フィリピン、マニラ(2019年11月19日)アジア開発銀行(ADB)は、本日、市場ベースの融資のみを受ける開発途上加盟国を対象として多様な融資条件の導入を承認した。この新たな融資条件体系は、2021年1月1日より適用される。
ADBから資金提供を受ける受益国は、1人当たりの国民所得水準や信用力に応じて、3つのグループに分類されている。グループAは、アジア開発基金(ADF)によるグラントや譲許的融資を受けることができ、グループBは、譲許的融資および市場ベースによる融資を受けることができる。そして、グループCは、市場ベースの融資のみの対象となる。
グループA国とグループB国に適用される融資条件は、グラント、譲許的融資、そして市場ベース融資の組み合わせによって、既に多様なものとなっている。一方で、グループC国については、国によって1人当たり所得の水準に幅広い格差があるにも関わらず、同一の融資条件が適用されている。
新たな融資条件の枠組みにおいて、グループC国は、国民総所得水準によって、低位中所得国、高位中所得国、並びに高所得国といったサブ・グループにさらに分類される。より所得の高いサブ・グループ国は、長期の融資に対して、より高い期間プレミアムを払うことになる。例えば、1人当たり国民所得が6,976ドル以上12,375ドル以下(2018年価格)の高位中所得国は、融資期間に応じて、追加的に30ベーシス・ポイントまでの期間プレミアムを支払う。
新たな融資条件の枠組みでは、小島嶼開発途上国(SIDS)やグループBからグループCに移行する国といった、より脆弱性の高い国に対して、より有利な条件が提供される。
新たな融資体系から生み出される追加的な収益は、政策提言や組織・制度面での能力構築、開発途上加盟国でのナレッジ共有を支援する既存の技術協力特別基金に充当される。この融資条件の枠組みは、ADBの準備金の蓄積に寄与し、長期的な融資能力の拡大に繋がる。
中尾武彦ADB総裁は、「市場ベース融資のみが供与対象となる借入国に適用される、一律化された現在の融資条件体系は、各借入国の所得水準や国内資金調達能力、また資本市場へのアクセスなどに係る高度に多様化された状況を反映していない」とした上で、「新たな融資体系は、開発段階が進んだ借入国との関わりを維持するのに役立つだけでなく、他の国際開発金融機関との関係で公平性や競争力を維持するとともに、ADBの業務の長期的な持続性に寄与する」と述べた。
融資条件に係るこの改革は、過去50年にわたり変化してきた地域の状況を反映している。アジア・太平洋地域の状況は、ADBが設立された1966年とは大きく異なっている。ほとんどのADBの借入国は今や中所得国となり、比較的高い所得と強固な財政能力を備えているものの、依然として貧困対策や組織・制度の強化、気候変動や他の外的要因へ対処するためにADBの支援を必要としている。
2018年7月に承認されたADBの「ストラテジー2030」では、差別化したアプローチを様々な借入国別グループに適用するという方針を示している。2017年の年初に実施したADF融資業務と通常資本財源のバランスシートとの統合により、ADBの借入国に対する融資は大幅に増加した。融資条件の多様化は、そのバランスシートの統合に端を発する、包括的な組織・制度改革の一環である。ADBはまた、調達枠組みの改革やデジタル変革、人材管理の合理化などの改革に取り組んでいる。
ADBは、極度の貧困の撲滅に努めるとともに、豊かでインクルーシブ、災害等のショックに強靭で持続可能なアジア・太平洋地域の実現に向け取り組んでいる。ADBが2018年に新たに契約署名した融資およびグラントの総額は216億ドルにのぼる。ADBは1966年に創立され、49の域内加盟国・地域を含め68の加盟国・地域によって構成されている。