フィリピン・マニラ (2018年5月5日) — アジア開発銀行(ADB)は、新たな長期戦略である「ストラテジー2030」を今年中に発表する予定である。ADBの中尾武彦総裁は、第51回年次総会の開会演説の中で、「この長期戦略が、アジア・太平洋地域の深刻な貧困の根絶を目指すADBの強い志を新たにし、この地域を豊かで、インクルーシブかつ持続可能でさまざまな変化への適応力を持つ地域にするためにADBのビジョンを拡大するものであると」述べた。

「インクルーシブな成長のために人と経済を結びつける」というテーマの下、今年の年次総会には、加盟国政府や学界の代表者、ビジネスリーダーや市民社会からの代表者など、4,000名以上が出席した。

中尾総裁は開会演説で、1966年以来、ADBのホスト国としてフィリピンが提供してきた多大な支援を称え、同国政府と国民による万全な準備と暖かい歓迎に対し感謝の意を表した。また、現在協議中のストラテジー2030、2017年度のADBの業績、引き続き好調なアジア経済の成長、新たなテクノロジーの雇用への影響について語った。

中尾総裁は、ストラテジー2030に沿って、今ある、そして今後新たに出てくる課題に取り組んでいくと述べ、「貧困はまだ根深く残っている。ADBは、不平等の拡大、増大する環境への影響、そして急速な都市化に対処しなければならない。高齢化が進む国がある中、若年人口が増加している国もあり、そこには好機とともに課題もある」と語った。ストラテジー2030は、持続可能な開発目標(SDGs)と気候変動に関するパリ協定など国際的な課題と合意に沿った内容となる。

ストラテジー2030の優先事項は次の10項目である。(1) アジア・太平洋地域でいまだ続く貧困と拡大する不平等への対処 (2) ジェンダーの平等の促進 (3) 気候変動への対応強化、気候変動・災害に強い社会の構築、環境の維持 (4) 競争力があり、環境に優しく、さまざまな変化や状況に適応でき、インクルーシブで暮らしやすい都市の構築 (5) 農村開発と食糧安全保障の促進 (6) ガバナンスの強化 (7) 地域協力と統合の推進 (8) 域内の莫大な開発資金ニーズを満たすための民間資金の活用 (9) ナレッジを提供し、それを広めていく役割のさらなる強化 (10) より強く、より良く、より迅速なADBの実現

中尾総裁は、「ADBは、引き続き資金を効率的かつ創造的に活用していく。また、職員に投資し、ジェンダーバランスを含め、多様化を促進し、敬意と配慮のある職場環境を作っていく。そして、支援の現場での存在感も高めていくつもりだ。また、ビジネスプロセスを現状に即して大幅に改善することにより、取引先へのサービスの迅速化に努める」と述べた。

そして「One ADB」のアプローチが、部局間の垣根を取り払い、ADB全体の専門知識を結集するものであることを付け加えた。

Media Contact