フィリピン、マニラ(2023年10月12日) ― 国際開発金融機関(MDBs)が本日発表した新たな報告書によると、MDBsが提供した2022年の気候変動対策資金は過去最高額を更新した。
今回の発表は、モロッコのマラケシュで開催された世界銀行グループと国際通貨基金(IMF)の年次総会に代表団が出席する中で行われた。この総会では、特に低中所得国向けの公的気候変動対策資金の拡充が最重要議題のひとつとなっている。
2022年には、MDBsから総額607億ドルの気候変動対策資金が低所得国と中所得国向けに充てられた。このうち63%にあたる380億ドルが気候変動緩和資金、37%にあたる227億ドルが気候変動適応資金であった。動員された民間資金は169億ドルに達した。
昨年、高所得国には総額388億ドルが充てられた。このうち、94%にあたる363億ドルが気候変動緩和資金であり、6%にあたる25億ドルが気候変動適応資金であった。動員された民間資金は519億ドルに達した。
2022年、アジア開発銀行(ADB)は、気候変動緩和資金43億ドルと気候変動適応資金28億ドルを含む総額71億ドルの気候変動対策資金の拠出を承認した。さらに、ADBは民間セクターから5億4,800万ドルの気候変動対策資金を動員した。
2022年の気候変動対策資金が記録的な規模に達し、MDBsは、国連事務総長主導の2019年国連気候行動サミットで掲げられた2025年の気候変動対策資金の目標額を2年連続で上回っている。これには、低所得国と中所得国に向けて各機関総額500億ドルの気候変動対策資金を提供すること、世界全体で最低でも650億ドルの気候変動対策資金を提供し、なかでも気候変動適応資金を180億ドルに倍増すること、そして400億ドルの民間資金を動員することが含まれている。2019年と比較すると、MDBsによる低中所得国向けの2022年の気候変動対策資金は46%増(2019年は415億ドル)、世界全体のMDBsによる2022年の気候変動対策資金は62%増(2019年は616億ドル)と、それぞれ増加している。
ウォーレン・エバンズADB気候変動特使は、「MDBsによる低中所得国向けの気候変動対策資金が増加し、特に民間セクターの資金動員が拡大していることは力強い兆候である」とした上で、「我々はさらに多くのことを行う必要がある。気候変動の影響を最も受けやすい国々が多く存在するアジア・太平洋地域では、温室効果ガスの排出を削減し、現在および将来にわたって気候変動に対するレジリエンスを緊急に強化するには、資金を数十億から数兆ドルに増加するため、多額の民間セクター資金を動員する必要がある」と述べた。
この気候変動対策資金に関する共同報告書は、毎年の協力の成果として、MDBsが気候変動対策に充てる資金とその流れを追跡し、明確に説明したものである。また、国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)で発表されたMDBs各機関の気候変動対策資金の動員目標に対して、2025年までのさらなる野心的な誓約の実施に向けた進捗を確認するためのものである。
2022年の報告書において、欧州評議会開発銀行と新開発銀行の気候変動対策資金がMDBsの報告に完全に組み込まれ、初めてMDBsの10機関によるすべての気候変動対策資金が一元化され、集計データに反映された。また、MDBsの2機関が報告に参加していない場合でも、2022年の世界の気候変動対策資金は980億ドルに達した。さらに、今年の報告書には、後発開発途上国と小島嶼開発途上国におけるMDBsによる気候変動対策資金に関するより詳細な内訳が記載されている。
2022年の国際開発金融機関報告書は、欧州投資銀行(EIB)がまとめ、アフリカ開発銀行(AfDB)、アジア開発銀行(ADB)、アジアインフラ投資銀行(AIIB)、欧州評議会開発銀行(CEB)、欧州復興開発銀行(EBRD)、欧州投資銀行(EIB)、米州開発銀行グループ(IDBG)、イスラム開発銀行(IsDB)、新開発銀行(NDB)、世界銀行(WB)のデータを掲載している。
ADBは、極度の貧困の撲滅に努めるとともに、豊かでインクルーシブ、気候変動や災害等のショックに強靭で持続可能なアジア・太平洋地域の実現に取り組んでいる。ADBは1966年に創立され、49の域内加盟国・地域を含め68の加盟国・地域によって構成されている。