fbpx ADBとJICA、アジア太平洋地域におけるユニバーサル・ヘルス・カバレッジ達成の重要性について議論 | Asian Development Bank

ADBとJICA、アジア太平洋地域におけるユニバーサル・ヘルス・カバレッジ達成の重要性について議論

ニュースリリース | 2019年2月13日

東京(2019年2月13日)-中尾武彦アジア開発銀行(ADB)総裁と北岡伸一国際協力機構(JICA)理事長は、東京で開催中のアジア太平洋地域におけるユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)[*]の達成に向けたADBとJICA主催による国際会議に出席し、開会の辞を述べた。UHCの実現は、持続可能な開発目標(SDGs)やADBの長期戦略「ストラテジー2030」で定められている目標の達成に不可欠である。

UHCは今年6月に開催されるG20大阪サミットで重要課題の一つとして取り上げられる予定で、本会議はG20サミットを見据えて開催されたものだ。ADBとJICAはインフラや気候変動、教育、ジェンダーといった開発課題と同様に、保健・医療の分野においても、協力して取り組んでいる。両機関はG20サミットでUHCに向けた具体的な成果が示されるよう、ともにその準備を進めていく。

この会議には、各国の保健担当大臣や地域の公共保健機関の責任者など25か国から代表者が集まり、UHC推進にあたり地球規模の、あるいは地域的な経験を共有し、保健医療に関する資金不足、非感染性疾患への対応や高齢者介護などの保健・医療の優先的課題、そして感染症の世界的流行に対する備えに向けた協力について議論される。

UHCは、あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を推進するというSDGsの3番目の目標の柱である。世界保健機関(WHO)はUHCを、すべての人々が保健医療サービスを、必要なときに、適切な水準で、負担可能な費用で享受することができる状態を確保するものとして定義している。

参議院議員で国際保健医療戦略特命委員会委員長も務める武見敬三氏は、基調講演の中で保健システム改革の重要性を強調した。また、個々の疾病に対する従来の縦割り診療について触れ、高齢化社会に伴う特殊なニーズや非感染性疾患の治療に対する需要の高まりを強調し、真のUHCを達成するためには、個々の疾病ではなく患者全体を診る横の繋がりを大切にしたアプローチが必要とされていると述べた。

北岡理事長は、開会の挨拶の中で「アジア大洋州地域における感染症や高齢化といった健康課題に対応し、同地域のUHCを達成するためにも、JICAとADBの関係強化が重要である」と述べ、成功だけでなく失敗から得られた経験や教訓を共有することが我々の義務である点を強調した。

中尾総裁は開会にあたり、「ADBの長期戦略『ストラテジー2030』の下、ADBはアジア太平洋地域で一層高まる保健・医療サービスへのニーズに応え、UHCを重視しつつ保健・医療分野の業務を拡大していく」と述べた。

中尾総裁は、UHCを達成し、維持するために重要な4つの課題について語った。第一に、財政的に持続可能な保健・医療制度である。保健・医療に対する資金の確保は、資金需要を拡大させる寿命の延びと高齢化によって、さらに厳しいものとなる。保健・医療における技術の発展はまた、より高性能の医療機器が使われることに伴って、患者一人当たりの医療費増加につながる。

開発途上国は改善が必要とされる分野などで、先進国の経験を参考にすることができる。財政的に持続可能な保健・医療制度には、次のような要素が備わっていなくてはならない。(i)長期にわたる財政的負担の引き受け手の明確化、(ii)効率性をチェックする保険運営主体の適切な機能、(iii)広範なデータを活用した薬剤や治療法の効果をモニターする制度、(iv)患者やサービスの提供者にとって、効率の改善や費用の節約について動機づけを与える枠組み。

第二に非感染性疾患についての懸念拡大がある。寿命が延びると非感染性疾患を発症する患者が増える。効果的かつ効率的な治療や管理に加えて地域密着型の保健医療や健康的な生活習慣の奨励など(病気の)予防が重要である。

第三の課題として健康安全保障があげられる。UHCの達成には、重症急性呼吸器症候群(SARS)のような感染症の流行を発生の初期段階で発見し拡大を防止するため、疾病の監視システムと研究施設の強化が必要である。

第四に、患者の各状況に応じて、保健・医療費の手当てや、よりよい治療の提供を持続可能なものとするためには、保健・医療制度において、インターネット、デジタル化、ビッグデータ、人工知能といった革新的な技術の導入が課題であり、またこれらを活用する好機でもある。

ADBが2018年に保健・医療セクターのプロジェクトに対して、合意署名した融資やグラントの供与額(コミットメント額)は13件で総額5億1,600万ドルと2010年以降で最多となった。支援対象のプロジェクトには、パプアニューギニアにおける州レベルでの保健・医療サービスの改善、タジキスタンでの母子保健サービスの統合、ブータン、ラオス、モンゴル、スリランカでの保健・医療制度の強化がある。またインドネシアでは、より多くの人が経済的負担の少ない形で質の高い母性健康管理を受けられるよう施設拡充のために民間病院への投資を行うといった取り組みをしている。 

さらにADBは、各国の保健・医療戦略の準備や国民皆保険制度の構築のために技術支援を提供している。また、保健・医療分野におけるデジタルデータの活用促進に向けた会議を共催している。

ADBは、極度の貧困の根絶に努めるとともに、豊かでインクルーシブ、災害等のショックに強靭で持続可能なアジア太平洋地域の実現に向け取り組んでいる。2018年に新たに合意・署名に至った融資とグラントは総額215億ドルにのぼる。ADBは1966年に創立され、48の域内加盟国・地域を含め67の加盟国・地域によって構成されている。

[*] ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(Universal Health Coverage : UHC)とは「すべての人が適切な予防、治療、リハビリ等の保健医療サービスを、支払い可能な費用で受けられること」を意味する。