フィリピン、マニラ(2021年7月20日)—アジア開発銀行(ADB)は、アジア開発途上国の今年の経済成長率予測を7.2%と、4月時点の見通しである7.3%から下方修正した。これは、新型コロナウイルスの感染再拡大により一部の国で回復が遅れているためである。2022年の経済成長率は4月時点の5.3%の見通しから、5.4%に上方修正された。      

香港、韓国、シンガポール、台湾といった新興工業経済地域を除いたアジア開発途上国の2021年の経済成長率は7.5%、2022年は5.7%と予測され、前回予測の7.7%、5.6%からそれぞれ修正された。ADBの主要経済報告書「アジア経済見通し2021年版(Asian Development Outlook 2021: ADO 2021)」の補足版では、新型コロナウイルスのパンデミック下における域内経済およびインフレ率の最新予測が示されている。

澤田康幸ADBチーフエコノミストは、「アジア・太平洋地域は、新型コロナウイルスのパンデミックからの回復過程にあるが、感染の再拡大、変異ウイルス、およびワクチン接種の不均衡などにより、その道のりは依然として不透明である」とした上で、「感染の封じ込めやワクチン接種対策に加えて、例えば貿易や製造、観光といった経済活動の段階的かつ戦略的な再生が、グリーンでインクルーシブな、そして強靭な回復を確かなものとする鍵となる」と述べた。

いまだ多くの国・地域で新型コロナウイルスの感染拡大が続いているため、今後の見通しについてパンデミックが最大のリスクであることに変わりがない。この地域における1日あたりの新規陽性者数は、5月中旬に約43万4千人とピークに達した。6月末には南アジア、東南アジア、太平洋地域を中心に10万9千人まで減少した。一方、この地域におけるワクチン接種のペースは加速しており、6月末までに100人当たり41.6回の接種が行われている。これは世界平均の39.2回を上回っているものの、米国の97.6回、EUの81.8回を下回っている。

2021年の東アジアの経済成長率は、香港、韓国、シンガポール、台湾といった新興工業経済地域が予想以上に力強い回復を見せたことを受け、7.4%とした4月の見通しから7.5%に上方修正されている。この地域の2022年の予測は、5.1%のままである。中国の成長率見通しは、工業、輸出、サービス業が堅調に推移する中、今年が8.1%、2022年は5.5%と同様に据え置かれた。

今年の中央アジアの経済成長率見通しは3.6%と予測されており、3.4%とした4月の見通しから上方修正された。これは主に、アルメニア、ジョージア、カザフスタン(同地域最大の経済国)の見通しが改善したことによるものである。中央アジアの2022年の予測は、4.0%にとどまる見通しである。

南アジア、東南アジア、太平洋地域に関する2021年の予測は、感染の再拡大に伴う封じ込めのための対策や制限措置により、経済活動に影響が見られることから、引き下げられている。南アジアの2021年度の経済成長率の予測は、9.5%から8.9%に下方修正されている。インドの見通しは1.0ポイント低下の10.0%と下方修正されている。東南アジアの2021年の予測は、4.4%から4.0%に修正され、太平洋諸国は1.4%から0.3%に引き下げられた。しかし、2022年の成長率予測は、それぞれ7.0%、5.2%、4.0%に上方修正されている。

アジア・太平洋地域の今年のインフレ率見通しは、原油や商品価格の上昇を反映して、2.3%とした4月の見通しからを2.4%に上方修正されたが、2022年の成長予測は、2.7%のままとなっている。

ADBは、極度の貧困の撲滅に努めるとともに、豊かでインクルーシブ、気候変動や災害等のショックに強靭で持続可能なアジア・太平洋地域の実現に向け取り組んでいる。ADBは1966年に創立され、49の域内加盟国・地域を含め68の加盟国・地域によって構成されている。

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