フィリピン・マニラ(2020年11月24日) - アジア開発銀行(ADB)とインドラマ・ベンチャーズ・パブリック・カンパニー・リミテッド(Indorama Ventures Public Company Limited: IVL)は、インド、インドネシア、フィリピン、タイにおけるIVLの廃プラスチック再生処理施設の能力を高めることにより、プラスチックごみによる環境への負荷を軽減し、循環経済を促進することを目的として、1億ドルの融資パッケージに調印した。
これらの施設では、飲料ボトルの原料として広く使用されているポリエチレン・テレフタレート(PET)をリサイクルする。この支援パッケージは、ADBからの5,000万ドルの融資と、国際協力機構(JICA)が出資し、ADBが管理するアジアインフラパートナーシップ信託基金(LEAP)からの5,000万ドルの融資で構成される。さらに、国際金融公社(IFC)およびドイツ投資開発会社(DEG)から、それぞれ1億5,000万ドルと5,000万ドルの融資が提供される。
アショック・ラバサADB民間部門業務・官民パートナーシップ担当副総裁は、「PETのようなプラスチック資源のリサイクルは、より健全な海洋環境の実現に必須であり、この取り組みは、PETの製造およびリサイクルの世界的リーダーであるIVLとのパートナーシップにより、そうした目的の達成を支援するものである。この重要な取り組みにおいて、IFCやDEGとも緊密に協力できることを喜ばしく思う」とした上で、「リサイクルされたプラスチック包装の需要が世界的に高まっている。ADBは、海洋に流出されることになりかねないプラスチックごみの回収と再生処理を進めることによって、IVLがこうした需要に対応することを支援する」と述べた。
インドラマ・ベンチャーズのヤショバルダン・ロヒア持続可能性担当責任者は、「ADBとこのブルーローンに合意できたことを光栄に思う」とした上で、「IVLは、ごみを海洋環境から取り除くために必要なリサイクルのインフラを構築している。使用済みPETボトルを新しいボトルの資源として使用することにより、ごみに新たな価値を与える。またこれにより、ごみ回収システムの改良を進め、ごみの減量化やよりきれいな海洋の実現に貢献する」と述べた。
プラスチックごみの不適正な管理は海洋生態系に深刻な影響を与える。全海洋プラスチックごみの80%以上はアジアからの放出と推定されているが、世界的にはPETのリサイクル率はまだ半分程度である。循環経済においては、プラスチックごみを埋め立て地や海洋から除去するために、製品や原材料が再設計され、回収され、再利用される。本プロジェクトの下で建設される施設は、2022年までに完全に稼働する見込みであり、新たに年間50億本近くの使用済みPETボトルの再利用を可能とする。
ADBの融資は、ADB初の第三者認証機関から認証を受けたノンソブリン・ブルーローンであり、ブルー自然資本金融ファシリティ(Blue Natural Capital Financing Facility)のブルーボンド・ガイドラインにしたがって、DNV GLから認証を受けている。この融資は、ADBの海洋保全と持続可能なブルーエコノミーのための行動計画に沿ったものであり、ADBは同計画に基づき、2019年から2024年の間に、投融資と技術支援を50億ドルまで拡大する。
IVLは、タイで上場しているグローバル企業であり、使用済みPETやポリエステル廃棄物を原材料として使用する技術とそのプロセス開発に取り組んでいる。また、100%リサイクル可能なPETの世界最大の製造企業として、IVLは、自然環境に廃棄されるごみの量を減らすために、循環経済のあらゆる側面を支援している。IVLは、ダウジョーンズ・サステナビリティ・インデックスに選定されており、5大陸の33カ国で125カ所の製造施設を運用している。
LEAPは、民間セクター投資を支援するためにADBと国際協力機構(JICA)によって設置された協調融資ツールであり、支援対象分野は、エネルギーと発電、水、都市インフラ、運輸・交通、情報通信技術、保健・医療など多岐にわたる。
ADBは、極度の貧困の撲滅に努めるとともに、豊かでインクルーシブ、気候変動や災害等のショックに強靭で持続可能なアジア・太平洋地域の実現に向け取り組んでいる。ADBは1966年に創立され、49の域内加盟国・地域を含め68の加盟国・地域によって構成されている。