡大が、多くの経路を通じてアジアの開発途上国、ひいてはその地域の各国経済や各セクターに及ぼす影響について見通しを示している。

ADBは2020年4月1日に公表予定のアジア経済見通し2020年版(Asian Development Outlook 2020)において、新型コロナウイルス感染拡大の経済的影響に関する改定した見通しを発表する。

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ADBは、極度の貧困の撲滅に努めるとともに、豊かでインクルーシブ、災害等のショックに強靭で持続可能なアジア・太平洋地域の実現に向け取り組んでいる。ADBは1966年に創立され、49の域内加盟国・地域を含め68の加盟国・地域によって構成されている。

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