中国・香港(2019年4月3日)― ADBの代表的な経済刊行物である『アジア経済見通し2019年』の特別テーマとして取り上げられた調査によると、アジア開発途上国では、かつてないほどに災害リスクが高まっており、対応計画の改善、政府予算の確保、災害に関連した保険制度の拡充などを通じて、大災害が起きる前に、迅速に、災害からの影響に強い体制を構築する必要がある。
「アジアでは、5人に4人が自然災害の被害者となっている。近年、アジアは災害リスク削減に向けた取り組みを率先して行っているが、国家や地域社会レベルで災害への脆弱性と対応の両方に取り組むためには、より多くの行動が必要である」と、澤田康幸ADBチーフエコノミストは述べている。
開発から取り残された貧困層、小規模農家、そして小規模で遠く離れた太平洋島嶼国などは災害の影響を最も受けやすい。気候変動によって自然災害が増加し、急速な都市化により災害リスクが高まっているものの、1980年以降に発生したアジアの被災損失のうち、保険による補填の対象となったのはわずか8%程度である。
報告書では、各国に対して災害リスク対応計画の強化を促している。気候に配慮した災害に強いインフラは、今後起こりうる災害関連損失を軽減するという点で、特に費用対効果が高い。このような例として、干ばつ対策のための水資源管理の改善、耐震性のある公共施設の建設、海岸浸食緩和のためのマングローブ林の再構築などが挙げられる。
各国政府が災害発生時に活用できる資金を常に確保し、リスク移転商品や再保険を活用し、信用供与や保険適応を増加して、リスクプールを拡大することができれば、アジア地域にとって有益である。地域社会単位でのゴミ処理などへの投資によって、災害に強い社会を構築することができるだけでなく、災害に見舞われた際に、まず最初に支援や地域の知識が必要になるのが地域社会であることからも、国による取り組みは地域社会レベルでの行動によって補われるべきものである。
報告書では、災害の後は、早急な復興活動が優先されることが多いものの、そうした迅速な復興は、将来の災害対策の強化、社会的により厳しい状況にいる人々のニーズの考慮、被災地の経済的・社会的活力の回復など、他の目的とともに検討されるすべきだと指摘している。これには、2015年のネパール地震やバヌアツのサイクロン・パムの後で見られたように、中央・地方政府、非政府組織、そして地元社会の協力を通して災害に対応することが要となる。