【アゼルバイジャン・バクー、2015年5月2日】アジア開発銀行(ADB)の総務会はこの度、アジア開発基金(ADF)の融資業務を通常資本財源(OCR)のバランス・シートに統合するとの画期的なイニシアチブを承認した。本統合により、融資とグラント(無償支援)を合わせたADBの年間承認額は、現行水準から5割増しの年間200億ドル規模に達する見込み。ADBの貧困国向け支援は、最大7割増となる[1]。
アゼルバイジャンのバクーで開催されているADBの第48回年次総会の初日に行われた会見で、ADBの中尾武彦総裁は、2017年1月に統合が発効する時、とりわけ貧困国に対する貸付能力が大幅に拡大するため、本統合は、ADBにとって重要な節目であると述べた。1973年に設立されたアジア開発基金は、貧困国に対して譲許的融資(超長期・超低利)やグラントを提供し、通常資本財源は、中所得国向けに準市場金利による融資を行っている。
本イニシアチブにより、通常資本財源の自己資本は、約180億ドルから約530億ドルへとほぼ3倍に増える(いずれも2017年1月時点の試算)。協調融資を加えたADBの年間支援総額は、2014年は約230億ドルだったが、数年で400億ドルに達することになる。現在アジア開発基金の対象となっている貧困国は、アジア開発基金の融資と同じ条件で、拡大した通常資本財源から譲許的融資を引き続き受けられる。アジア開発基金は、グラントのみを対象国に供与する基金として継続される。
中尾総裁はまた、「このイニシアチブは、貧困国向けの資金支援を強化し、中所得国や民間セクター向け業務能力も拡大し、さらにADF拠出国の負担を軽減するため、ウィン・ウィン・ウィンの状況をもたらす」としている。統合に伴い、ADBのリスク対応能力は高まり、将来の経済危機や自然災害への対応能力が強化される。継続されるアジア開発基金のグラント業務に対するドナー国による拠出は、2017年に予定される次回の財源補充以降、現行の12億ドルから最大5割軽減される。
総裁はさらに、「ADBは既存の財源をより効率的・効果的に活用しながら、経済成長の持続に向けた各国の取り組みを引き続き支援していく」とした上で、「域内の貧困国は、私たちや次世代が依存する自然資源や生態系を保護しつつ、経済的繁栄を追求していくため、更なる支援を必要としている」と述べた。
ADBは、本イニシアチブについての検討を開始した2013年夏以降、開発途上加盟国とりわけアジア開発基金の対象国と拠出国、および市民社会組織との間で幅広く協議を行ってきた。アジア開発基金の全34拠出国が2015年2月末までに正式同意を伝達し、ADBの理事会は総務投票を行うことを翌月承認していた。