マニラ、フィリピン(2019年12月2日)-アジア開発銀行(ADB)は、カシフィック・ブロードバンド・サテライト・インターナショナル社(以下、カシフィック社)が実施する通信衛星プロジェクトを対象として、カシフィック社との間で5,000万ドルの融資契約を締結した。このプロジェクトにより、アジア・太平洋地域、とりわけ太平洋の島嶼国やインドネシアやフィリピンの辺境地域などにおいて、手頃な価格で通信衛星による高速ブロードバンド・インターネット接続が利用可能となる。本融資は、ADBにとって初の通信衛星事業向け融資案件になる。
アジア・太平洋地域においては、インフラの未整備や地理的要因、高いサービスコストのために、20億人以上に上る人々が高品質のインターネット接続を持たないといわれている。このプロジェクトは、そうした地域において、ブロードバンド・インターネット接続サービスの普及を促進する。
マイケル・バローADB民間部門業務局長は、「高品質の高速インターネットへの接続向上は、教育サービスの改善や情報へのアクセスの拡大、投資の呼び込み、都市と農村との開発格差の削減、貿易や連結性の促進、そして地域経済の活性化を後押しする」とした上で、「特に、緊急時や災害時など地上の通信網が損傷した際の通信状況改善にも役立つ」と述べた。
カシフィック創業者兼CEOのクリスチャン・パトロー氏は、「ADBは、この融資案件の成立に重要な役割を果たした」 とした上で、「ADBの関与により、開発効果が非常に高いこのプロジェクトに必要な資金を確保することが可能となった。ブロードバンド・インターネットの普及は、観光業の振興や情報へのアクセス、金融サービスから保健医療や教育にいたるまで、この地域の多くの遠隔地に住む人々の生活を格段に向上させる」と述べた。
同プロジェクトは、大容量通信機能を備えた静止衛星の製造から打ち上げ、運用までを担う。当該カシフィック-1衛星は、打ち上げ業務の委託先であるスペースX社により本年12月に打ち上げが予定されており、2020年初頭には運用が開始される。
この融資は、ADBが管理するアジアインフラパートナーシップ信託基金(LEAP)によるものである。LEAPは、2016年3月に国際協力機構(JICA)の支援により設立され、アジア・太平洋地域の民間セクターによるインフラ整備事業への支援を目的としたADBの協調融資専用ツールの一つである。
このプロジェクトにおいてADBは民間インフラ開発グループ(PIDG)機関のGuarantCoとも協調する。GuarantCoは、民間金融機関からの協調融資部分に対して保証を供与する。GuarantCoは、アフリカやアジアの低所得国におけるインフラ開発のための信用補完を提供している。英国、スイス、オーストラリア、スウェーデンの各政府はPIDG信託基金を通じて、またオランダ政府は、オランダ開発銀行(FMO)やPIDG信託基金を通じてGuarantCoに活動資金を供給している。PIDGは、最も貧しく脆弱な国々に対して、先駆的なインフラ開発を行う開発金融機関である。
ADBは、極度の貧困の撲滅に努めるとともに、豊かでインクルーシブ、災害等のショックに強靭で持続可能なアジア・太平洋地域の実現に向け取り組んでいる。ADBが2018年に新たに契約署名した融資およびグラントの総額は216億ドルにのぼる。ADBは1966年に創立され、49の域内加盟国・地域を含め68の加盟国・地域によって構成されている。