デジタル技術の活用が、アジアの新型コロナ ウイルスからの回復の鍵となる-ADB

News Release | 2021年2月10日

フィリピン、マニラ(2021年2月10日)-アジア開発銀行(ADB)の新たな報告書によると、デジタル・プラットフォームやその他のテクノロジーを用いたツールが、アジア・太平洋地域のあらゆる規模と業種の企業に新たな成長機会をもたらすとともに、そうした傾向は、同地域の新型コロナウイルスのパンデミックからの持続可能な回復に向け、多大な貢献を果たす。

ADBの代表的な刊行物である「アジア経済統合報告書2021年版」は、アジア・太平洋地域の地域協力および統合の進展を考察し、貿易や国境を越えた投資、金融統合や人の移動に関し、パンデミックが及ぼした初期の影響について分析している。この最新版の特別テーマを取り上げた章では、インクルーシブで持続可能な開発に資するデジタル技術の役割とその可能性、デジタル技術が同地域におけるパンデミック後の復興をいかに推進することができるか、そしてリスクを効果的に管理しながら、デジタル変革を加速させるための施策について取り上げている。

澤田康幸ADBチーフエコノミストは、「アジア・太平洋地域の国々は、コロナ禍にあって、急速なテクノロジーの発展とデジタル化を活用して回復し、世界経済との結びつきを再び深めようとしている。テクノロジーは、世界との新たなつながりを築く手助けとなり、そうしたつながりは、多大なビジネスチャンスをもたらすと同時に、新たなリスクや課題をも明らかにする」とした上で、「混乱に対処し、急成長するデジタル経済から生まれる利益を最大化するための政策や規制の実施、そして地域協力を促進することで、こうした利益を確保することが不可欠である」と述べた。

デジタル・プラットフォームの消費者向け取引における収益は、2019年に全世界で3兆8,000億ドルに達した。そのうち約48%にあたる1兆8,000億ドルは、アジア・太平洋地域が占めており、これは、同地域の国内総生産の6%に相当する。これらの数値は、新型コロナウイルス感染拡大防止のための制限が加えられる中、タクシーの配車サービス、フード・デリバリー、電子商取引など、多くの事業取引がデジタル空間に移行したことにより、2020年には大幅に増加する見込みである。

加速化するデジタル変革は、全世界の生産活動や交易、雇用を牽引する可能性がある。報告書によると、世界全体でのデジタル分野の規模が20%拡大すれば、2021年から2025年の間に全世界の生産活動は年平均で4兆3000億ドル増加する。同様に、アジア・太平洋地域における経済的利益は、年間で1兆7000億ドルを超え、2025年までの5年間で、8兆6000億ドルを上回ると見込まれる。また、アジア・太平洋地域では、デジタル技術の利用拡大によって、2025年までに年間約6,500万人の新規雇用が創出され、域内貿易についても、今後5年間で年間1兆ドル増加することが期待される。

域内の各国政府は、デジタルインフラの改善と接続性の向上、そしてデジタルインフラへのアクセスを図るための政策や改革を通じて、発展するデジタル経済の恩恵を利用し、また享受することができる。これらの対応には、公正な競争の推進やビジネスのやりやすさの改善、また、デジタル化による雇用に合わせた労働者向け保障や社会的保護措置の強化なども含まれる。報告書ではまた、データプライバシーとセキュリティー、課税、公的機関と民間組織の間のパートナーシップ、そして地域協力を重視する必要性も強調された。

さらにこの報告書では、アジア・太平洋地域の貿易実績について、2020年上半期は大きな打撃を受けたものの、予想以上に迅速な回復が見込まれるとしている。アジアの商品貿易量の伸びは、5月には対前年比マイナス10.1%と底を打ったものの徐々に回復し、2020年9月以降はプラス成長に転じている。世界的な、そして同地域への投資の流れは、2019年のアジアへの海外直接投資が7.7%減の5,105億ドルとなったことに続き、2020年にはさらに減少すると推定される。しかしながら、アジア・太平洋地域の国々は再び国境を開き、パンデミックに関わる規制を緩和しつつあり、同地域における合併買収といった最近の企業活動は、回復の兆しを見せている。

ADBは、極度の貧困の撲滅に努めるとともに、豊かでインクルーシブ、気候変動や災害等のショックに強靭で持続可能なアジア・太平洋地域の実現に向け取り組んでいる。ADBは1966年に創立され、49の域内加盟国・地域を含め68の加盟国・地域によって構成されている。