【フィリピン・マニラ、2017年4 月25 日】アジア開発銀行(ADB)は、『年次報告2016』を本日発表し、地域における開発(特にインフラ)のための資金とノウハウの需要が伸び続ける中、年間業務総額は、創立50周年を迎えた2016年に初めて300億ドルを超えたとした。
同報告によると、協調融資を含むADBの業務総額は、前年比18%増の317億ドルに達した。業務総額の内訳は、承認額ベースで、融資とグラント(無償援助)が174.7億ドル、技術協力が1.69億ドル、そして協調融資額が140.6億ドルであった。協調融資額は、2015年の数値を31%上回るという記録を打ち立てた。プロジェクトの実施を成功させる上で重要な指標となる実行額も、2016年は過去最高の122.6億ドルに達した。
民間部門業務は25億ドルに達したが、この額に到達したのはADBの歴史の中でも2回目であり、民間企業への支援を大幅に強化することにより、域内全体にわたって質の高い雇用を創出し、生活水準を向上させるというADBの長期戦略を反映する結果となった。さらに、ADB自らの資金とは別に、民間部門業務への協調融資は、前年比12億ドル増の58.4億ドルという記録的な金額に達したが、これはノンソブリン業務を支援するための公的協調融資額2.38億ドルを含む。
今年1月にADBは、暫定的な業務実績を発表しているが、今回はそれを改訂するものである。
ADBの中尾武彦総裁は、「アジア太平洋地域における開発支援の強化は、域内の人々の生活を改善するというADBの強い決意を表している」と述べ、「ADBは、開発支援50周年を祝う中、開発途上加盟国の変化するニーズに対応できるよう、一層努力していく」とした。
年次報告2016は、アジア太平洋地域の過去50 年における顕著な経済的変化、および域内の開発と人々の生活改善の支援においてADBが担ってきた役割を分析している。同報告は、域内の経済成長と貧困削減の成果は、最も楽観的な予想をも上回るものであるが、ADBが取り上げるべき重要課題は依然として残っているとした。
中尾総裁は、「安閑としていられない」とした上で、「アジア太平洋地域には、今なお3.3億人が絶対的貧困状況の中で暮らしている。インフラの不足は未だに経済成長を抑制し、貧困削減を妨げ、生活水準の改善を制限している」と指摘した。
ADBは、域内のインフラ金融の需要を満たすには年間1.7兆ドルが必要であると推定している。インフラ以外にも、気候変動、保健、教育、ジェンダーなど、切迫した課題が残っている。ADBは、こうした開発ニーズに応えるため、アジア開発基金(ADF)の融資業務を通常資本財源(OCR)のバランスシートに統合することにより、業務のスケールアップと資金供給能力の拡大に着手した。この統合は、今年の1月1日に発行し、OCRの資本は、ADFから308億ドル相当の融資やその他の資産が移されたことにより、173億ドルから481億ドルへほぼ3倍増加した。2020年までにADBの融資とグラントの年間承認額を現在の50%以上増加させ、200億ドルを超える額へ引き上げることが期待されている。
また同報告によると、昨年5月にADFが33億ドル補充されたことを受け、ADBは今後4年間で、最貧困加盟国に対するグラントを70%増加させる。ADBは、アジアの新興経済国の拠出公約の増加を含む32のADFドナーからの拠出により、小経済国に対する最低割当て額を2倍にし、災害リスク管理への支援を強化し、域内の保健安全保障に向けた更なる支援を提供することができる。
マニラに本拠を置くアジア開発銀行(ADB、加盟国・地域数67、うち域内48)は、インクルーシブな経済成長、環境に調和した持続可能な成長、および地域統合の促進を通じて、アジア太平洋地域の貧困削減に取り組んでいる。ADBは、1966年に創設され、地域の開発パートナーとして50周年を迎えた。