新型コロナウイルス感染拡大による世界経済への影響は8.8兆ドルに上る可能性がある-ADB調査報告書

News Release | 2020年5月15日

フィリピン、マニラ(2020年5月15日)- アジア開発銀行(ADB)が本日発表した最新の報告によると、新型コロナウイルス感染症のパンデミックによる世界経済への影響は、5.8兆ドルから8.8兆ドルの損失に上る可能性があり、これは世界の国内総生産(GDP)の6.4%から9.7%に相当する。

「新型コロナウイルス感染症の経済的影響に係る改訂評価報告書」によると、アジア・太平洋地域の経済損失は、3ヶ月の短期収束シナリオの下での1.7兆ドルから、6ヶ月の長期収束シナリオでは2.5兆ドルに及ぶ可能性があり、世界全体の生産の減少の約30%をこの地域が占めることが指摘されている。中国は1.1兆ドルから1.6兆ドルの損失を被る可能性がある。この新たな分析は、4月3日に発表された「アジア経済見通し2020年版(ADO2020)」で示された、新型コロナウイルスによる世界全体の経済的影響が2.0兆ドルから4.1兆ドル相当になるとの推定を改訂するものである。

世界中の国々が、新型コロナウイルス感染症拡大の影響に対し、財政措置や金融緩和といった方策の実施、保健医療分野への支出の拡大、所得や収益の損失を補填するための直接支援など、迅速な対応を行ってきた。報告書によると、こうした措置に注力した政府の持続的な取り組みは、新型コロナウイルスの経済的影響を30%から40%程度軽減するとされ、すなわちそれは、世界経済の損失を4.1兆ドルから5.4兆ドルまで引き下げることとなる。

この分析は、国際貿易分析プロジェクト(GTAP)の応用一般均衡モデルを用いており、400万人以上 にのぼる新型コロナウイルス感染者を抱える96の感染爆発の影響を受けた国や地域を対象としている。ADO2020の予測において勘案された、観光、消費、投資、貿易と生産リンケージへの影響に加えて、新たな報告書では、人の動きや観光、その他産業に影響を及ぼす貿易コストの増加、生産や投資に負の影響を及ぼすサプライチェーンの寸断、そして新型コロナウイルス感染拡大による世界経済への影響を緩和するための各国政府による政策対応などの波及経路を踏まえた分析が含まれる。

澤田康幸ADBチーフエコノミストは、「この新たな分析は、新型コロナウイルスが与える極めて大きな経済的影響を明示するものであり、また、経済的打撃を軽減するために政策的介入が果たす重要な役割を示している」とした上で、「各国政府がパンデミックを抑制、鎮圧し、経済や人々への影響を軽減するために必要な対策を策定し実施する上で、こうした分析が有益な政策指針となりうるであろう」と述べた。

ADBの新型コロナウイルス感染症政策データベース(COVID-19 Policy Database)は、ADB加盟各国・地域が感染症対策として実施している主な経済対策に関する詳細な情報を提供している。

この報告書によると、新型コロナウイルス感染症収束までの短期的・長期的シナリオの下で、感染拡大の影響を受けた国が、さらなる拡大を阻止するために取った国境の封鎖や渡航制限、都市封鎖といった措置により、世界の貿易の1.7兆ドルから2.6兆ドルが減少すると予想される。世界的な雇用の減少は、1億5,800万人から2億4,200万人におよび、そのうちアジア・太平洋地域が70%を占めるとされている。世界の労働所得は、1.2兆ドルから1.8兆ドル程度の減少が見込まれ、そのうちの30%、3,590億ドルから5,500億ドル相当がアジア・太平洋地域におけるものと予想される。

 

新型コロナウイルス感染症による

経済損失

新型コロナウイルス感染症による

経済損失

(政策対応を取った場合)

金額(億ドル) GDPに対する割合(%) 金額(億ドル) GDPに対する割合(%)
収束までの期間(月数) 3 6 3 6 3 6 3 6
世界 -5兆7,969     -8兆7,899 -6.4 -9.7 -4兆958 -5兆3,878 -4.5 -5.9
アジア -1兆6,678 -2兆5,291 -6.2 -9.3 -1兆3,286 -1兆8,543 -4.9 -6.8
 

オーストラリア/ ニュージーランド

-912 -1,395 -4.6 -7.0 -810 -1,191 -4.1 -6.0
  中央アジア -211 -340 -3.4 -5.5 -114 -148 -1.8 -2.4
  東アジア(中国を除く) -1,641 -2,567 -6 -9.3 -1,456 -2,200 -5.3 -8.0
  中国 -1兆831 -1兆6,234 -7.5 -11.2 -8,338 -1兆1,268 -5.8 -7.8
  東南アジア -1,632 -2,529 -4.6 -7.2 -1,196 -1,663 -3.4 -4.7
  南アジア -1,419 -2,176 -3.9 -6.0 -1,343 -2,029 -3.7 -5.6
  太平洋 -33 -50 -4.6 -7.0 -29 -43 -4.1 -6.0

出所: ADBスタッフによる推計

注:シナリオで想定されている3ヶ月と6ヶ月の封じ込め期間は国ごとのものである。これらの期間は、ある国において感染爆発が起こってから経済活動が正常化し始めるまでに必要な時間を想定したものである。

保健医療向けの支出の増加や保健医療システムの強化とは別に、経済回復がより困難で時間を要するものとならないようにするためには、所得や雇用を守るための強力な措置が不可欠である。報告書では、消費の極端な落ち込みを避けるために、各国政府は、サプライチェーンの寸断に対応し、物資やサービスの提供のための電子商取引やロジスティクスを支援し、より発展させること、また、一時的な社会保障措置や失業補償、特に食料などの生活必需品の配給のために資金を供給する必要があることが指摘されている。

状況は刻々と変化しており、ADBは今後必要に応じて追加的な波及経路を考慮した上で影響評価を更新していく。

ADBは、4月13日に発表した200億ドルの支援パッケージを通じて、新型コロナウイルスによる影響に対処する加盟国を積極的に支援している。そうした支援をより迅速かつ柔軟に届けられるように、一連の業務合理化手続きを承認した。ADBが実施している支援の詳細については、ADBのウェブサイトを参照。

ADBは、極度の貧困の撲滅に努めるとともに、豊かでインクルーシブ、災害等のショックに強靭で持続可能なアジア・太平洋地域の実現に向け取り組んでいる。ADBは1966年に創立され、49の域内加盟国・地域を含め68の加盟国・地域によって構成されている。