モンゴル・ウランバートル(2019年10月14日)-アジア開発銀行(ADB)は、モンゴルの保健医療セクターに係る初のマルチトランシェ融資ファシリティ(MFF)を承認した。1億5,834万ドルに上るこのMFFは、ウランバートル市のゲル地区をはじめ、その他の県や地区など、厳しい環境下にあるいくつかの地区を対象として、質の高い保健医療サービスを提供し、モンゴル政府による、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)の実現に向けた取り組みを支援する。
「過去30年間にわたるモンゴルの急速な都市化の進展により、ウランバートル市及び県センターにおける社会・保健医療サービスの負担は増大した。これは、保健医療提供体制が脆弱であることと、多くの人にとってまかなうことが難しいほど医療費の負担が重くなっていることを意味する」とした上で、「この融資プログラムは、モンゴルの保健医療セクターの発展に向けたADBによる長期的なコミットメントを示すものであり、すべてのモンゴル人が、質の高い保健医療サービスを、必要な時に過度な経済的負担を強いられることなく利用できるよう支援するものである」とADB上級社会セクター・スペシャリストのリカルド・エルビング氏は述べた。
モンゴルの保健医療セクターが直面している課題として、医療人材や資金、施設・設備の不足等が挙げられ、人々が質の高い保健医療サービスを利用する際の妨げとなっている。また、同国の自己負担費用は高く、家計における総医療費の約41%を占めており、また、高価で不適切な医薬品の使用が原因で、その3分の1が薬代に費やされている。その一方で、モンゴルの保健医療向けの公的支出は対 GDP比 で2.4%となっており、世界保健機関(WHO)が定める5%の水準を大きく下回る。
ADBによる融資プログラムは、都市貧困層を対象とした3つのプロジェクトから成り、2029年まで実施される予定。このプロジェクトでは、ウランバートル市内に10か所の家庭保健医療センターを設立し、より幅広い保健医療サービスを提供すると共に、一次医療の強化のための県レベルの保健医療センターを6か所設立する。また、一次医療および二次医療を統合した医療サービスモデルを、少なくとも5つの地区、10の県で実施し、保健医療サービスの維持管理と提供のために官民連携スキームを採用する。
同プログラムを通じて、ウランバートル市のチンゲルテイ地区に、一つのモデルとなる、ジェンダーに配慮した地区病院が設立され、カーンウル地区病院については、外科、産科、婦人科等の分野で院内及び外来サービスの連携を図ることにより強化される。ホブド県及びウブス県の地区病院では、外来診療に対応するための部署が新設される。更に、ADBの信託基金の一つである二国間クレジット制度(JCM)日本基金による支援を得て、カーンウル地区病院や対象となる家庭保健医療センターに、エネルギー効率換気システムや地中熱ヒートポンプシステム、太陽光発電、スマートグリーンデザイン等先進的な低炭素技術が導入される。
同プログラムは、保健医療セクターの中長期的なニーズに沿って、財源のより効果的な活用を推進するための保健財政改革を支援する。そして、保健省や主要なステークホルダーの組織能力強化に係る支援を通じて、調達や財政管理に伴うリスクの軽減を図る。
ADBは1993年以来、モンゴルの保健医療セクターの主要な開発パートナーとして同国を支援しており、これまでに5件のプロジェクトに対して総額8,490万ドルの融資を、7件のプロジェクトに対して総額3,700万ドルのグラントを、そして15件の技術支援プロジェクトに対して総額1,065万ドルを供与している。ADBはまた、2016年の保健法や、社会保険、医薬品、医療機器、医療ケア・サービスに関連する法律など、モンゴルの保健医療セクターに係る政策や法律の起草や制定を支援している。
ADBは極度の貧困を撲滅する取組みを続けながら、インクルーシブ(包摂的)な社会経済発展、環境に調和した持続可能な成長及び、地域協力・統合の促進を通じて、アジア・太平洋地域の発展に貢献しています。 ADBは1966年に創立され、現在の加盟国・地域はアジア・太平洋地域内の49カ国・地域を含めた、68カ国です。ADBは「貧困のないアジア・太平洋地域」の実現に向け、2018年度の融資及びグラントを通じたコミットメント総額は約216 億ドルに達しました。