フィリピン、マニラ(2022年9月14日) — アジア開発銀行(ADB)の報告書によると、東アジア新興国の長期債券利回りは、金融情勢が緩やかに緩和する一方、リスクの高まり及び経済見通しの不透明感により、6月15日から8月24日の間に低下した。

本日発表された『アジア債券モニター』(Asia Bond Monitor)の最新号によると、現地通貨建て10年国債利回りは、イールドカーブのフラット化とともに低下した。どちらも、投資家が経済成長の鈍化を予測する典型的なシグナルである。同地域の通貨は、見通しの悪化にともない、対米ドルで下落が続いた。

東アジア新興国の金融情勢は、7月中旬から8月中旬にかけて緩やかに緩和された。これは、米国連邦準備制度理事会が利上げペースを緩めるとの思惑から、株式市場の反発に伴い、リスクプレミアムが縮小し、ポートフォリオへの資金流入が回復したことによる。しかし、長引くインフレ、予想以上の米国の金融引き締め、長期化する新型コロナウイルスパンデミックの影響、予想を上回る中国の景気減速、ロシアのウクライナ侵攻により長引く影響に起因する懸念など、継続的あるいは新たなリスクが、継続的に投資家心理に重圧を与えていた。

アルバート・パークADBチーフエコノミストは、「米連邦準備制度理事会の金融引き締めが緩やかに実施されるとの市場の楽観論が、金融情勢の緩やかな改善を支えた」とした上で、「しかし、米連邦準備制度理事会はここ数週間、さらなる利上げを行う姿勢を明確に示しており、これは長続きしなかったようだ。同地域の金融情勢は引き続き引き締めの状況にある」と述べている。

東アジア新興国は、中国、香港、インドネシア、韓国、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナムを指す。

同地域の債券市場は、主に中国の景気刺激策により、今年第2四半期に過去最高の発行額を記録した。域内の債券発行残高は6月末に22.9兆ドルに上昇した。東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国の発行額は10.3%増加し、東アジア新興国の総発行額の17.5%を占めるまでに拡大した。

国債の発行は、経済回復を支援するための各国政府の借入実施により、前四半期から25.9%増加した。国債発行残高は総額14.5兆ドルに達した。一方、経済見通しが弱く、借入コストが上昇する中、社債の発行は4.9%減少し、残高は8.4兆ドルとなった。ASEAN地域および中国、香港、日本、韓国のサステナブルボンド市場は、全体的な投資意欲の低下の中、緩やかに拡大し、5,035億ドルに達した。

ADBは、極度の貧困の撲滅に努めるとともに、豊かでインクルーシブ、気候変動や災害等のショックに強靭で持続可能なアジア・太平洋地域の実現に向け取り組んでいる。ADBは1966年に創立され、49の域内加盟国・地域を含め68の加盟国・地域によって構成されている。

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