【横浜、2017年5月6日】アジア開発銀行(ADB)の中尾武彦総裁は、第50回ADB年次総会の開会挨拶の中で、アジア太平洋地域の継続する成長を支援し、気候変動対策に取り組むには、インフラへのさらなる投資が必要であると発言した。中尾氏はさらに、地域の急速な変化に対応するためにADBが策定中の新たな長期戦略において、インフラへの投資は引き続き重点分野であると述べた。

ADBの総会には、約6,000人の政府関係者、学識経験者、民間企業や市民社会の代表、メディア関係者が参加している。今年の総会は、「ともにひらく、アジアの未来」というテーマの下、横浜で開催されている。本総会は、アジア太平洋地域におけるADBの50 年にわたる開発事業の記念でもある。

開会挨拶の中で中尾氏は、過去半世紀に及ぶADBの功績は専門的知識と資金を組み合わせ、優れた政策を促進し、域内の協力と友好関係の構築を推進したことに集約されると語った。

中尾氏は、ADBの新たな長期戦略「ストラテジー 2030」の下、アジアの成長を支援しつつ、貧困や気候変動、都市化、高齢化、格差の拡大を含む開発課題に対応するための最善の方法を示し、ADBの今後の方向性を打ち出すとした。ADBは、域内およびドナー国の幅広いステークホルダーと共にこの戦略に関する協議を行っている。

「ストラテジー 2030」におけるADBの重点分野は、先端技術を取り入れたプロジェクトに対する支援の強化をはじめとするインフラへの投資である。中尾氏は、「アジアでは2030年までに、エネルギー、交通、通信、および水関連の投資に年間1.7兆ドルが必要である」と指摘した。

ADBが「ストラテジー 2030」に掲げる2つ目の優先事項は、社会セクター、特に保健と教育分野への支援である。これに関して中尾氏は、ADBは「ユニバーサル・ヘルスケア(国民皆保険)制度と、マラリア、結核、HIVをはじめとする感染症対策のための国境を越えた取り組みを支援する」とした。

同戦略では、ジェンダーの平等に対する支援も優先される。ジェンダーは、社会・経済発展の全ての局面に影響を及ぼす横断的な課題である。ADBは、「女性や少女を対象に、より高度な技能習得、健康増進、雇用の増加、そして政策決定における発言権の拡大の確保を支援するプロジェクトを設計する」と中尾氏は語った。

ADBは新たな長期戦略の下、官民連携パートナーシップなどを通じて、開発のために民間資金を動員する取り組みを強化する。中尾氏は、「ADBは教育、保健、農業に関し、ますます多くの民間セクターのプロジェクトを支援している」としたうえで、「地場銀行を通じた中小零細企業への融資は、今後もADBの優先事項として位置づけられる」と述べた。

最後に中尾氏は、「ストラテジー 2030」の一環としてADB自身が継続的な改革を実施する必要性を強調した。こうした改革により、ADBは、「各セクターと分野における専門性を強化し、職員の能力を高め、業務手順の効率化を図る」とした。またADBは、市民社会、学界、民間セクター、そして地方自治体との協力も深めていくと付け加えた。

中尾氏はまた、2016年におけるADBの業績についても語った。協調融資と技術協力を含むADBの昨年の業務総額は、317億ドルに達した。ADBの融資およびグラントの承認額は、前年に比べ9%増加し、175億ドルという最高額に達した。気候関連支援額は、2015年の26億ドルから37億ドルに増加した。公共および民間パートナーとの協調融資額は、139億ドルに増加した。この額には、アジアインフラ投資銀行と初めて協調融資を行った、パキスタンの道路建設とバングラデシュの天然ガスに関する2件のプロジェクトも含まれている。

マニラに本拠を置くアジア開発銀行(ADB、加盟国・地域数67、うち域内48)は、インクルーシブな経済成長、環境に調和した持続可能な成長、および地域統合の促進を通じて、アジア太平洋地域の貧困削減に取り組んでいる。ADBは、1966年に創設され、地域の開発パートナーとして50周年を迎えた。

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