【横浜、2017年5月4日】アジア開発銀行(ADB)は、アジア太平洋地域における官民連携(PPP)のビジネス環境の改善と監視に向け、新たな取り組みを2つ公表した。PPPの投融資可能性と実施の強化を目的とするこれらの取り組みは、横浜で開催されている第50回ADB年次総会にて発表された。
本日発表された第1の取組み、「インフラ・レフリー・プログラム」(Infrastructure Referee Program: IRP)は、PPP市場に類のないプログラムである。ADBは、本プログラムの下、PPPプロジェクトの期間を通し、官民両セクター間で起こりうる対立の解消を支援するため、適任のコンサルタントによる独立した第三者の助言を提供する。
ADB官民連携部の加賀隆一部長は、「リスク配分に関する官民両セクター間の対立は、入札、交渉、建設、運営の間に起こる可能性があり、プロジェクトの遅延、コストの増加、重要なサービスの引き渡し失敗のきっかけにもなりうる」と述べ、「ADBは、IRPを通じて官民両セクターのステークホルダー間の対立を解消し、アジア太平洋地域におけるPPPプロジェクトを無事に実現・実施することを支援する」とした。
第2の取り組み、『PPPモニター』(PPP Monitor)はADBの新たな出版物で、ADB加盟国におけるPPPのビジネス環境の発展を追い、PPPのための健全な環境の構築に関する洞察を公共セクター向けに提供する内容となる。
加賀氏は、「PPPに対して官民両セクターの関心が高いことは経験から認識しているが、PPP環境に関する根本的な情報が不足していることが多い」としたうえで、「『PPPモニター』は、健全な政策の策定においてだけでなく、民間セクターが十分な情報に基づいたビジネス判断を下すのにも、極めて重要となる国別情報を提供する」と語った。
『PPPモニター』では、各国の規制枠組み、プロジェクトを実施する制度的能力、市場の成熟度、そして金融機関に関する情報を辿っている。また、対象国ごとにセクター固有の情報を掲載している。重要な発見としては、成熟した金融市場の存在が、対応するPPP市場の大きさと密接に関連していることが挙げられる。調査が行われた全ての国において、最も成熟したPPP枠組みは、1990年代からアジアにおける民間企業の参加シェアが最大であるエネルギーセクターに見られる。
『PPPモニター』の初版には、バングラデシュ、中華人民共和国、インドネシア、カザフスタン、パプアニューギニア、フィリピン、タイ、およびベトナムに関する情報が含まれる。将来は、より多くの国とより広範な要因が網羅される予定である。
マニラに本拠を置くアジア開発銀行(ADB、加盟国・地域数67、うち域内48)は、インクルーシブな経済成長、環境に調和した持続可能な成長、および地域統合の促進を通じて、アジア太平洋地域の貧困削減に取り組んでいる。ADBは、1966年に創設され、地域の開発パートナーとして50周年を迎えた。2016年のADBの年間支援額は、協調融資額140億ドルを含め、317億ドルであった。