フィリピン・マニラ(2020年9月18日)-アジア開発銀行(ADB)は、アジア・太平洋地域の開発途上国のパートナーとして、新型コロナウイルスのパンデミックから回復を遂げるために協力していくと、浅川雅嗣ADB総裁は、本日ADB総務会において表明した。
浅川総裁は、「アジア・太平洋地域がいまだ不確実性に直面している中、ADBは加盟国の揺るぎないパートナーとして引き続き信頼を得て、力強く継続的な回復に向けて共に取り組んでいく」とし、「持続可能で、強靭かつインクルーシブな回復に向けたADBの取り組みは、長年にわたり築き上げられた加盟国との相互信頼関係の上に成り立っている」と述べた。
浅川総裁は、ADB第53回年次総会の第2ステージのビジネスセッションの冒頭で演説した。本総会は新型コロナウイルスのパンデミックの影響により、バーチャルで簡略化された形式で開催された。
ADBは4月に、開発途上加盟国による新型コロナウイルス対策を支援するために、200億ドルのパッケージを発表した。これには、各国における緊急性の高い医療ニーズへの対応を支援するための緊急無償資金協力や技術協力の他、各国の景気対策財政支出を支援する「景気対策財政支援プログラムローン(CPRO)」や民間セクター向け支援が含まれる。
ADBはこれまでに、新型コロナウイルス対策のためにおよそ112億ドルの資金支援および技術協力に署名した。ADBはまた開発パートナーと緊密に協力し、約72億ドルの協調融資を確保した。
浅川総裁は、アジア・太平洋地域が回復に向けて歩みを進めるにあたり、ADBは加盟国との関係を強化し、6つの主要分野で支援していくと述べた。
第1に、ADBは地域協力・統合を推進し、パンデミック後のニュー・ノーマルの状況において新たなグローバル化がもたらす機会を加盟国が活用できるよう支援する。浅川総裁は、「現下の国境封鎖や渡航制限は、グローバリゼーションが不可逆的に停止した兆候であると示唆する人もいるが、私の考えでは、違う形を取りつつも、グローバリゼーションは戻ると思っている」と述べた。ADBは開発途上加盟国と協力して、バリューチェーンやサプライチェーンのさらなる分散化を図るとともに、感染症の拡大防止や気候変動による影響の緩和、地域の金融セーフティネットの強化など、地域公共財を推進していく。
第2に、新型コロナウイルスにより所得格差と絶対的貧困が拡大していることから、ADBは、保健医療、教育、社会的保護への投資を強化し、すべての人々に安全と適切な機会が確保されるよう取り組むとともに、経済の長期的繁栄に必要な人材を育成する。
第3に、ADBは、長期戦略「ストラテジー2030」で設定された目標を達成するため、気候変動への取り組みを加速する。同戦略では、2030年までに累計で800億ドルを気候変動対策に投資し、全プロジェクトの案件数の75%に気候変動対策を盛り込むことが目標となっている。
第4に、ADBは、保健医療、教育、中小零細企業向け融資、リモートワークの分野で、情報技術やデータに投資する。またその一方で、情報格差とサイバーセキュリティの両方に対応する。
第5に、ADBは、開発のすべての主要分野において、政府が債務の持続可能性を維持しつつ、資金動員力を向上させる必要があることから、国際税務協力を通じて加盟国の国内資金動員の強化を支援していく。
最後に、ADBは、開発途上加盟国による安全で有効なワクチンの確保と、その公平な供給のための戦略を策定する取り組みを支援する。これを達成するために、ADBは引き続き、世界保健機関、世界銀行、GAVIアライアンス、ワクチン専門家および製薬会社との協力を強化していく。
2日間にわたる年次総会のオンライン・イベントでは、ADB加盟国の閣僚、開発や産業分野の専門家、ジャーナリスト、非政府組織が、アジア・太平洋地域が直面する様々な問題について議論した。本日はビジネスセッションの他に、「アジアのリセット:技術、投資、持続可能性」と題した米放送局主催のCNBCディベートや、パンデミック後のアジアの発展に関する総務セミナーなどのイベントが開催された。
ADBは、極度の貧困の撲滅に努めるとともに、豊かでインクルーシブ、気候変動や災害等のショックに強靭で持続可能なアジア・太平洋地域の実現に向け取り組んでいる。ADBは1966年に創立され、49の域内加盟国・地域を含め68の加盟国・地域によって構成されている。