ジョージア、トビリシ(2024年5月2日)― アジア・太平洋地域の開発途上国では、急速な高齢化の進行に備えた対策が不十分であり、高齢者人口の割合が高まるにつれ、年金保障制度の脆弱性から、健康問題や社会的孤立、基本的サービスへのアクセス不足といった課題に直面している。
本日、アジア開発銀行(ADB)が第57回年次総会で発表した『アジア開発政策報告書:アジアにおける健康長寿』(Aging Well in Asia: Asian Development Policy Report)によると、地域の発展の成果として長寿が示されており、高齢者の福祉を確保するためには包括的な政策改革が急務である。
アジア・太平洋地域の開発途上国の60歳以上の人口は、2050年までにほぼ倍増して12億人に達すると予測されている。これは同地域の総人口の約4分の1に相当し、必要な年金・福祉プログラム、医療サービスが大幅に増加することが想定される。また、同地域においては、高齢者の生産性の増加により、総生産を平均0.9%押し上げる『シルバー配当』をもたらす可能性もある。
アルバート・パークADBチーフエコノミストは、「アジアの急速な発展は成功例ではあるが、同時に大きな人口動態の変化を誘発し、その圧力は高まっている」とした上で、「何億人ものアジアの人々が高齢期を健康に過ごせるよう、各国政府は今すぐ準備する必要がある。健康、教育、技能、退職後の資金準備への生涯にわたる投資を政策で支援すべきである。さらに、高齢者が健康で生産的な活動に参加し、社会への貢献を最大化するために、家族や社会とのつながりも重視する必要がある。
同報告書によれば、アジア・太平洋地域の60歳以上の高齢者の40%が、いかなる形の年金にもアクセスできず、特に無給の家事労働に従事している女性が影響を受けている。その結果、アジアの多くの高齢者は、生計を立てるために定年をはるかに超えて働かなければならず、65歳以上の労働者の94%が、基本的な労働保護や年金給付を受けることのないインフォーマル・セクターで働いている。
加齢とともに、身体的・精神的な健康問題も増加する。アジアの高齢者の約60%が定期健診を受けておらず、31%は病気や社会的孤立、経済的不安のために抑うつ症状を訴えている。この地域の高齢女性は、高齢男性よりも、うつ病、糖尿病、高血圧などの健康障害に苦しむ可能性が高いとされている。
同報告書では、健康で経済的に安定した高齢化を支援するための幅広い政策措置が提言されている。その中には、政府支援による健康保険や年金制度、医療インフラの改善、毎年の無料健康診断と生活習慣の評価が挙げられている。さらに、政策立案者はユニバーサル・ヘルス・カバレッジを目指し、基本的な労働保護は高齢の非正規労働者にも拡大されるべきだと報告されている。
定年退職年齢を柔軟化し、高齢者の健康維持を支援し、適切な就業機会や生涯学習・技能開発を提供することで、アジアの高齢者がより長く生産性を維持できるようになる。
ADBは、極度の貧困の撲滅に努めるとともに、豊かでインクルーシブ、災害等のショックに強靭で持続可能なアジア・太平洋地域の実現に向け取り組んでいる。ADBは1966年に創立され、49の域内加盟国・地域を含め68の加盟国・地域によって構成されている。