フィリピン、マニラ(2021年9月10日)—アジア開発銀行(ADB)は本日、アジア・太平洋地域の海洋関連プロジェクトへの融資を目的とした、オーストラリア(豪)ドルおよびニュージーランド(NZ)ドル建てのデュアル・トランシェ・ブルー・ボンドを初めて発行した。
2億800万豪ドル(約1億5100万米ドル)の15年債は、第一生命保険株式会社が購入し、シティグループ・グローバル・マーケッツ・リミテッドがそのアレンジを担当した。2億1,700万NZドル(約1億5100万米ドル)の10年債は、明治安田生命保険相互会社が購入し、クレディ・アグリコル・CIBがそのアレンジを担当した。この債券は、ADBの拡大されたグリーン&ブルー・ボンド・フレームワークの下で発行された。
イングリッド・ヴァン・ウィーADB財務・リスク管理担当副総裁は、「ADBのグリーン&ブルー・ボンド・フレームワークの下で初めて発行された、この豪ドル建て15年債並びにNZドル建て10年債のブルー・ボンドは、持続可能な海洋ファイナンスに向けた新たな節目となる。また、本債券の償還期間は、このセクターにおける資金ニーズと私たちの長期的な支援を反映している」とした上で、「このフレームワークにより、市場が活用できるブルー・ファイナンスの新たな基準を設定した」と述べた。
本債券は、2019年に発表されたADBの海洋保全と持続可能なブルー・エコノミーのための行動計画に沿ったもので、2024年までに少なくとも50億ドルの投融資と技術協力を提供することにより、アジア・太平洋地域における持続可能な投資を促すことを目的としている。
バンバン・スサントノADB知識管理・持続的開発担当副総裁は、「海洋保全と持続可能なブルー・エコノミーのための行動計画は、開発途上加盟国における海洋保全への投資を促すとともに、持続可能な開発目標(SDGs)の目標14の達成を確実なものとし、地域の安全と繁栄に貢献するための支援拡大に向けたADBの戦略の中核を占める」と述べた。SDGsの目標14である「海の豊かさを守ろう」は、国連が2015年に設定した17のSDGsの一つである。
海洋保全のために必要な資金は年々不足しており、この問題を解決するためには、これまでの小規模な取引から変革をもたらす市場取引への飛躍が求められている。ブルー・ボンドのような革新的な金融商品は、顧客基盤の多様化と拡大に寄与し、海洋保全のための投資に向けることができる資本ストックを増加させる。
ADBの拡大されたグリーン&ブルー・ボンド・フレームワークは、グリーン・ボンド投資フレームワークの主要な環境評価機関であるシスロ(CICERO)のシェーズ・オブ・グリーンによるセカンドパーティ・オピニオンを得た。これにより、ADBの債券が気候変動の緩和や海洋環境の保全に貢献していることについて、投資家に対して信頼性を提供する。
この債券プログラムを通じて融資を受けることのできる適格なプロジェクト例として、プラスチックなどの廃棄物の海洋流出を防ぎ、温室効果ガス排出量の削減に貢献する、モルジブの廃棄物発電プロジェクト(Greater Malé Waste-to-Energy Project)がある。また、中国におけるグリーン農業を支援するプロジェクト(Anhui Huangshan Xin’an River Ecological Protection and Green Development Project)では、農薬や肥料の使用を管理することで、「陸域の発生源から海まで」の海洋環境への非点源汚染の削減に貢献する。
ADBのブルー・ボンドは、再現可能性や拡張性が確保されており、アジア・太平洋地域の海洋経済の発展を目的としている。その収益は、生態系の回復、天然資源管理、持続可能な漁業・養殖業、海岸・沿岸域における汚染の削減、循環型経済、海洋再生可能エネルギー、環境に優しい港づくりや海洋輸送を通じて、海洋保全を増進するためのプロジェクトに充てられる。同時に、これらの投資は、将来に向けた持続可能な経済成長と雇用の創出を後押しする。
開発途上加盟国は、ADBのアプローチを採用し、ソブリン債としてブルー・ボンドを発行することにより、海洋資源の保護や急務である経済の活性化を促すのに不可欠な海洋保全プロジェクトのための資金を獲得できる。
ADB は、極度の貧困の撲滅に努めるとともに、豊かでインクルーシブ、気候変動や災害等のショックに強靭で持続可能なアジア・太平洋地域の実現に向け取り組んでいる。ADBは1966年に創立され、49の域内加盟国・地域を含め68の加盟国・地域によって構成されている。