【中国・香港、2016年3月30日】 アジア開発銀行(ADB)が本日発表した報告書『アジア経済見通し2016年版(Asian Development Outlook (ADO) 2016)』によると、主要先進国で続く弱い景気回復と中国の経済成長見通しが弱含みとなっている影響を受け、多くのアジア途上国で経済成長が減速している。これらの要因により、アジア途上国(日・豪・NZを除くアジア・太平洋の45カ国・地域)の成長率は2015年、2016年ともに前回の予測値よりも低くなっている。

同報告書では、アジア域内における国内総生産(GDP)の2016年と2017年の伸び率を5.7%と予測している。2015年の伸び率は5.9%であった。ADOはADBが発行している経済に関する年次刊行物であり、最も重要な位置づけとされている。

ADBのシャンジン・ウェイ(Shang-Jin Wei)チーフ・エコノミストは、「中国経済の減速と世界経済の不均衡な回復状況がアジア全体の経済成長の重荷になっている」としたうえで、「このような苦境にあっても、アジアは世界の経済成長全体の60%以上に寄与し続けるだろう。域内の諸国は、経済の潜在成長力を増加させ、不安定な世界経済の影響を受けないようにするため、生産性向上のための改革、供給不足のインフラに対する投資、および健全なマクロ経済運営を引き続き実施していくべきである」とした。

同報告は、先進国の経済成長率は、2016年も1.8%に留まるものの、2017年に1.9%にやや増加するとしている。米国では消費と投資が改善するが、その効果は外需の落ち込みによって相殺される。ユーロ圏と日本の成長率は若干改善する見込みである。

世界第2位の経済大国である中国は、輸出が振るわず、労働力の供給が減少し、供給面での改革が中国経済をより国内消費型に移行させ、過剰生産能力をさらに整理するように再編成していく中で、経済成長の減速が続いている。2016年の成長率は、2015年の6.9%から低下して6.5%となる見込みだが、政府の成長目標の範囲内には収まる。2017年の成長率はさらに低下して6.3%になる。中国は、域内経済との結びつきが非常に強いため、中国経済の減速は、アジア地域全体の成長率を0.3パーセント・ポイント程度引き下げるとしている。

インドは、当面の間は最高の成長を続ける主要経済の1つである。成長率は2016年が7.4%で、2017年はさらに上昇して7.8%に達する見込みとなっている。2015年は、輸出が不振だったが、盛んな公共投資が成長を支え、経済成長率は7.6%を記録した。海外からの直接投資を呼び込む改革、および企業と銀行のより健全なバランス・シートが、成長モメンタムの維持に寄与する。

一方、東南アジアについては、伸び率が2015年の4.4%から2016年には4.5%に、さらに2017年には4.8%へと着実に加速する力強い成長が予測されている。この地域の成長は、インフラ投資を増加し、民間投資を促進するための改革を実施しているインドネシアが牽引する。

石油、食料を含む商品価格の世界的な軟化が物価上昇圧力を抑えているが、2016年のアジア地域のインフレ率は内需の拡大に伴い、2015年の2.2%から2.5%へとわずかに上昇すると予測される。2017年には世界的に商品価格が回復し、インフレ率は2.7%に達する。製造業における輸出需要の落ち込みと引き続く商品価格の低下により、アジア途上国の経常黒字の対GDP比(地域全体)は、2015年の2.9%相当から2016年は2.6%に、2017年にはさらに2.4%に低下する見通しである。

米国政策金利の引き上げの可能性は新興市場の広範な脆弱性と相まって、地域の成長予測にとっては下方リスクの方が引き続き大きい。投資リスク回避の高まり、金融市場の世界的な不安定さの増大、そして予測を上回る中国経済の減速は、世界経済の見通しをさらに悪化させ、アジア地域の輸出と経済成長に打撃を直接与えることもありうる。

下落する石油や商品価格が、今後もアジアの商品市況依存型経済の成長を冷え込ませる。エルニーニョ現象の長引く影響も、農業に依存する国にとっては大きな気候リスクとなっている。また、消費者物価のインフレ率は全体的に低いものの依然としてプラスではあるが、生産者物価のデフレが中国や他のアジア諸国にとって新たなリスクとなってきている。

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