2019年8月29日(インド・ニューデリー)- 中尾武彦・アジア開発銀行(ADB)総裁は、インドのモディ首相と3度目の会談を行い、インド政府が掲げる経済成長ビジョンの実現に向けて意見交換を行いました。特に科学技術イノベーション、再生可能エネルギー、農業灌漑用ソーラーポンプシステム、電気自動車や車両用バッテリー、フィンテック、持続可能な観光、リサイクルプラスチックなどの分野で、ADBとインド政府間でのパートナーシップを加速化させていく方針を確認しました。中尾総裁は、ニルマラ・シタラマン財務・企業大臣、ニティン・ガッカーリ道路交通・零細中小企業大臣、ピユシュ・ゴーヤル鉄道・商工大臣とも会談を行いました。

中尾総裁は、「インドは、アジア・太平洋地域において最も急速に成長している主要国のひとつであり、過去5年間に亘り、平均約7.5%の成長率を維持してる。 ADBは、世界経済の不透明感による下振れリスクにも関わらず、2019年の同国の成長率は7.0%、2020年の成長率は7.2%になると予想している。」と述べました。また、「インド政府は、マクロ経済対策を発動しつつ、経済構造の改革を進めるとともに、産業競争力及び雇用創出の強化を図り、農業セクターの活性化へ向けた取組みを実施していくことが望ましい」と述べました。

中尾総裁は、物品やサービスに係る新税制度の導入や、2016年破産倒産法の実施、国営銀行に対する資本注入や投資環境の改善を加速化させる同政府の取組みを歓迎しつつ、社会保障や福祉、労働政策の分野におけて、更なる改革が押し進められることに期待を寄せました。更に、インドの経済規模を、今の2倍近い5兆ドルに引き上げを目指した、モディ首相が掲げる政策目標を支持し、包括的な成長と急速な経済変革を推進していくための支援を今後も実施していくと述べました。

都市・交通、灌漑、スキル開発、官民連携(PPP)といった分野において、2018年に合意されたADBによるソブリン融資は、30億ドルと過去最高額を記録しました。中尾総裁は、同国による各プロジェクトの迅速な実施を歓迎するとともに、民間投資の促進に向けた取組みとして、国家投資インフラ基金(National Investment and Infrastructure Fund: NIIF)に対して、ADBより1億ドルを拠出すると発表しました。ADBは、本年5月にも、インド国内の線路の電化に向けて、インド鉄道金融公社(Indian Railway Finance Corporation: IRFC)と7.5億ドルの長期融資協定を結んでいます。

ADBはインドに対して、2020年から2022年までの今後3年間に亘り、ソブリン業務を通じて年間平均30億ドル、ノンソブリン業務を通じて年間平均10億ドル、合計120億ドル超の資金提供を行う用意があります。

インド政府が掲げる重点的課題に焦点を当てた、ADBのソブリン及びノンソブリン業務は、(1)ジャイプール上水道整備事業、(2)インド東部沿岸経済回路、(3)中小企業産業競争力の強化とグローバルバリューチェーンへの展開、(4)国家道路交通安全プログラム、(5)デリー・メラート間における高速鉄道整備等の事業を主に対象とする他、(6)中等教育事業支援や(7)ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)と強靱な保健システムの構築に向けた協力にも向けられます。

更に、モディ政権は、東アジア・東南アジアとの関係を重視する「アクト・イースト」政策を掲げている他、ADB が2001年に提唱した、南西アジアの8か国(インド,パキスタン,バングラデシュ,スリランカ,ネパール,ブータン,モルディブ,アフガニスタン)の加盟からなる、南アジア地域経済協力計画(SASEC)においても積極的に関与しており、2020年3月にはSASEC財務大臣会議が初めてインドで開催されます。

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