マニラ、フィリピン(2019年12月9日)-アジア開発銀行(ADB)の2019年における気候変動関連融資額は、60億ドルを超えて過去最高を記録し、気候変動関連の年間投融資額を2014年の30億ドルから倍増させるという重要なコミットメントを達成した。ADBは、2015年9月の国連気候変動サミットで国際開発金融機関(MDB)として初めて気候変動ファイナンスに係るコミットメントを表明したが、その目標とするコミットメントを1年前倒しで達成した。
この目標は、カンボジアでの農業改善事業や、中国での都市環境の居住性と気候変動に対する強靭性強化の取り組みを対象としたプロジェクトが承認されたことにより達成された。2019年におけるADBの気候変動関連融資の内訳は、14億ドルが気候変動への適応策、48億ドルが気候変動の緩和策となっている。
ADBによる60億ドルの気候変動ファイナンスに係るこの目標達成は、スペインのマドリードで開催されている国連気候変動枠組条約第25回締約国会議(COP25)と時宜を一にするもので、この会議において国際社会は、パリ協定に係るコミットメントの実現に向けた、かつ2020年に提出される予定となっている各国の一段と野心的な国別気候行動計画の支援につながる、具体的な行動を迅速に定めることが求められている。
中尾武彦ADB総裁は、「マドリードに集結している気候分野において主導的な立場を果たす各国の代表者は、気候変動への対策強化にコミットすべきである。ADBはアジア・太平洋地域の『気候バンク』として、資金供給と技術支援の両面で強化を図っていく」としたうえで、「同地域における気候変動対策への資金提供は、経済発展や貧困削減、生命を救うために不可欠である。ADBは、近年、気候変動対策に関連して初となる成果を数多く達成しており、今世紀の最重要課題に取り組むべく、開発途上加盟国を支援し続ける」と述べている。
ADBは、開発途上加盟国がパリ協定に基づいた目標を達成できるよう支援すると共に、低炭素かつ気候変動に強靭な成長と開発の軌道への移行を実現できるよう、引き続き強くコミットする。この方針は、気候変動への対応、気候・災害に対する強靭性の構築、および環境の持続可能性の向上への取り組みを強調するADBの「ストラテジー2030」に反映されている。ADBは、2030年までに業務案件の75%以上を気候変動の緩和と適応に係る取り組みに充てる他、気候変動対策に合計800億ドルの資金を提供する。
ADBは、自身の気候変動関連ファイナンスの拡大に加え、官民パートナーとの新しく革新的な協調融資の機会の創出に取り組んでいる。例えば、緑の気候基金(GCF)などのグローバル・ファンドから譲許的な資金を調達しているが、それには9件のプロジェクトに対するグラント(無償支援)と譲許的貸付を合わせて合計4億7,300万ドルに相当する資金が含まれる。またこの中には、山東省でのグリーンファイナンスを仲介する中国初のGCFプロジェクトが含まれる。
さらにADBは、新たな資金支援メカニズムとして50億ドル相当のグリーンボンドを発行した。ADBは、2016年に、フィリピンのティウィ・マクバン地熱エネルギー施設の信用補完取引を通じて、アジア・太平洋地域で初となるプロジェクト・レベルでの気候変動債の発行を支援し、インドネシア、タイおよびベトナムの他のプロジェクトでも同様な支援を推し進めた。
ADBは、その業務において、気候変動対策に係る取り組みを促進するために多くの手段を講じてきた。これには目標を定めたアプローチが含まれ、プロジェクトのポートフォリオにおける気候変動リスクに関するスクリーニングの実施や、気候変動によって生じる同地域の主要なインフラに対してのリスク診断などが導入されている。さらにADBは、資金面での強靭性を高めるために緊急災害リスクファイナンスなどの新たな金融商品を導入してきた他、再生可能エネルギーやエネルギーの効率性向上、また、持続可能な交通・運輸や都市開発、気候変動対応型農業などへの投資を強化してきた。こうした取り組みとともに、MDB間で合意された方法論に則り厳格にファイナンスの状況が管理されたADBの気候関連ポートフォリオのプロジェクト・レベルでの情報公開を通じて、ADBの気候関連業務の透明性の強化が図られてきた。また、能力強化や技術協力に係る支援も重要な手段となっている。
ADBは、極度の貧困の撲滅に努めるとともに、豊かでインクルーシブ、災害等のショックに強靭で持続可能なアジア・太平洋地域の実現に向け取り組んでいる。ADBが2018年に新たに契約署名した融資およびグラントの総額は216億ドルにのぼる。ADBは1966年に創立され、49の域内加盟国・地域を含め68の加盟国・地域によって構成されている。