【香港、2015年9月22日】アジア開発銀行(ADB)は22日、『アジア経済見通し2015年改訂版』(Asian Development Outlook (ADO) 2015 Update) を発表した。それによると、中国とインドにおける成長見通しの軟化と、主要先進国における景気回復の遅れが相まって、アジア途上国経済のGDP伸び率は、本・来年とも6.3%とされた3月の前回予測から、2015年が5.8%、2016年が6.0%にそれぞれ引き下げられた。
ADBのシャンジン・ウェイ(Shang-Jin Wei)チーフ・エコノミストは、「減速しているとはいえ、アジア途上国経済が世界経済の成長に最も寄与している地域であることは変わらないだろうが、自国通貨への圧力や、資本流出への懸念といった逆風も吹いている」とした上で、「国際的な金利変動やその他の金融ショックに対する耐性を高めるには、マクロの健全性を保つ規制を実施することが重要であり、一部の国では外貨建て借入への依存を規制するなどして資本の流れを管理することも必要だろう」としている。
先進国では、ユーロ圏の経済見通しが改善し、米経済の成長が続くなど、明るい兆候が一部でみられるものの、消費と投資が弱い状態が続いており、2015年の経済成長率は3月時点の予測である2.2%から、1.9%に鈍化したとみられる。
世界第二位の経済である中国では、本年1~8月期の投資の減速と輸出の軟化に伴い、経済成長は緩やかだった。2014年に7.3%を達成し、前回予測で7.2%とみられていた2015年の経済成長率は、現在6.8%とみられる。インドでは、外需が弱く、主だった改革の制定が想定より遅いことから、成長の加速が抑えられ、2015年の経済成長率は、前回予測の7.8%より低い7.4%とみられる。
一方東南アジアでは、主要市場の一つである中国経済の減速や先進国の低調な需要の煽りを受け、地域全体の成長率は2015年が4.4%とみられるが、2016年は4.9%に改善するとみられる。
石油や食料など国際商品の価格の軟化のため、アジア途上国の物価上昇圧力は抑えられており、2014年の3.0%から2015年に2.3%に下がるものの、2016年には上昇に転じるとみられる。アジア途上国の市場では2015年前半、資本の純流出が進み、1-3月期に1,250億ドルを超えるなど、米の利上げが近いとの見方もあるなか、引き続き懸念材料となっている。地域全体への影響としては、リスクプレミアムの上昇と通貨安が成長のモメンタムに対して更なる足かせとなる恐れもある。
ベトナム、スリランカ、インドネシアでは、企業の外貨建債務の比率が65%を超えているとのデータも出ており、米ドル高は、外貨に対するエクスポージャーの大きい域内企業にとって脅威となっている。エネルギーや金属その他の商品に対する中国の需要が落ちていること、物価が国際的に軟調にあることで、アゼルバイジャンやブルネイ、インドネシア、カザフスタンおよびモンゴルといった商品輸出型の多くの域内途上国にとって、不安材料となろう。
米の利上げの影響に対処する上で、アジア途上国の金融政策当局は、バランスをとりつつ、金融セクターの安定性を保ち、内需を刺激する必要があると、報告書はしている。流動性が高く、よく整備された国内金融市場を創り上げるべく努力を続けることが、企業の外貨建て債務への依存の縮小につながるだろう。