中尾武彦ADB総裁が7年の任を終え退任

News Release | 2020年1月16日

フィリピン、マニラ(2020年1月16日)-本日、中尾武彦アジア開発銀行(ADB)総裁は、7年近く務めた総裁職を退く。

中尾氏は、ADBのスタッフに向けた退任のあいさつにおいて、「この7年間、各国政府、理事会、マネージメントチーム、スタッフとともに、我々は多くのことを成し遂げた」としたうえで、「ADBでの時間は実りあるもので、深い満足感と感謝の気持ちをもってADBを去ることができる」と謝辞を述べた。

中尾氏は2013年4月28日にADB総裁に就任し、2019年9月17日に総裁職を辞任する意図を表明していた。

中尾氏は、ホスト国のフィリピンに対して心からの感謝の意を表明し、「ADBは勤勉で、親切で、有能なフィリピン人のスタッフに恵まれてきた」と述べた。また中尾氏は、ADB総務を務めるフィリピンのカルロス・ドミンゲス財務長官に対し、本日の退任式出席について感謝の意を伝えるとともに、同氏から受けたADBの業務への協力やアドバイスについて謝意を表した。こうした協力により、フィリピンにおけるADBの事業は著しく拡大した。

ADBの総裁を退任するにあたり、中尾氏はADBのスタッフに対して、覚えておいてほしい3つのメッセージを贈った。一つ目は、明確性と付加価値に留意することであり、レトリックであいまいにせず、ADBの各業務の目的とその達成手段を常に明確にし、ADBならではの付加価値のある仕事に心がけること、二つ目は、アジアも世界も大きく変貌する中でADBの意義が失われることがないように、ADB自らが変革することへのガッツと現状に満足することなく挑戦する姿勢を持ち続けること、三つ目は、アジア・太平洋地域の中にあって、プロジェクトの実施や知識の提供、各国の友好や協力を推進するユニークな機関であるADBで働くことに誇りを持ち続けること。それと同時に、ADBは加盟国の納税者の拠出により成り立ち、貧しい人々のために働いている機関であることを踏まえ、謙虚さを常に心にとどめること、である。

より高度な技術をプロジェクトに取り込みつつ、ADBの融資とグラントの契約締結額は、2013年の140億ドルから2019年には220億ドルまで拡大した。このうち、民間部門業務(民間企業への貸付、出資および保証)は、6億7千万ドルから約30億ドルに増加した。保健・医療や教育分野などの社会セクターにおけるADBの業務も強化された。

中尾氏のリーダーシップの下、ADBは多くの重要な改革を実施した。2017年にアジア開発基金(ADF)の貸付機能とその資本を通常資本財源に統合したことにより、ADBの資本は約3倍になり、融資の大幅な拡大が可能となった。またADBは、ADF 12(2017年から2020年を対象)の増資を無事に完了し、昨年秋には、より貧しく、より脆弱な国に対するグラント支援を強化するADF13増資(2021年から24年を対象)の方向性について、ドナー会合で支持を得た。

ADBは、2018年に「ストラテジー2030」を発表し、貧困の削減へ向けた継続的な取組みなどADBの今後の優先分野を定めるとともに、気候変動やジェンダー、民間部門業務、協調融資について明確な数値目標を設定した。またADBは、他の国際開発金融機関に先駆けて、気候変動関連の年間投融資額を2015年の30億ドルから2020年までに60億ドルに倍増させるという気候ファイナンスに関する目標を定めたが、その目標を2019年に1年前倒しで達成した。

中尾氏の在任中、ADBはナレッジの提供サービスを強化した。ADBは、クリーンエネルギーや持続可能な交通・運輸、都市開発、水、デジタル変革などの重要なナレッジ・フォーラムを定期的に開催した。またADBは、インフラ需要、新しいテクノロジーが雇用にもたらす影響、防災に関する画期的な報告書を作成した。2017年にADBは、創立50周年を記念し、1966年の創立以来の進化の歩みを記した書籍『アジアはいかに発展したかーアジア開発銀行がともに歩んだ50年(Banking on the Future of Asia and the Pacific: 50 Years of the Asian Development Bank)』を刊行した。さらに昨日2020年1月15日に刊行した『アジア開発史-政策・市場・技術発展の50年を振り返る-(Asia’s Journey to Prosperity: Policy, Market, and Technology over 50 Years)』では、15のテーマ別の章を通じて、アジアの急速な変革の歴史の総括を行っている。

ADBがその使命を効率的に遂行するよう、中尾氏は人事や調達、情報技術などの分野でも多くのイニシアティブを主導した。15のセクター・テーマ別グループが設置され、部局間での知識の共有が進められるとともに、「One ADB」アプローチが促進された。官民連携プロジェクトの組成や実施に関連してトランザクション・アドバイザリー・サービスを提供する官民連携部も発足した。さらにADBは、民間部門業務の強化にあたり、シンガポール事務所を開設する。

中尾氏の後任として、2019年7月まで日本の財務省で財務官を務めていた浅川雅嗣氏が1月17日に新総裁に就任する。