フィリピン、マニラ(2021年5月5日) − 本日、アジア開発銀行(ADB)第54回年次総会において、浅川雅嗣ADB総裁は、豊かでインクルーシブ、気候変動や災害等のショックに強靭で持続可能な未来の実現を後押しする5つの課題に焦点を絞ることによって、アジア・太平洋地域はコロナ禍以前を超える、より力強い回復が可能であると述べた。
浅川氏は、「我々が示した道筋は、この地域が目下の不安定な状況を抜け出す力となると確信している」とした上で、「我々は今後も引き続き、資金、ナレッジ、そしてパートナーシップを軸にした独自の相乗効果を提供していく。そして、支援に関しては量より質を優先し、将来に向けた明確なビジョンを持って、短期的なニーズに対応していきたい。この道筋を着実に歩んでいけば、この地域はコロナ禍以前を超える、より力強い回復が可能であると信じている」と述べた。
浅川氏は、アジア・太平洋地域の持続的かつ公平な回復を実現するために不可欠な領域について、5つの課題を挙げた。
- 野心的な気候変動対策を開発の中心に据え、その適応と強靭性の強化に一層の力を注ぐとともに、パリ協定の目標達成に向けて全力で取り組む。
- 保健・医療、教育、社会的保護への投資により、ジェンダーギャップを含め、コロナ禍で拡大した不平等に対処する。
- スマートな経済再建に向けて、デジタルギャップを解消させるとともに、大規模な民間投資を呼び込みながら、質の高いグリーンインフラおよびデジタルインフラを推進する。
- ADBの開発途上加盟国が新しい形のグローバル化の機会を捉え、域内のヘルス・セキュリティの強化を進められるように、地域協力と統合を深化させる。
- 国内資金動員を強化し、各国政府が持続可能な成長および将来の危機に効果的に対応するために必要な資金を確保する。
これらの優先課題への取り組みは、2020年におけるADBの新型コロナウイルス対応を土台として進めていく。2020年のADBのコミットメント総額は過去最高の316億ドルに達し、そのちょうど半分あまりがパンデミックへの対応支援に充てられた。残りは、ジェンダー間の格差や気候変動の影響、質の高いインフラへの投資など、長期的な開発課題への取り組みに対してコミットされた。こうした業績は、どちらも過去最高となる164億ドルの協調融資と350億ドルを超える資本市場からの資金調達によって支えられた。
浅川氏は、「パンデミックの真っただ中において、私はスタッフを勇気づけるために、我々はいつしか誇りをもって、域内の人々のために成し遂げたことを振り返る時が来ると伝えた。私は、それが真実であることをこれまで以上に確信している」と述べた。
ADBは、極度の貧困の撲滅に努めるとともに、豊かでインクルーシブ、気候変動や災害等のショックに強靭で持続可能なアジア・太平洋地域の実現に向け取り組んでいる。ADBは1966年に創立され、49の域内加盟国・地域を含め68の加盟国・地域によって構成されている。