モンゴル・ウランバートル (2018年9月21日) アジア開発銀行(ADB)理事会は、ウランバートル首都圏から遠く離れ、開発の遅れたモンゴル西部地域に、各種再生可能エネルギー技術を使って電気と暖房を供給する41メガワット分散型再生可能エネルギーシステムを開発するため、4,000万ドルの融資を承認した。この種のシステムとしてはモンゴル初となる。
またこのプロジェクトは、エネルギーと経済活動へのアクセス拡大のために再生可能エネルギー導入量を増加させることを目的に設けられた、気候投資基金(CIF)一つである低所得国向け再生可能エネルギー拡大プログラムを通じた戦略気候基金(SCF)からの無償資金(グラント)1,460万ドルと、ADBが支援するプロジェクトに高度低炭素技術を導入することを支援する二国間クレジット制度日本基金(JFJCM)からのグラント600万ドルの協調融資を受ける。
山村繁ADB東アジア局主席エネルギー・スペシャリストは、「炭素と大気汚染物質の排出を削減しながらも、モンゴル西部の経済成長を促進させるには、クリーンで安定性があり、持続可能なエネルギー・セクターが必要である。このプロジェクトを通して資金供与される41MWの再生可能エネルギーシステムは、エネルギー・セクターの炭素集約度を軽減させるだけでなく、2030年までに炭素排出量を14%削減するという同国によるパリ気候協定目標達成への取り組みを後押しするものだ」と述べた。
この再生可能エネルギー・セクター・拡大プロジェクトは、現在、高価で炭素集約度の高い近隣諸国からの輸入電力に頼っているモンゴル西部地域に散在する地方市町村に、クリーンで安定した電力を供給するため、高度な電池貯蔵技術とエネルギー管理システムを備えた太陽光・風力発電を活用した40.5メガワットの分散型再生可能エネルギーシステムの開発を支援する。また、公共の建物に大気汚染のない空間暖房を供給する500キロワットの浅層地中熱ポンプシステムも設置予定である。このシステムの導入が広がれば、将来的に、プロジェクト対象地域の冬の大気汚染を軽減することができる。
今回の分散型再生可能エネルギーシステムにより、プロジェクト対象地域住民25万8,313人以上がクリーンで安定した電気と暖房を得られる。さらに、2023年までに毎年合計8万7,968トンの二酸化炭素排出が回避される見込み。
また、このプロジェクトでは、再生可能エネルギーによる安定的な電力供給を管理する地元の電気事業者や関連機関の能力向上を援助し、再生可能エネルギーへの長期投資計画の作成を支援することで、将来的に、モンゴル西部地域で、民間セクターによる再生可能エネルギーへの投資基盤を築くことを目指す。
プロジェクト総費用は6,622万ドルで、うちモンゴル政府が562万ドルを提供。2023年までに完成する見通しである。
モンゴル政府は、2000年から再生可能エネルギーの利用拡大に取り組んできたが、モンゴルのエネルギーミックスに占める再生可能エネルギーの割合は12%と低い。モンゴルは、2015~2030年の国家エネルギー政策の下、再生可能エネルギーの割合を2023年までに20%、2030年までに30%に引き上げる目標を掲げており、このプロジェクトに対するADBの支援は、この目標達成に寄与するものである。