フィリピン、マニラ(2023年9月20日) – アジア開発銀行(ADB)は、アジア・太平洋地域の経済見通しについて、先行きに対するリスクは高まっているが堅調に推移するとの予測を示した。

ADBが本日発表した『アジア経済見通し2023年9月版』(Asian Development Outlook (ADO) September 2023)によると、同地域の発展途上国の今年の経済成長率は4.7%と、前回見通しの4.8%から若干下方修正され、来年は4.8%を維持する見通しである。

同地域の今年上半期の成長は、世界的見通しの弱さから輸出需要が減少したにもかかわらず、各国の好調な内需と中国の経済活動再開に牽引されて上向きだった。観光業やサービス部門の回復、域内への健全な資金移動、金融環境の改善などが経済活動を支えており、ほとんどの国で昨年をピークにインフレ率が低下している。

しかし、中国の不動産セクターの弱さが地域の見通しを圧迫し、世界的な高金利が金融不安のリスクを高めている。ロシアによるウクライナ侵攻の継続、輸出制限、エルニーニョによる干ばつや洪水のリスク増大による散発的な供給の混乱は、食料価格の上昇を再び引き起こし、食料安全保障を脅かす可能性がある。

アルバート・パークADBチーフエコノミストは、「アジア発展途上国は力強い成長を続け、インフレ圧力は後退している」とした上で、「同地域には金利を下げ始めた中央銀行もあり、それが成長を後押しするだろうが、それでも政府は同地域が直面する多くのリスクに警戒する必要がある。中国の不動産市場の弱さが引き続き懸念される。気候変動やエルニーニョの影響による異常気象は、各国が協力してレジリエンスを構築し、最も脆弱な人々を保護しなければならないことを思い起こさせる」と述べた。

アジア・太平洋地域の今年のインフレ率は3.6%と、当初予想の4.2%から低下する見通しである。これは主に、中国のインフレ率が低く、食料やエネルギーの価格が安定していることによる。来年のインフレ率の見通しは3.5%である。

アジア発展途上国の地域のうち、東南アジアの今年の成長見通しは、輸出需要の低迷により、当初の4.7%から4.6%に引き下げられた。南アジアの成長見通しも0.1%引き下げられ、5.4%となった。ただし、同地域は投資と消費が好調で、依然として最も成長している地域である。東アジアの成長見通しは、中国の今年の成長見通しが4月の予測値5.0%から4.9%に引き下げられたことから、4.6%から4.4%に引き下げられた。中央アジア・コーカサス地域と太平洋地域の成長見通しは引き上げられた。

ADBは、極度の貧困の撲滅に努めるとともに、豊かでインクルーシブ、気候変動や災害等のショックに強靭で持続可能なアジア・太平洋地域の実現に向け取り組んでいる。ADBは1966年に創立され、49の域内加盟国・地域を含め68の加盟国・地域によって構成されている。

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