ADB、新型コロナウイルスに関する懸念が続く中、2021年のアジア開発途上国の成長予測を7.1%に下方修正

フィリピン、マニラ（2021年9月22日） — アジア開発銀行（ADB）は、新型コロナウイルスのパンデミックに関する懸念が続く中、2021年のアジア開発途上国の経済成長予測を下方修正した。

ADBの主要経済報告書「アジア経済見通し2021年改訂版」（Asian Development Outlook 2021 Update）では、今年の経済成長率予測を7.1%と、4月時点の見通しである7.3%から下方修正した。2022年の成長予測は、5.3%から5.4%に引き上げられた。新たな変異株の出現や局地的な感染再拡大、様々なレベルでの行動規制やロックダウン措置の再適用、また、ワクチン配分の遅れやその不均等な分配がアジア開発途上国の見通しに暗い影を落としている。

ジョセフ・ズベグリッチJr.ADBチーフエコノミスト代理は、「アジア開発途上国では、新たな変異株の流行とともに、一部の国では更なる行動制限措置が取られるなど、依然として新型コロナウイルスのパンデミックに対する脆弱性が懸念される」とした上で、「コロナ封じ込め策やワクチン接種だけに注力するのではなく、企業や家庭への継続的な支援とともに、回復を促進するために、コロナ収束後の「ニューノーマル」に対応した経済各分野の再編成の取り組みにも焦点を当てる必要がある」と述べた。

アジア開発途上国では、デルタ株が4月に検出されて以降、新型コロナの感染ケースが急増している。一日の新規陽性者数は、5月に43万人と過去最大となり、8月31日には、一日の新規陽性者数は16万3千人超を記録した。一方、アジア開発途上国のワクチン接種のペースは依然として均一ではなく、先進国に比べて遅れている。2021年8月31日現在、アジア開発途上国で完全にワクチン接種を終えた人は全人口の28.7%にとどまるのに対し、米国では51.8%、EUでは58.0%に上る。

アジア開発途上国の回復への道のりは依然として均一ではない。東アジアの今年の成長予測は、世界的な需要の高まりにより輸出が促進され、4月時点の見通し7.4%から7.6%に上方修正されている。東アジアの2022年の成長予測は、5.1%と変わらない。地域最大の経済大国である中国の成長予測は、2021年が8.1%、2022年は5.5%のままである。

今年の中央アジア諸国の経済成長率見通しは、4月時点の3.4%から4.1%に上方修正された。これは、アルメニア、アゼルバイジャン、ジョージア、カザフスタン、ウズベキスタンの見通しが改善されたことによるものである。中央アジアの2022年の見通しは、4.0%から4.2%に改善された。

ADBは、今年の南アジアの経済成長見通しを、4月時点の9.5%から下方修正して8.8%になると予測している。しかし、2022年の見通しは7.0%となり、6.6%から改善した。南アジアで最大の経済大国であるインドは、2021年の見通しが11.0%から10.0%に引き下げられた一方、来年の見通しは7.0%から7.5%に改善した。

東南アジアおよび太平洋地域に関する2021年の予測については、域内各国が新たな変異株への対応、度重なるロックダウン措置や行動規制、そしてワクチン接種の遅れといった課題に引き続き取り組んでいる状況にあり、下方修正された。東南アジアの2021年の経済成長率は3.1%、2022年は5.0%と予測され、前回予測の4.4%、5.1%からそれぞれ下方修正された。太平洋諸国の今年の経済成長率は、4月時点の1.4%から0.6%に下方修正された一方、2022年の見通しは4.8%に拡大するとされている。

アジア開発途上国の今年のインフレ率見通しは2.2%、2022年は2.7%と、引き続き抑制された水準となる見込みである。現在の国際商品価格と食料価格の上昇傾向は、アジア開発途上国の一部の国にインフレを引き起こす可能性がある。

ADB は、極度の貧困の撲滅に努めるとともに、豊かでインクルーシブ、気候変動や災害等のショックに強靭で持続可能なアジア・太平洋地域の実現に向け取り組んでいる。ADBは1966年に創立され、49の域内加盟国・地域を含め68の加盟国・地域によって構成されている。