フィリピン、マニラ(2020年4月3日)-アジア開発銀行(ADB)は本日、年次の主要経済報告書である「アジア経済見通し2020年版(Asian Development Outlook 2020: ADO 2020)」を発表。その報告書によると、アジアの開発途上国の経済は、新型コロナウイルスのパンデミックの影響から、2021年には回復が見込まれるものの、2020年は成長が急激に減速する。

この報告書では、アジア・太平洋地域の2020年の経済成長率は、ADBが2019年9月に予測した5.5%から3.3%ポイント下方修正され、2.2%となる見込みとなっている。また、新型コロナウィルスが終息し、経済活動が正常化すると仮定して、2021年には6.2%に回復すると見込んでいる。香港、韓国、シンガポール、台湾といった新興工業経済地域を除いたアジアの開発途上国の成長率は、2019年の5.7%と比較して2020年は2.4%と低下し、2021年には6.7%に回復すると見込まれる。

澤田康幸ADBチーフエコノミストは、「新型コロナウイルスの世界的流行の進展により、世界およびアジア・太平洋地域の経済見通しは極めて不透明な状況にある。現在の見通しよりも成長が下振れし、回復が遅れる可能性もある」とし、「このため、新型コロナウイルスのパンデミックを封じ込め、特に最も脆弱な人々への経済的影響を最小限に抑えるために、強力で連携した取り組みが必要とされる」と述べた。

中国では、新型コロナウイルスの感染拡大により、第1四半期の産業、サービス、小売売上、および投資が急激に縮小し、今年の成長率は2.3%に低下する見通しである。成長率は、2021年に7.3%と通常の水準を超えた回復を示し、その後平常の水準に戻る見込み。インドでは、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐための措置や低迷する世界経済の現状により、最近実施された減税や金融セクター改革の効果が相殺される。インドの成長は、2020年度に4.0%と鈍化するものの、2021年度は6.2%に上昇する見込みである。

アジア経済の低迷の要因は、米国、ユーロ地域、日本といった主要先進国経済における成長の停滞や縮小など、深刻化する対外環境にある。中央アジア諸国のような一次産品や石油の輸出国は、商品価格の下落により影響を受ける。今年のブレント原油価格は、2019年の1バレル当たり平均64ドルから下落し、1バレル当たり35ドルになると予想される。

アジアの開発途上各国の地域別に見た今年の成長率についても、世界的な需要の低下や一部の国における国内での感染拡大や政策対応の影響により、低下が見られる。東アジアや東南アジアのように、より経済的に開かれた地域、あるいは太平洋地域のように観光に依存する地域では大きな影響がある。太平洋地域の経済成長率は、2020年には−0.3%に低下するものの、2021年には2.7%に回復する見通しである。

本報告書の特集では、新型コロナウイルス感染拡大がアジアの開発途上国および各セクターに与える経済的影響について、最新の分析を提供している。新型コロナウイルスの世界的感染拡大による世界経済への影響は、金額にして2兆ドルから4.1兆ドル、世界の国内総生産の2.3%から4.8%相当と試算される。これらの見通しは、3月6日に発表されたADBの調査報告を更新するもので、現下の世界的な感染拡大の状況、各国による様々な対策や出入国規制の実施、感染拡大が中国の経済活動にどのような影響を与えたかについてのデータなどが反映されている。

留意すべき点として、これらの見通しでは、サプライチェーンや送金の寸断、緊急の医療費負担、金融市場の混乱の可能性、そして教育や経済への長期的な影響といった要素については考慮されていない。

ADBは、極度の貧困の撲滅に努めるとともに、豊かでインクルーシブ、災害等のショックに強靭で持続可能なアジア・太平洋地域の実現に向け取り組んでいる。ADBは1966年に創立され、49の域内加盟国・地域を含め68の加盟国・地域によって構成されている。

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