フィリピン・マニラ(2020年3月6日)- アジア開発銀行(ADB)の最新の分析によると、新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大は、国内需要の急激な減少、観光や業務出張の縮小、貿易や生産における国際的な連動性、供給網の混乱、そして健康への影響などにより、アジアの開発途上国経済に多大な影響を及ぼす。

経済損失の規模は、今後の感染動向により左右されるものの、その見通しは未だ極めて不透明である。この分析で想定したシナリオでは、世界全体で770億ドルから3,470億ドル規模、国内総生産(GDP)の0.1%から0.4%の範囲で影響を及ぼすことが示されている。

感染症拡大により、渡航制限などの予防的行動や制限措置が課せられた1月下旬から3か月後までに事態が緩和されるという中間的なシナリオの場合、世界経済が受ける損失は1,560億ドル、すなわち世界全体のGDPの0.2%に達する可能性がある。そのうち中国の損失は1,030億ドルを占め、同国のGDPの0.8%に上る。その他のアジアの開発途上国への影響は全体で220億ドル、GDPの0.2%に上る。

澤田康幸 ADBチーフエコノミストは、「新型コロナウイルスについては、その経済的影響を含め、多くの不確実性が存在する」とした上で、「このため、潜在的経済損失について可能な限り明確に示すためには、様々なシナリオを用いる必要がある。感染症拡大に伴う人的および経済的影響の緩和に向け、各国政府が明確で果断な対応策を講じる上で、この分析が寄与することを期待する」と述べた。

異なるシナリオの下での新型コロナウイルスによる世界的・地域的影響(推計)

最も緩やかなケース

中間的ケース

より深刻なケース

対GDP比(%)

損失額

(10億ドル)

対GDP

(%)

損失額

(10億ドル)

対GDP比(%)

損失額

(10億ドル)

世界

–0.1

$77

–0.2

$156

–0.4

$347

中国

–0.3

$44

–0.8

$103

–1.7

$237

アジアの開発途上国・地域

(中国を除く)

–0.2

$16

–0.2

$22

–0.5

$42

その他の国・地域

 0.0

$17

  0.0

$31

  0.0

$68

出所: ADBによる推計

「アジアの開発途上国・地域における新型コロナウイルス感染拡大の経済的影響(The Economic Impact of the COVID-19 Outbreak on Developing Asia)」の分析では、検討されたシナリオの詳細とともに、アジアの各開発途上国・地域における影響をセクター別に示している。また、大規模な感染拡大という状況で想定される最悪のシナリオの下での推計も提示している。これらの分析は、決して大規模な感染拡大を予期するものではなく、あくまで各国政府が適切な対応を検討する上で助けとなる情報の提供を目的としたものである。

すべてのシナリオと評価はADBのウェブサイトで閲覧でき、今後の状況の変化に応じて更新される。

ADBは2月7日に、中国やメコン川流域圏諸国における新型コロナウイルス感染の検出、防止、対応を促進するための2百万ドルの支援を発表した他、2月26日には、すべてのADBの開発途上加盟国を対象とする2百万ドルの追加支援を発表した。またさらに2月25日には、必要とされる医薬品や個人用防護具の継続的な供給を支援するために、中国・武漢市に本社を置く医薬・医療品の卸売業者、ジョインタウン・ファーマスーティカル・グループに対する1億3千万人民元(1,860万ドル)の民間部門融資に契約調印している。

ADBは、新型コロナウイルスの負の影響への対応に取り組むADBの開発途上加盟国に対して、さらなる支援を提供する用意があり、既存および新規の資金援助、緊急支援融資、政策支援融資、民間部門投融資、ナレッジおよび技術協力など、各国のニーズに応じて適切な手段を活用していく。

ADBは、極度の貧困の撲滅に努めるとともに、豊かでインクルーシブ、災害等のショックに強靭で持続可能なアジア・太平洋地域の実現に向け取り組んでいる。ADBは1966年に創立され、49の域内加盟国・地域を含め68の加盟国・地域によって構成されている。

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