フィリピン、マニラ(2021年3月15日)-アジア開発銀行(ADB)は、持続可能な開発のための2030アジェンダへの貢献を示す初めての報告書において、各国が新型コロナウイルスのパンデミックからの復興を模索する中で、持続可能な開発目標(SDGs)の達成に改めて焦点を当てることが不可欠であると指摘している。
浅川雅嗣ADB総裁は、「各国政府が、国家予算の逼迫や公的債務の急増に直面する中、SDGsの達成には、多様な財源を活用した、膨大な資金動員が必要となる」とした上で、「パンデミックからの復興への道筋を描くにあたり、2021年は、改めてSDGsに焦点を当てる必要がある。ADBの投資は、持続可能な開発に関する最高水準の基準を満たし、各国において、ADBのストラテジー2030に定められたビジョンの実現とSDGs達成に向けた復興を支援するという真の成果をもたらすものでなければならない」と述べた。
2020年はSDGsに向けた進展を加速するための10年間の始まりの年であったが、新型コロナウイルスのパンデミックにより、この地域における目標達成への見通しは脅かされている。アジア・太平洋地域は、パンデミック以前より、これらの野心的な目標達成に向けた軌道から外れていた。その後の危機により、域内の1億6,200万の人々が貧困状態に引き戻されてしまったと推定され、アジア開発途上国の経済成長は60年ぶりにマイナスとなった。
同時に、環境保護に係るSDGsの進展は限定的であるとともに、この地域は気候変動危機の最前線にある。また、SDGsの実現には大きな資金不足にも直面している。この報告書は、SDGsに沿った、環境に優しく、強靭でインクルーシブ、かつ持続可能な新型コロナウイルスからの復興が不可欠であると指摘している。
この報告書では、17のSDGsとその関連ターゲットを、ADBの長期戦略「ストラテジー2030」の下における7つの優先課題への取り組みを通じて、戦略、プログラムおよび資金拠出に結びつける組織的アプローチについて説明している。また、ADBの組織成果フレームワーク(Corporate Results Framework)はSDGsと完全に適合している。ADBは、民間セクターからの資金調達や国内資源動員の強化を含め、各国によるSDGs達成に必要な資金の調達を支援している。
本報告書はまた、各国のSDGs達成を支援するADBのプロジェクトとプログラムにも焦点を当てている。例えば、インドネシアにおいて、ADBは政府によるSDGs実施の調整とそのためのロードマップ策定を行う機関の設立を後押ししたほか、国有インフラ金融会社PT SMIによるSDG Oneファンドの設立も支援した。カザフスタンにおいては、SDGsの国全体での実施を促進するために、ドナー間の調整のためのプラットフォームの構築を支援した。2020年に設立されたADBベンチャーズのプラットフォームは、SDGsに取り組む初期段階のテクノロジー企業を支援するためのベンチャー・キャピタル投資および技術協力を展開している。ADBはまた、国連などと協力し、開発途上加盟国がSDGsを実施するために必要な知識の共有や政策対話を支援している。
ADBは、極度の貧困の撲滅に努めるとともに、豊かでインクルーシブ、気候変動や災害等のショックに強靭で持続可能なアジア・太平洋地域の実現に向け取り組んでいる。ADBは1966年に創立され、49の域内加盟国・地域を含め68の加盟国・地域によって構成されている。