フィリピン、マニラ(2021年3月9日)-アジア開発銀行(ADB)は、質の高いグリーンな開発の実現に向けた中国政府の取り組みを支援するため、2021年から2025年までをカバーする新たな国別支援戦略(CPS)について、概ね理事会の支持を得た。このCPSは、高所得国へと移行し、ADBの支援からの卒業へと近づく中国へのADBの関与に新たな方向性を示す上で中心的な役割を果たす。
中国でのADBの業務は、相互に関連する三つの戦略的優先事項に注力する。それらは、環境的に持続可能な開発、気候変動への適応と緩和、高齢化社会とヘルス・セキュリティである。
ADB中国事務所のヨランダ・フェルナンデス・ローメン(Yolanda Fernandez Lommen)所長は、「ADBは、地域の公共財やナレッジ、他でも適用可能なベストプラクティスを創出する革新的な実証プロジェクトを通して、付加価値を生み出すことのできる分野に的を絞っている」とした上で、「公共および民間セクター業務の間の緊密な連携がこのアプローチの中核となり、ADBの業務部門とナレッジ部門の間の相乗効果が、複雑な問題に対処するための解決策を見い出す助けとなる」と述べた。
ADBは、中国の2021年から2025年までの公共セクター業務のために、総額70億ドルから75億ドルの融資を実施することを提案している。これは、2016年から2020年までの融資額90億ドルと比較し、このCPSの終了時に向けて減少傾向に向かう見込みであることを示している。融資水準は、利用可能な資金やプロジェクトの準備状況によって、年ごとに上下に変動する可能性がある。民間セクター業務はこれまでと同様に年間約4.5億ドルで安定的に推移する見込みである。
ナレッジは、このCPSの下でのADBの業務の中核を占める。国別知識計画は、ナレッジに基づくプログラムの戦略的アプローチを提供し、中国のナレッジ分野に係るニーズを満たすとともに、同国の開発で得た教訓を他のADB開発途上加盟国と共有することを可能にする。
中国は長年にわたって高い経済成長率を維持し、近代的な物理的、経済的インフラを整備し、上位中所得国の地位を獲得し、世界第2位の経済大国へと台頭した。さらに同国は、2020年11月に、極度の貧困を撲滅したと発表した。しかし、急速な経済成長は、社会的不平等、環境破壊と汚染、急速な高齢化社会、そしてヘルス・セキュリティへの懸念など、新たな開発課題を生み出している。
このCPSでは、これらを含む様々な課題を解決するには、社会的・経済的制度を強化する必要があるという認識の下で、中国が主要な制度的問題に対処し、ADBの支援からの卒業へと着実に進むよう、それを支えるADBの関与に方向性を与える。
またCPSは、中国の第14次五か年計画の下での政府の主要な開発優先事項に沿ったものとなっている。 これらには、気候変動、生物多様性の喪失、および生態系への被害に対処するための自然資源管理、低炭素開発、人口高齢化に関連する社会的包摂性、そして地域のヘルス・セキュリティの重視が含まれる。グローバルおよび地域の公共財への支援は、今後数年間における中国とADBの間のパートナーシップの重要な柱となる。
このCPSの実施期間の中間地点において、ADBは、セクターやテーマレベルでの主要な指標やその他の評価基準に対する中国の進捗状況を評価し、ADBの支援からの卒業に関するレビューを行う予定である。
ADBは、極度の貧困の撲滅に努めるとともに、豊かでインクルーシブ、気候変動や災害等のショックに強靭で持続可能なアジア・太平洋地域の実現に向け取り組んでいる。ADBは1966年に創立され、49の域内加盟国・地域を含め68の加盟国・地域によって構成されている。