【横浜、2017年5月6日】アジア開発銀行(ADB)は、アジア太平洋地域のプロジェクト形成と実施における高度技術(high-level technology)の活用を促進するため、信託基金を設立することを発表した。日本政府が基金の最初のドナーになる。
高度技術信託基金は、ADBが融資する政府向けおよび、民間向けプロジェクトの発掘から実施に至るまで、プロジェクト・サイクル全体を通して高度な技術の活用を促進するため、技術協力や投資事業、技術専門家の雇用に無償資金を提供する。本基金設立により高度技術がADBの開発途上加盟国にて幅広く普及し開発問題解決に貢献することが期待される。
麻生太郎副首相・ADB総務は、横浜で開催されているADB第50回年次総会の開会式で演説を行い、「インフラの質の向上は、持続可能な経済成長を実現する上で重要なことである。高度な技術をプロジェクトに取り入れようというADBの取り組みを日本は歓迎し、支援する」としたうえで、「日本はアジアにおいて、ADBと緊密に協力しつつ、質の高いインフラを促進してきた。ADBとの連携をさらに強化するため、日本はこの新しい高度技術信託基金に対して、今後2年間で4,000万ドルを拠出する予定である」と語った。
高度技術信託基金は、7月に始動する予定である。本基金は、支援対象国にとって新しい技術、またスケールアップが望ましい技術の導入を幅広く支援することにより、プロジェクトの効果を向上させることを目的としている他、事業の運営管理を通じて、支援を受ける国自身の技術力が高まることも期待される。本基金は、フィージビリティ・スタディ、詳細設計、技術移転、政策アドバイス、パイロット事業等に活用できる。
ADB総裁の中尾武彦氏は、「資金や経験不足により、ADBの多くの開発途上加盟国が高度技術の導入において困難に直面している」と指摘し、「ADBは、このニーズに対応する高度技術信託基金設立に向けての日本政府の支援に感謝している。この取り組みを通じて、ADBの事業においてより高度でクリーンな(環境負荷の低い)技術を推進する素地が築かれるであろう」と述べた。
ADBは今後、気候変動、スマートグリッド、エネルギー大量蓄電技術、省エネ技術、再生可能エネルギー、高速道路料金システム、高度道路交通システム(ITS)、大量輸送交通システム、スマートシティ、 廃棄物発電技術、海水淡水化技術、およびリモートセンシング技術などの領域における高度な技術の導入を促進する予定である。本基金設立に併せ、ADB理事会が4月12日に承認した新たな調達制度においては、従来に比べより質を重視することが謳われており、ADB事業における高度技術の活用が強化される見込である。
マニラに本拠を置くアジア開発銀行(ADB、加盟国・地域数67、うち域内48)は、インクルーシブな経済成長、環境に調和した持続可能な成長、および地域統合の促進を通じて、アジア太平洋地域の貧困削減に取り組んでいる。ADBは、1966年に創設され、地域の開発パートナーとして50周年を迎えた。2016年のADBの年間支援額は、協調融資額140億ドルを含め、317億ドルであった。