フィリピン、マニラ(2022年3月25日)―アジア開発銀行(ADB)が本日発行した『アジア債券モニター』(Asia Bond Monitor)の最新号によると、東アジア新興国の現地通貨建て債券の発行総額は、2021年に7.1%上昇し、過去最高の9兆ドルに達した。年末までの3カ月間に、東アジア新興国の現地通貨建て債券発行残高は、前四半期比3.6%増の22.8兆ドルとなった。世界的なインフレ圧力と先進国市場において利回りが上昇する中、同地域における債券利回りは、11月30日から3月9日までの間に上昇した。
アルバート・パークADBチーフエコノミストは、「東アジア新興国の財政状況は、潤沢な流動資産に支えられ、引き続き堅調である」とした上で、「先進国経済が金融引き締め政策を実施する中、域内の中央銀行の多くは、金融緩和維持の方針を取ってきた。しかし、継続的にインフレ圧力が高まることで、世界各地の中央銀行の多くは政策の引き締めに転じ、それにより、流動性が低下して、財政状況が弱まる可能性がある」と述べた。
米国連邦準備制度理事会の金融引き締め観測やロシアのウクライナ侵攻によって、投資家心理が冷え込み、リスクプレミアムは上昇した。米国連邦準備制度理事会は3月16日、2018年以来初めて金利を引き上げ、さらに、戦争による原油や食品価格の高騰による影響もあり、インフレが進むにつれて追加利上げも辞さないことを示唆した。世界的なサプライチェーンの混乱や新型コロナウイルスのパンデミックをめぐる不透明感もまた、世界経済の見通しを脅かしている。
東南アジア諸国連合(ASEAN)の加盟国経済は昨年、現地通貨建て債券発行が過去最高の1.5兆ドルを記録した。これは、東アジア新興国の総発行額の17%を占める。東アジア新興国は、中国、香港、インドネシア、韓国、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナムを指す。
域内の2021年末時点の国債発行残高は、総額14.3兆ドル、社債は8.5兆ドルに増加した。また、域内最大の社債市場である中国での発行が減速する中、社債部門の成長は同年の第4四半期の間に緩やかになった。
ASEAN地域に加え、中国、香港、日本、韓国でのサステナブルボンド発行残高は、2021年末時点で前年の2,741億ドルから4,307億ドルに上昇した。ソーシャルボンドおよびサステナビリティボンドへの関心も高まっているものの、グリーンボンドは引き続き同地域のサステナブルボンド市場を支配し、総額の68.2%を占めている。
『アジア債券モニター』の最新号では、アジアの現地通貨建て債券市場への外資参入や関連する金融安定化リスクについて議論し、さらに、新興国市場での現地通貨建てソブリン債発行の決定要因について取り上げている。また、2021年アジア・ボンド・オンライン債券市場流動性調査の結果も掲載している。
ADBは、極度の貧困の撲滅に努めるとともに、豊かでインクルーシブ、気候変動や災害等のショックに強靭で持続可能なアジア・太平洋地域の実現に向け取り組んでいる。ADBは1966年に創立され、49の域内加盟国・地域を含め68の加盟国・地域によって構成されている。