英国、グラスゴー(2021年11月3日)—アジア開発銀行(ADB)の浅川雅嗣総裁、インドネシアのスリ・ムルヤニ・インドラワティ財務大臣、フィリピンのカルロス・G・ドミンゲス財務大臣は、本日、国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)において、インドネシアとフィリピンにエネルギー・トランジション・メカニズム(ETM)を創設するための新たなパートナーシップの発足を発表した。
こうしたETM東南アジア・パートナーシップは、アジア・太平洋地域では初めてのものであり、東南アジアにおけるクリーンエネルギーへの移行の促進を支援することを目的としている。
同パートナーシップは、デンマーク、英国、米国の閣僚級の政府高官、そして世界的な主要金融機関や慈善団体によって支持された。
神田眞人財務官は、同パートナーシップの発足に際してビデオ・メッセージを送り、日本の財務省が、このメカニズムの最初のシードマネーとして、ETMに対して2,500万ドルの無償資金を提供すると発表した。
浅川氏は、「ETMは、アジア・太平洋地域における気候変動との闘いにおいて変革を引き起こすことができる」とした上で、「インドネシアとフィリピンは、同地域のエネルギーミックスから石炭を排除し、世界の温室効果ガス排出量の削減に大きく貢献するとともに、低炭素成長の道筋へと経済を移行させる過程において、先駆的な役割を果たす可能性を秘めている」と述べた。
インドラワティ氏は、「ETMは、インドネシアのエネルギーインフラの質を改善し、公平かつ手頃な方法で、温室効果ガス排出量の実質ゼロの実現に向けて、クリーンエネルギーへの移行を加速させる野心的な計画である」と述べた。
ドミンゲス氏は、「フィリピンのクリーンエネルギーへの移行は、雇用を創出し、国家の成長を促し、世界の温室効果ガス排出量の削減に貢献する」とした上で、「ETMには、石炭火力発電所の閉鎖を平均で少なくとも10~15年早める可能性がある」と述べた。
インドネシアおよびフィリピンとのパートナーシップの下、ADBは、各パイロット実施国にとって最適なビジネスモデルに基づく綿密なフィージビリティ・スタディを共同で行い、気候変動に焦点を当てた世界的な基金との緊密な連携により、ドナー国や慈善団体から譲許的資金を集め、脱炭素化への決定的な転換を促すために多額の商業資本を活用することで、政府関係者と協力してETMのパイロット事業を実施する。
アジアのエネルギー需要は、2030年までに倍増することが見込まれており、東南アジアは新規の石炭火力発電所の建設を継続している地域の一つである。インドネシアの電力の約67%、フィリピンの発電容量の57%が石炭によるものである。インドネシアは、2030年までに排出量を29%削減し、2060年までにネットゼロを達成することを約束している。フィリピン政府は最近、新規の石炭火力発電所の建設を一時停止する計画を発表した。
ETMは、既存の石炭火力発電所を前倒しで稼働停止し、クリーンな発電施設に置き換えることを目指す、革新的なブレンドファイナンス・アプローチである。このメカニズムには、2つの数十億ドル規模の基金が含まれる。1つは石炭火力発電所の時期を早めた稼働停止や転用に充てるもので、もう1つは発電や蓄電、送配電系統の改修といった新たなクリーンエネルギーへの投資に充てるものである。国際金融機関、民間機関投資家、慈善団体、長期投資家がETMに資本提供することが想定されている。
ADBは、各国政府による、プログラムのガバナンス改善や炭素削減、また、公正な移行の目標の実現を可能にする政策やビジネス環境を整備する取り組みを支援する。ETMは、2年から3年にわたるパイロット事業の実施フェーズにおいて、インドネシアとフィリピンの5~7カ所の石炭火力発電所の稼働停止を加速させるために必要な資金を調達するとともに、これらの国において代替的なクリーンエネルギーのオプションへの投資を促進する。
ETMの設計期間においては、ADBとそのパートナー国が、クリーンエネルギーへの公正な移行を優先するために、非政府組織や市民社会団体と諮問グループを結成する。活動の影響を受ける労働者とコミュニティには、技能再教育と生活向上のために技術支援を行う。
およそ30ギガワットに相当する石炭火力発電所出力の50%を今後10~15年の間に稼働停止させることを目指して、インドネシア、フィリピン、そして場合によりベトナムを含めてETMが本格的に実施されれば、年間2億トンの二酸化炭素排出を削減することが可能になる。これは6,100万台の自動車を道路から無くすことに相当する。ETMは、世界最大の炭素削減プログラムになる可能性を秘めている。
事前のフィージビリティ・スタディが完了し、現在、ETMの財務構造を最終決定し、パイロットプログラムに含める石炭火力発電所の候補を特定し、公正な移行に関する活動を設計するための本格的なフィージビリティ・スタディが進行中である。
ADBは、極度の貧困の撲滅に努めるとともに、豊かでインクルーシブ、気候変動や災害等のショックに強靭で持続可能なアジア・太平洋地域の実現に向け取り組んでいる。ADBは1966年に創立され、49の域内加盟国・地域を含め68の加盟国・地域によって構成されている。
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