フィリピン・マニラ(2020年8月1日) - フィリピン運輸省は8月1日(土)に、アジア開発銀行(ADB)が資金を提供する代表的なプロジェクトである「マロロス-クラーク鉄道建設プロジェクト」の約380億フィリピンペソ(7億2,800万ドル)に及ぶ2つの土木契約に調印した。

この鉄道プロジェクトでは、北部の州とマニラ首都圏とを結び、安全かつ手頃な料金で、信頼性も高く環境に配慮された鉄道を建設する。今回の契約の調印は、プロジェクトの建設工事を加速させるとともに、多くの雇用を創出し、地元の経済活動を後押しする。

アーサー・トゥガデ運輸省長官は、「このプロジェクトは、国民の暮らしを豊かにするもので、フィリピンにとって大きな意味を持つ」とした上で、「フィリピン国民へのメッセージとして、我々は、これまで決して歩みを止めることなく、フィリピンに必要な交通インフラプロジェクトを実施し続けてきたことを伝えたい。これは『ビルド、ビルド、ビルドは続く』という我々独自の方針である」と述べた。

ADBのラメッシュ・スブラマニアム(Ramesh Subramaniam)東南アジア地域担当局長は、「本日、マロロス・クラーク鉄道建設プロジェクトの2つの土木工事契約に調印したことは、フィリピン政府が進める画期的な『ビルド、ビルド、ビルド』インフラ開発プログラムのひとつの節目となる」とした上で、「ADBは、すべてのフィリピン人に必要なインフラを提供するために、政府、開発パートナー、民間セクターと引き続き協力していくことを約束したい」と述べた。マロロス・クラーク鉄道は2024年までの完工を目指している。南北通勤鉄道システム全体が稼働すると、2040年までに、毎日最大100万人の乗客がこの近代的で安全かつ効率的な鉄道システムを利用することとなる。

マロロス・クラーク鉄道建設プロジェクトは、総延長163km(km)の南北通勤鉄道プロジェクトの一部を構成するもので、マニラ首都圏および近隣の州にわたる交通渋滞を緩和し、マニラ首都圏だけで年間総額180億ドルにのぼるとされる、交通渋滞に関連した経済コストを削減する。またそれは、パンパンガ州クラークのように地域の成長センターへと経済活動を押し上げる助けとなる。

このプロジェクトにより、バスで2~3時間かかるクラークとマニラの間の移動時間は、鉄道が完成すると1時間に短縮され、また年間の温室効果ガス排出量は6万トン以上削減される見込みである。

土木工事の契約はフィリピンの経済復興に貢献する。本プロジェクトは、今後3年間で、建設業に関連する約2万4,000人の現地雇用の他、鉄道システムの運営に関連して1万4,000人以上の雇用を創出する。また、原材料の供給などを担う地元企業にとっては、より大きな、間接的雇用の創出や経済的利益を得ることにつながり、それによりまたさらなる雇用を生み出すこととなる。

スペインのAcciona Construction Philippines, Inc.と地元の大手建設業者EEI Corporationのジョイントベンチャーが受注した契約は、クラーク国際空港の地下駅を含む約6.3kmの主要鉄道路線と1.6kmの車両基地につながる路線を建設するものである。

もう一つの契約は、韓国のPOSCO Engineering and Construction Co. Ltd.が受注したもので、パンパンガ州マバラカットに33ヘクタールの車両基地と鉄道運行管理センターを建設する。今年後半には、さらに3つの土木工事の契約が発注される予定である。

本プロジェクトに協調融資をしている国際協力機構(JICA)は、鉄道車両と鉄道システムに最大20億ドルの資金を提供する。

ADBは、極度の貧困の撲滅に努めるとともに、豊かでインクルーシブ、災害等のショックに強靭で持続可能なアジア・太平洋地域の実現に向け取り組んでいる。ADBは1966年に創立され、49の域内加盟国・地域を含め68の加盟国・地域によって構成されている。

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