【中国・香港、 2017年9月26日】 アジア開発銀行(ADB)は、本日、年次経済刊行物である「アジア経済見通し2017年(Asia Development Outlook 2017)」の改訂版の中で、アジア途上国のGDP成長率は、2017年が5.9%、2018年が5.8%となるとの見通しを発表した。

世界貿易の幅広い回復と主要先進工業国の堅調な経済発展、中国の経済見通しの改善により、アジア途上国はその大半で好調な成長を維持している。これにより、2017年、2018年のアジア途上国の成長は当初の予測を上回る見通しだ。

ADBの澤田康幸チーフ・エコノミストは、「アジア途上国の成長見込みは、世界貿易の回復と、好調な中国に支えられ上向きとなっている。長期的な成長の可能性を上昇させるため、短期的な好景気の見通しを生かして、生産性向上のための改革を実施し、極めて需要の高いインフラに投資し、安定したマクロ経済運営を維持すべきである」と述べた。

2017年、アジア途上国の成長は貿易によって押し上げられ、年初の5カ月間の地域国の輸出額(ドルベース)は、昨年比11%、輸入額は17%の上昇となった。この貿易の回復は、商品価格の下落と製造業界における外需の不振により、二年連続で輸出額が縮小した後に起こったものである。中国を除き、アジアの八大新興経済国は本格的な輸出の回復を遂げた。

先進工業国の成長率は、2017年と2018年で2%に達すると予測され、2017年4月の予測より0.1%ポイントの上昇となる。アメリカの成長拡大は9年目を迎えるなど、好調な消費がこの世界最大の経済国を支え続けている。日本の成長は、消費意欲と景気感の改善により、意外にも好転した。ユーロ地域でも、財政・通貨政策、政治的不透明感の緩和、市場への安定した信頼感が景気の回復の後押しとなっている。

中国では、積極的な財政政策と予想外の外需により、2017年上半期は予想を超える成長を遂げ、2017年の生産高は、前回の予測から0.2%ポイント増の6.7%になる見込み。一方、2018年の成長率は、余剰生産能力の削減と金融リスク軽減に向けた改革が予定されているため、6.4%に減速すると予測される。

インドは、高額紙幣の廃止と物品サービス税の新たな導入により、個人消費と設備投資が落ち込んだものの、躍進を続けた。これらの短期的な影響はいずれ消え、中期的には、これら新たな政策が成長の基になると期待される。インドの2017年度のGDP成長率は、今年4月の予測から0.4%ポイント下がり、7%となり、2018年度の成長率も当初見込みの7.6%から7.4%に下げられた。

東南アジアは、生産高が堅調に伸びており、2017年は当初予測の4.8%から5%へ、2018年は5%から5.1%へそれぞれ上方修正され、今のところ好調な成長が期待されている。域内の成長は、シンガポールとマレーシアからの輸出の増加にけん引されており、インドネシアとタイは予測成長率の維持が見込まれる。

中央アジアの成長予測は、安定した石油価格、ロシア経済の見通し改善、海外送金の増加により、今年・来年ともに上方修正された。一方、太平洋地域の見通しは、2017年に関しては維持されたが、2018年は、本地域の二大経済国であるパプアニューギニアと東ティモールの見通しに変化がなかったため、やや下方に修正された。

アジア・太平洋地域のリスクはバランスが取れてきている。アメリカによる財政政策の緩和と、原油価格の低下が、地域経済に有利に働く可能性がある一方で、世界的流動性の引き締め、地政学的な出来事から生じる経済の乱れ、あるいは天候による災害があれば、逆に地域にとっては不利な状況となる。アメリカの量的金融緩和の縮小への対策はある程度できているが、アジア・太平洋地域の債務水準の高さは、金融の安定を揺るがす恐れがある。アジア諸国の多くでは、長期金利をアメリカの長期金利に連動させているため、政策当局は、財政状況をさらに強化し、債務状況と資産価値をモニターする必要がある。

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