フィリピン・マニラ(2022年1月26日)—アジア開発銀行(ADB)は、ブロックチェーン技術を使い、アジア・太平洋地域における証券のクロスボーダー取引の効率性や安全性の向上を図るプロジェクトを立ち上げた。
ADBは、ブロックチェーン分野の有力企業との協力により、東南アジア諸国連合(ASEAN)と日本、中国、韓国で構成される、ASEAN+3の中央銀行と証券決済機関をブロックチェーンネットワーク内において直接接続する方法の開発に取り組む。
関係機関がブロックチェーンネットワーク内で直接つながることで、合意された日程で証券取引が実行されないといった可能性に伴う取引コストや決済リスクを軽減することができる。ASEAN+3地域におけるクロスボーダーの証券取引は、現在、カストディアン(投資家に代わって、株式や債券などの有価証券の保管・管理を行う金融機関)やコルレス銀行のグローバルネットワークを介して処理されており、米国または欧州のグローバルセンターを経由している。その結果、時差や同一タイムゾーン内の市場取引時間の相違などの理由から、ASEAN+3の域内取引の決済に少なくとも2日を要している。
このプロジェクトは、2022年3月末までに完了を予定している設計フェーズと、2022年第2四半期に予定されている試作開発フェーズの二段階で進められる。この成果については、ASEAN+3の各国政府関係者および域内の中央銀行や証券決済システムの運営主体で構成されるアジア債券市場育成イニシアティブのクロスボーダー決済インフラフォーラムのメンバーで協議される。
ADBは、コンセンシス、富士通、R3、ソラミツと共同でこのプロジェクトを進めており、システムの相互運用性や域内の中央銀行デジタル通貨発行の実現可能性についても検証する。本プロジェクトは、公共セクターと民間セクターのパートナーがデジタルソリューションで協力するためのプラットフォームである、ADBのデジタルイノベーション・サンドボックス・プログラムの支援を受けている。
ADBは、極度の貧困の撲滅に努めるとともに、豊かでインクルーシブ、気候変動や災害等のショックに強靭で持続可能なアジア・太平洋地域の実現に向け取り組んでいる。ADBは1966年に創立され、49の域内加盟国・地域を含め68の加盟国・地域によって構成されている。